top_rogo.gif (16396 bytes)

朝鮮の論調 09年 11月

 11月中旬、オバマ米大統領は日本、シンガポール、中国、南朝鮮を歴訪した。最後に訪れた南朝鮮(19日)でボズワース朝鮮問題担当特別代表の訪朝計画(12月8〜10日)を明らかにした。一方、仏大統領特使一行(9〜13日)、ロシア連邦会議上院議長一行(24〜25日)など、外国要人が相次いで平壌を訪れた。

−対米 解決方途を探るのは朝米双方

 李根局長の訪米と関連して2日、朝鮮外務省スポークスマンが記者の質問に答えた。

 朝米会談準備のための事前接触ではないかとの憶測が流れた中、スポークスマンは「朝米会談のための予備会談ではなく、したがって朝米対話と関連する実質的な問題は討議されていない」とわざわざ前置きし、「朝米会談の結果を見たうえで多国間会談を行う用意がある」との朝鮮の立場を再度明確にした。続けて、「われわれが到達した結論は、当事者である朝米双方が合理的な解決方途を探らなければならないということだ」とも述べた。

 翌3日、朝鮮中央通信は使用済み核燃料棒の再処理完了を発表した。その中で「抽出されたプルトニウムを核抑止力強化のために兵器化するうえで注目すべき成果が収められた」ことを明らかにした。

 一方、労働新聞23日付に「平和保障システムの樹立は急務だ」と題する記事が掲載された。記事は、「朝鮮半島において平和と安定を保障するためには、停戦状態を終息させ、平和保障システムを樹立させなければならない」と主張し、「この問題は米国の立場と態度に全てかかっている」と強調した。ボズワース特別代表の訪朝に先んじて、この問題が議題に取り上げられる可能性を示唆したものだったように思える。

−対日 「日帝の蛮行は必ず決算される」

 植民地統治時代に日本が犯した罪悪を非難する論調が目立った。

 労働新聞13日付は、日本当局がかつての侵略を「合法的」かつ「朝鮮の近代化に貢献した」などと乱暴な説を振りまいていると指摘し、「誤った見解と観点を新しい歴史教科書にそのまま反映させている」と非難した。

 17日には、「乙巳5条約」締結104年に因んで北側の壇君民族統一協議会と南側の壇君民族平和統一協議会が共同アピールを発表した。アピールは、日本による朝鮮の強制的占領を非難した後、「現代版『乙巳5賊』の売国策動を許してはならない」と呼びかけた。

 朝鮮中央通信社も21日、「乙巳5条約」について言及。「朝鮮会社令」「朝鮮監獄令」といった植民地統治における悪法を羅列し、「朝鮮人民は歳月がいくら流れようとも日帝の極悪無道な蛮行を必ず決算させるだろう」と強調した。

 右のような論調は、これまでも毎月のように配信されており、とくに目新しいものではない。現政権と関連した論調は先月に続き皆無に近く、自民党執権時とは異なる対応が目につく。全体的な配信数も少ない状態が続いている。

−対南 引き続き北南関係改善を主張

 先月に続き、北南関係の改善を強く呼びかけている。▼「和解と協力は自主統一、平和繁栄への道」(労働新聞10日付)、▼「民族自主は全民族大団結の原則」(労働新聞11日付)、▼「民族挙げての統一運動にこそ勝利がある」(労働新聞13日付)、▼「『わが民族同士』の理念は北南関係改善の基礎」(労働新聞14日付)、▼「北南関係改善は民族問題解決における急務」(労働新聞17日付)−と一部を紹介しただけでもこれだけある。

 汎民連は20日、結成19周年に際して共同決議文を発表した。その中で、「平和と自主統一を願う全ての統一愛国勢力との連帯をさらに強化していく」といった内容からなる5項目の決議を発表し、最後に6.15、10.4の両宣言を掲げて自主統一の道を力強く歩んでいこうと呼びかけた。

 朝鮮西海での武力衝突問題を非難する論調も一部で見られたが、おおむね関係改善を呼びかける傾向に変わりはない。

 一方、朝鮮で新型インフルエンザが流行を始めたとの報道が流れると、李明博大統領はすぐさま支援を表明している。

 沖縄の米軍基地移転を巡って揉めている米日。業を煮やしたルース米駐日大使が「オバマ大統領の顔に泥を塗る気か」と語気を荒げる一幕があったとも。一介の大使風情に怒鳴りつけられてオロオロする様は、見ていてつくづく情けない。

 岡田外相の憔悴した表情を見ると、「同盟」と書いて「隷属」と読む米日関係の本質を今ごろになって痛感したのではないか。

 それにしても、相変わらず政府与党内の御家騒動が絶えない。鳩山政権も来夏までにはや退陣か、とかつての変人宰相が周囲に漏らしたそうだ。総理の首が一年周期で挿げ替わるお国柄は健在とみえる。

 ボズワース氏一行が訪朝を終えた日に、民主党の小沢幹事長一行が中国を訪問した。この時期、何のために…と訝る声もある。

 何のために。この問いとともに朝・日関係は新年を迎える。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.12.11]