top_rogo.gif (16396 bytes)

〈朝鮮と日本の詩人-77-〉 三石勝五郎

「血を流した夕焼けの空」

 朝鮮は石の国
 あの冷たい空を突いて
 ほそぼそとポプラの木は育つ…

 赤い線の丘と
 坊主山、私がいた港には
 いつも夕陽がやせ落ちた

 国にほろびても海の碧
 白いかささぎ秋を鳴き
 半島の砂地求めてコスモス咲けり(「COSMOS−釜山港の思い出」全文)

 血を流した夕焼けの空で
 白衣の鮮女は笛を吹く(原注 鮮女=朝鮮人の女)
 さびしきものの足どり
(「白衣の群れ」全文)

 岩山の
 ポプラかげにごろねして
 ヨボが唄ったアララング
 亡びし国の月かげに
 足跡さむく
 風がなく
(原注 「アララング」=朝鮮人が唄う小唄でそれを聴くと一種のセンチメンタルな亡国的哀調に泣かされる。ヨボ=老人)
 (「アララング」全文)

 右に挙げた3つの詩は、植民地化の朝鮮の風景を象徴的にうたった哀愁の詩である。李白の「春望」の第1行「国破れて山河在り」を思わせる響きがある。3編に通底するモチーフは国を奪われた朝鮮人民への同情と痛惜の情である。

 敢えていえば、「血を流した夕焼けの空−」という1行を朝鮮民族の「恨」「たたかい」と解釈することもできる。

 この詩人には、このほかにも強制連行された朝鮮人の苦痛を主題にした「一杯の酔いどれ」という作品がある。

 三石勝五郎は1888年に長野県佐久郡に生まれ、91年に早大卒業後、釜山日報の記者を務めた。詩集「火山灰」「散華楽」があり、2001年に全詩集が刊行された。(卞宰洙・文芸評論家)

[朝鮮新報 2009.1.13]