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そこが知りたいQ&A−ボズワース訪朝、朝米直接対話の成果は?

問題解決に向けた「相互協力」スタート

 米国のスティーブン・ボズワース朝鮮政策特別代表が訪朝(8〜10日)し、オバマ政権発足後、初めてとなる朝米公式会談が開かれた。会談では朝米の懸案問題が議論された。朝鮮側は米国との相互理解を深め、見解の共通点も少なからず確認できたとして会談を肯定的に評価した。

 Q ボズワース訪朝によって実現した朝米直接対話は、国際社会の注目を集めた。

 A 米国は、ボズワース特別代表を「大統領特使」として平壌に派遣した。後日、国務省スポークスマンが明らかにしたところによると、金正日総書記にあてたオバマ大統領の親書を持参したという。

 朝鮮の人工衛星発射に対して国連安保理制裁が発動されたことで、6者会談の枠組みは崩れ、朝鮮は2回目の核実験を行った。朝鮮は、自国の核保有について朝鮮半島の戦争状態に「根源」があると指摘し、米国との2者会談を通じて朝米交戦関係を平和的関係に転換することを主張した。

 そして朝米会談の結果を見て、6者会談を含めた多者会談に参加するという立場を表明した。今回、ボズワーズ特別代表の訪朝を機に、これまでの朝鮮の主張に対する米国側の「回答」が示されたといえる。

 Q 会談では、どのような問題が議論されたのか。

 A 核問題の根本的解決を目指すのならば、安全保障の観点からアプローチし、朝鮮半島の対立構図を解消しなければならないというのが朝鮮側の一貫した主張だ。

 今回の会談では、朝鮮が提起した核保有の「根源」問題を含め、さまざまなテーマについて意見が交わされたようだ。

 朝鮮外務省スポークマンが明らかにしたところによると、双方は「平和協定締結と関係正常化、経済およびエネルギー支援、 朝鮮半島非核化など広範囲な問題を長時間にわたり真しに、虚心坦懐に議論した」という。これは、米国側の説明とも一致する。

 ボズワース特別代表は、ソウルでの会見で「(2005年6者会談で採択された)9.19共同声明の『すべての要素』を履行するという意志」を朝鮮側に伝えたと語った。「すべての要素」についてボズワース特別代表は、「非核化、平和体制、6者当事国の関係正常化、経済支援などを含む」と言明した。

 「平和協定締結」「平和体制」と表現は微妙に異なるが、朝米双方は「平和」問題を議論したことを認めている。核問題の当事国が、交戦関係の転換と戦争の終結という「根源」問題を解決すべき課題として想定したことは大きな意義がある。朝鮮半島における新たな平和保障体制の樹立は9.19共同声明にも明記されてはいるが、過去の6者会談では、この問題が具体的なテーマとして取り上げられることはなかった。

 Q 朝鮮側から「6者復帰」の「確約」を得られなかったとして、今回の成果は「限定的」だとする指摘がある。

 A 朝鮮は、「6者会談再開の必要性」と「9.19共同声明履行の重要性」に関して、米国側と「一連の共通認識」に達したという。

 これは朝米が今回の直接対話を通じて設定し、国際社会に向けて示した「ゴール」だ。今後、さらに議論を深めなければならない。焦点は、朝米2者会談を「6者会談再開」と「9.19共同声明履行」へつなげるためのプロセスだ。

 現状では、6者会談が再開されたとしても「平和協定締結」や「平和体制」樹立がスムーズに実現するという保証はない。9.19共同声明に明記されていることと、それを現実化するための条件を整えることは別問題だ。朝鮮は、交戦当事国である朝米が、まず決断をくだすべきと主張している。

 Q 米国側は応じるだろうか。

 A 実は、2000年10月の朝米共同コミュニケで、両国は現在の停戦条約に代わる平和保障システム構築の必要性を確認し、「四者会談」について言及している。ボズワース特別代表が言明したように6者合意にも、それに関する内容がある。

 米国は特別代表の平壌派遣を「6者会談再開」のためだと関係国に説明したが、米国との交戦関係が平和的関係に転換されるという確固たる根拠がないまま、朝鮮が多者会談に参加することは考えられない。

 6者会談を再開させるためには、まず敵対関係清算に関する朝米間の信頼醸成プロセスが不可欠だ。制裁発動によって朝鮮の主権を侵害し、二度目の核実験を招いた米国が、2者会談を通じて何らかの外交措置を講じる必要があるかもしれない。

 平壌訪問を終えたボズワース特別代表は、ソウル、北京、東京、モスクワを巡り、6者会談代表と協議を行った。「平和」問題の決着によって非核化の道筋がつくまで「朝米2者」の議論が先行する構図が続きそうだ。

 Q 継続協議は行われるのか。

 A ボズワース特別代表は訪朝が「有意義だった」と語った。今回の会談に対する朝鮮側の評価も肯定的だ。外務省スポークスマンは「双方の見解上の違いを解消し、共通点も少なからず確認した」と指摘し、「(朝米が)残された相違点を解消するために、今後も協力することにした」と強調した。最初の直接対話を終えた時点で朝米間「協力」という表現を使っている点が注目される。今回の会談に政府上層部の意志が反映されていることが伺われる。

 ボズワース特別代表の訪朝を機に実現した初の公式会談は、儀礼的な行事もなく、実務的色彩の濃いものだった。今後、両国が政治的決断を実行に移すための真しな議論を始めたという観点で見れば、よいスタートを切ったといえるだろう。ボズワース特別代表は訪朝直後、ソウルで本国に報告を行った。クリントン国務長官は今回の会談内容について「予備対話(preliminary meeting)としては、非常に肯定的なものであった」と評価したという。(金志永記者)

[朝鮮新報 2009.12.18]