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南朝鮮軍の西海武力挑発 「情勢進展の阻止が目的」

 既報のように10日、朝鮮西海上で北と南による武力衝突が発生した。北側はこれについて「偶発的な事件ではなく、朝鮮半島の緊張激化を狙う南朝鮮軍部の計画的な挑発行為」(労働新聞12日付論評)と断定。南側が今回の事態を「北の挑発」としていることを非難し、南側に謝罪と責任者処罰を強く求めた。

食い違う主張

 北側は10日の朝鮮人民軍最高司令部報道に続き、12日には労働新聞および民主朝鮮の論評、13日には北南将官級会談団長の通知文を相次いで発表、今回の武力衝突の真相について明らかにした。

 一方、南朝鮮軍当局も今回の事態の経緯を説明したが、その内容は北側の発表とは重要な部分で異なる。

 南朝鮮合同参謀本部は同日、黄海南道西端の長山串沖のウォルレ島から発進した北側の警備艇1隻が大青島の東11.3キロ地点で「北方限界線」(NLL)を侵犯した後、さらに2.2キロの地点まで南下したと説明した。5回にわたる南側高速艇の警告通信も無視したため、南側高速艇は北側警備艇前方約1キロの海上に向け警告射撃を実施。これに対し、北側がすぐさま高速艇に照準射撃を行うなどの挑発行為を犯したため、応戦したと主張している。

 しかし、北側の発表によると、朝鮮人民軍海軍警備艇は領海に侵入した正体不明の目標物を確認するために発進し、同目標を確認した後、帰隊する途中だった。同警備艇が北側の領海内で活動していたという主張だ。

 衝突が起こった水域は、北側が主張する海上軍事境界線と南側が主張するNLLが絡み合う一帯。北側は北南間でも朝米間でも合意されたことのないNLLを一切認めていない。

 北側は、目標を確認し帰途についていた北側警備艇に対して南側が背後から「警告射撃」ではない直接照準射撃と「破壊射撃」を行ったと明らかにした。また、何隻もの艦艇を動員して数千発の銃・砲弾を北側に浴びせたとしている。

 北側団長が南側に送った通知文は、南朝鮮軍の挑発は「事前の脚本に基づくもの」であり、即時反撃した人民軍警備艇の対応は「領海を守り、挑発者の攻撃企図をくじくための当然の自衛措置」だったと主張した。

 南朝鮮軍当局が明らかにしたところによると、この日発生した衝突で南側艦艇は北側に対して4950発あまりの銃・砲弾を発射したという。

 西海上は北南双方が互いに異なった境界線を主張しているため、潜在的な武力衝突の危険性が常に存在する。1999年6月と2002年6月には大規模な交戦に発展した。

 南朝鮮軍の関係者によると、「北側警備艇によるNLL侵犯は今年に入って22回に及ぶが、警告射撃にまでいたったことはなかった」。今年に入って、南側が北側艦船に警告射撃を実施したのは今回が初めてだという。

 帰隊途中の北側警備艇は南側に背を向けた状態にあったと見られる。このような北側警備艇に向かって背後から射撃を加えるということは、それが「警告射撃」としても、挑発と受け取られかねない。

「NLL通用しない」

 北側は、南側軍当局が今回、西海上で武力挑発事件を引き起こしたことに関して、北南関係と朝米関係の改善にブレーキをかける目的があったと見ている。

 李明博政権発足後、悪化の一路をたどってきた北南関係は今年8月以降、北側の一連の措置によって改善の道に進んでいる。米政府当局はボスワース朝鮮政策担当特別代表が年内に訪朝すると発表した。

 これを快く思わない保守派と軍部勢力が、朝鮮半島の対立と緊張を激化させる狙いで故意に事件を起こしたというのが北側の見解だ。

 とくに、南側が今回の事件を朝米対話の再開が日程に上っている時期に起こしたことを問題視している。民主朝鮮12日付は、南側軍当局が「武力衝突発生の責任を北側にかぶせることで、米国に敵視政策を維持し朝米対話も行うべきではないと要請しようとした」と指摘した。

 北南将官級会談の北側代表団団長は、「北方限界線」を固守しようとする南側の立場はこれ以上通じないと述べた。さらに、西海上では北側が設定した境界線だけが有効であるという立場を表明し、「今後、同境界線を守るための軍事的措置を講じる」と警告した。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.11.18]