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朝鮮の論調 09年 10月

 秋夕に際して2年ぶりに行われた北南離散家族・親せきの再会事業が10月1日、終了した(9月26日〜)。また、4〜6日の日程で中国の温家宝首相が朝鮮を公式親善訪問。5日に金正日総書記と会見を行った。一方、朝鮮外務省の李根米州担当局長を団長とする代表団が訪米(10月23日〜11月2日)。米国務省のソン・キム核問題担当特使と会見を行った。

−対米 まずは「朝米2国間会談」

 温家宝首相との会見の際に交わした金正日総書記の発言が報道された。

 曰く「朝鮮半島の非核化は金日成主席の遺訓」であり、「朝米2国間会談を通じて両国間の敵対関係を必ず平和的な関係に転換させるべきである」こと、そして「朝米会談の状況を見たうえで多国間会談を行う用意がある」ことを表明し、「多国間会談には6者会談も含まれる」と明言した。

 単に会見内容を報道するのではなく、今回は「総書記の発言」という形式を用いた。関係各国―とりわけ米国に対するメッセージ性がうかがえる。

 また、平和的関係への転換に言及した際、「必ず」という表現を使用した。この一言に、総書記の強い意志が集約されている。

 「朝米会談後、その結果をみてから多国間会談へ移行」という工程を総書記自らが関係各国に示したという点においても重要な意味を持つ。事実、朝鮮半島の核問題を巡る最近の動きは、総書記が示した新たなロードマップに従って再始動している(10日、ボズワース氏を団長とする米代表団の訪朝が正式に発表された)。

 労働新聞は14日付の記事で核問題について触れ、「朝米間に一日も早く平和協定を締結してこそ交戦関係を平和関係へと転換できる」と主張し、「米国は敵視政策を棄て、平和協定締結への道を選択しなければならない」と強調した。

 また、国連総会(12日)で演説した朝鮮代表は、「地球上における核兵器の全面的かつ完全な撤廃を主張する」と前置きしたうえで、「最大核保有諸国が核軍縮で先頭に立てば、各地域に新しく登場した核保有国にも肯定的な影響を及ぼすだろう」とし、米国による核の脅威が朝鮮半島から撤廃されれば、朝鮮も核問題解決に向けて動くということを暗に示唆した。

−対日 「非核3原則」はでたらめ

 H2Aロケット発射の動きを非難する論調が15日に配信された。

 この問題について朝鮮はこれまでも「軍事大国化策動の現れ」だと強く非難してきたが、最近の特徴としては、国連の動きとリンクさせていることがあげられる。朝鮮の人工衛星発射は非難し、日本の同様の動きは黙認するという、国連の2重基準と不平等性を厳しく糾弾している。

 民主朝鮮28日付に「はたして日本は反核の道を歩いてきたのか」と題する記事が掲載された。

 記事は、米日間における「核持ち込み密約」疑惑について触れ、核兵器の利用および輸送と関連した公開文書とは別途の秘密合意が存在したことはおそらく事実であろうとしたうえで、いわゆる「非核3原則」はでたらめだと酷評した。

 今回の「密約疑惑」によって、日本は国際社会から「信頼できない国」「見て見ぬふりをする国」という評価を得ていると指摘し、「日本は『非核』の看板を掲げつつ核武装化の道を歩んできた」と厳しく非難した。

 鳩山政権発足後、新政権に直接言及する内容はなく、全体的な配信数は極端に少なくなっている。

−対南 対決観念は古い時代の遺物

 南当局をあからさまに非難する論調が鳴りを潜め、代わって北南関係改善と統一の実現を積極的に訴える内容が多く見られた。

 労働新聞や民主朝鮮などの国内各紙が連日のようにこの問題を取り上げ、「民族自主」「わが民族同士」「和解・協力の実現」といった表現を多用しながら北南関係改善を強く訴えた。

 労働新聞は19日付の記事で「祖国統一のためには、古い時代の対決観念から取り除かねばならない」と強調し、「いま、古い対決観念に固執する理由はない」と指摘した。

 同紙はまた、22日付に掲載した記事でも6.15共同宣言と10.4宣言の積極的な履行を訴え、「われわれの全ての努力は、両宣言の履行にむけて行われている」と強調し、関係改善のためには「接触と対話、和解と協力を通じて民族的な絆を結び、信頼を築かねばならない」と主張した。

 ほかにも「全てを民族共同の利益に服従させなければならない」(労働新聞28日付)、「北南関係改善は先送りできない民族的な課題」(労働新聞29日付)といった内容の記事が多数、掲載された。

 朝鮮と相対するときの米国を見ていると、シェイクスピアの戯曲を思い出す。

 煮え切らない。

 迷う。

 決められない。

 そんな主人公の性格をツルゲーネフは「優柔不断で実行力に欠け、内向的な性格の典型」として「ハムレット型」と分類した。

 対照的な人を「ドン・キホーテ型」と呼ぶ。独りよがりの正義感にかられて、いたずらに行動のみに走るタイプのことだ。

 どちらも困った性格だが、舌先三寸だけで行動を起こさない為政者に比べれば、ドン・キホーテの向こう見ずな性格も、筆者の目には愛すべき欠点に映る。

 秋の夜長に読書をするなら、オバマ大統領にはハムレットとドン・キホーテを薦めたい。前者を読んで自省するも良し、後者を読んで腰を上げるも良し。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.11.13]