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朝鮮敵視の米核政策 南朝鮮に「拡大抑止力」提供

圧力重視変わらず

 朝米直接対話の準備が進む一方で、米国の朝鮮に対する軍事的圧力の企図が表面化している。米国は10月22日、ソウルで行われた南朝鮮との第41回定例安保協議会(SCM)で南朝鮮に対する「核の傘」を含めた「拡大抑止力」の提供を具体化。今月初めには、両者が「北朝鮮の急変事態」に対応した「作戦計画5029」を完成させたことがメディアを通じて伝えられた。オバマ大統領が「核なき世界」を提唱し、核軍縮を求める声も高まりを見せつつあるが、米国は朝鮮半島で依然として核による対決を追求している。

核による威嚇

10月22日、国防部庁舎前で「核の傘」提供や「作戦計画5029」などに抗議する南朝鮮の市民団体メンバー [写真=統一ニュース]

 朝鮮半島非核化を実現するうえで焦点は朝鮮に対する米国の核脅威の除去だ。

 朝鮮半島核問題発生の根源には米国の核の脅威がある。米国は朝鮮戦争において核兵器の使用を真剣に検討した。2001年に発足したブッシュ政権は朝鮮を先制核攻撃の対象に指定した。

 したがって、朝鮮半島の非核化は米国の対朝鮮核政策と密接に関わっている。

 朝鮮は自国の核抑止力を、「半世紀以上も米国の核脅威にさらされてきた朝鮮が国の最高利益と地域の平和、安全を守るためにやむをえず保有しなければならなかったもの」だと規定している。「朝鮮を核保有国にした根源が存在するかぎり、核放棄は考えられない」(9月30日、外務省スポークスマン)というのが朝鮮の立場だ。

 9月の国連総会で演説した朴吉淵外務次官も、米国が朝鮮敵視政策に基づく核の威嚇をやめることが先決であり、オバマ大統領は核政策においても「チェンジ」のスローガンを実践すべきだと主張した。

 しかし今回、米国と南朝鮮がSCMで再確認した「拡大抑止力」提供の方針は従来の核政策を撤回するより、むしろいっそう強化する方向に進んでいる。

 「拡大抑止」(extended deterrence)とは、自国への攻撃に対する抑止力を同盟国にまで拡大すること。米国と南朝鮮との関係でいえば、米国が朝鮮半島有事の際にあらゆる種類の軍事力(核、非核両方の打撃力)を動員して南朝鮮を防衛することを確約したものだ。

 米国と南朝鮮は今回のSCMを通じて、「北朝鮮の核脅威に対応」するという名目で「拡大抑止力」を構成する具体的な手段を確定した。同会議の共同声明に記された具体的手段とは核戦力(「核の傘」)、在来式戦力、ミサイル防衛(MD)システムの3つ。

 同声明には朝鮮半島有事の際、米国が南朝鮮配備の戦力だけでなく世界各地の米軍兵力を柔軟に増強配置することも明記された。

 「拡大抑止力」は06年のSCMで初めて登場した概念。米国の「拡大抑止力」提供は今年6月のオバマ―李明博会談でも確認された。今回のSCMでは先の首脳会談での合意にしたがって、ばく然とした概念だった「拡大抑止力」を具体的な軍事手段によって公式化した。日本は首脳会談などで米国からの「拡大抑止力」の提供を確認しているが、米国が南朝鮮に対してこれを首脳間の文書で確認したのは初めて。

 米国と南朝鮮は「拡大抑止力」について防衛的性格を強調している。しかし、「核抑止」とは本来、相手に核攻撃の脅しをかけることであり、核兵器使用を企てる政策にほかならないことは明らかだ。

 米国ではブッシュ政権がオバマ政権へと代わった今も「先制攻撃」という選択肢を排除していない。

 日本で政権交代後、一部から米国に核兵器の先制不使用を求める声が上がっていることに関して、マレン米統合参謀本部議長は10月23日、東京での記者会見で、「受け入れられない」との考えを明らかにした。同氏は東北アジアを念頭に置いたうえで、「(核の)脅威が拡大し続けている地域では非常に慎重でなければならない」と指摘。先制不使用の政策は「拡大抑止の柔軟性を著しく低下させる」と述べ、核兵器の使用に制限を加えることを拒否する考えを示した。

本質は先制攻撃論

 朝米敵対関係が清算されないかぎり、朝鮮の非核化実現への道は開かれない。

 しかし米国は近年、南朝鮮とともに「北朝鮮の急変事態」に対処するという名目で新たな戦争計画である「作戦計画5029」の作成を進めてきた。金大中政権下で策定された同計画はこれまで「概念計画」のレベルにとどまってきたが、李明博政権の発足後、これを「作戦計画」に格上げする作業が行われた。南朝鮮メディアの報道によると、米国と南朝鮮は最近「作戦計画5029」を完成させたという。同計画は核兵器など大量破壊兵器の流出や内戦状況など6つの「急変事態」への具体的な軍事対応を定めているという。

 朝鮮は米国の圧力強化の動きに非難を強めている。

 2日付労働新聞の論評は、米国の「拡大抑止力」提供を「対話相手に対する重大な挑戦」と非難した。さらに、同盟国に対する米国の「核の傘」提供は本質において「先制核攻撃論」だと指摘した。また、同紙12日付の論評も、「核の傘」の提供は「安全保障」ではなく、東北アジアに核戦争の災難をもたらすものだと警戒を強めている。

 「核なき世界」を提唱する米国が南朝鮮に「拡大抑止力」を提供するのは矛盾している。このような政策を維持している米国が、相手に向かって核抑止力を放棄しろと求めるのは「強盗まがいの論理」というのが朝鮮側の主張だ。(李相英記者)

[朝鮮新報 2009.11.13]