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そこが知りたいQ&A−「核なき世界」構想に対する朝鮮の立場は?

米国が核政策を変更すれば共同歩調も

 オバマ米国大統領がノーベル平和賞を受賞した理由のひとつに「核なき世界」に関する理想と行動が挙げられた。今年4月のプラハ演説で大統領は、世界唯一の核使用国である米国に道義的責任があるとし、核兵器廃絶に向けて世界を主導する考えを示した。しかし朝鮮半島の核問題では、いまだ具体的行動はない。

 Q 米国と敵対関係にある朝鮮は、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞をどのように見ているのか。

■オバマ大統領が主宰した「核なき世界」に関する国連安保理首脳会合(9月24日)の決議に対する朝鮮外務省スポークスマンの発言(9月30日)

−核不拡散・核軍縮に関する今回の決議は、米国の核威嚇によって世界各地の平和が脅かされている現実を無視した二重基準的な文書

−われわれが核兵器を持たざるをえなかった原因が解消されないかぎり、核放棄は考えられない

−「核なき世界」で生きるのは、朝鮮人民の願いである

−われわれは「核なき世界」の建設、そして米国の対朝鮮核政策と連関付けながら朝鮮半島非核化のために努力する

 A 政府レベルでの公式な見解は示されていない。

 しかし、受賞の前から核問題と関連して大統領の提唱するビジョンを念頭に置いたメッセージを発していた。とくにクリントン元大統領の訪朝以降、朝鮮外務省が「世界の非核化」というフレーズを使うようになったことが注目される。

 9月末には、外務省スポークスマンが「朝鮮半島非核化と『核兵器なき世界』建設構想は、金日成主席がずいぶん前に提示したもので、核兵器がない平和な世界に生きることは、朝鮮人民の願いである」と明言した。

 Q オバマ大統領の主張に賛同するということか。

 A そうではない。オバマ大統領は、核廃絶の理想を訴えているが、現状では朝鮮と米国の「非核化」に関する見解には隔たりがある。

 米国の核威嚇に対する自衛的手段として、核兵器保有を選択せざるをえなかったというのが、朝鮮側の論理だ。

 一方、オバマ大統領のプラハ演説のポイントは、米国、ロシアなど核大国による戦争よりも、「ルールを守らない国々」による「核攻撃」の脅威を強調し、核拡散防止を主張することにあった。オバマ大統領の論理に従えば、国際社会の核放棄要求に応じない朝鮮は、「非核化の流れに逆行する国家」となる。

 朝鮮にとって自国の核兵器は、あくまでも「抑止力」であり、「核拡散」の産物ではない。核威嚇の加害者である米国が、その被害者である朝鮮に対して一方的に核放棄を求めても、問題は解決されない。核をめぐる朝米対立の歴史が、それを物語っている。

 今年の国連総会で演説した朴吉淵外務次官も、米国が対朝鮮敵視政策にもとづく核の威嚇をやめることが先決であり、核政策においてもオバマ大統領が述べた「チェンジ」のスローガンを実践すべきだと主張した。

 Q 具体的には、どのような行動を求めているのか。

 A 現在、米国とロシアは戦略核兵器削減に取り組んでいる。

 確かに世界最大の核保有国が核軍縮で行動を起こせば、世界各地で新たに登場した核保有国に対しても肯定的な影響を与えるだろう。

 しかし、一般論だけでは地域の問題は解決されない。朝鮮半島非核化が実現されるには、まず米国が朝鮮に対する敵視政策を撤回しなければならない。

 最近、朝鮮のメディアは朝米の平和協定締結について言及している。

 1950年に始まった朝鮮戦争は、いまだ終わっていない。有名無実と化した停戦協定にかわる平和保障体制を朝鮮半島に築くことで、非核化のための環境をととのえるべきとの論調が出ている。当局の意向を反映したものであろう。

 Q 金正日総書記も二者会談を通じて、朝米の敵対関係が平和的な関係に転換されなければならないと語ったという。

 A 訪朝した中国の温家宝首相に対して、そのように語った。総書記は、朝米会談の結果をみて、多者会談を行う用意を表明した。

 米国以外の国々は、朝鮮が核抑止力を保有するに至った原因を取り除くことができない。朝鮮が米国との直接交渉によって非核化の道筋をつけようとするのは、当然の判断だ。

 朝米の平和的関係構築に関する主張を「核なき世界」の構想と結びつけると興味深い。朝鮮は、米国の現状を非難し、核政策変更を求めているが、地球上のすべての核兵器を廃絶するというオバマ大統領のビジョンそれ自体には反対していない。むしろ、朝鮮半島と世界の非核化を目指してきた自国の存在感と役割を積極的にアピールしている。

 従来は非核化論理における地域概念が明らかではなかった。「朝鮮半島の非核化は金日成主席の遺訓」であるとの立場を示しても、それ以上の説明はなかった。

 現在は、非核化の構想とロードマップが明確に語られている。朝鮮の金英逸総理は、温家宝首相の訪朝時、「朝鮮半島の非核化は、半島の周辺地域さらには世界の非核化と直結している」と断言した。

 Q 朝鮮半島の非核化は国際的な核軍縮、核廃絶の動きを前提にしているということか。

 A 朝鮮半島非核化と東北アジアと世界の非核化が、どのようにリンクするのか、今後の交渉の中で明らかになっていくだろう。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は、オバマ大統領の「核なき世界」構想と対話外交への指導力に期待を寄せたといわれるが、米国が朝鮮と平和的な関係を築き、朝鮮半島の核問題を解決していくならば、朝鮮側も大統領のイニシアチブを支持しない理由はない。非核化のテーマで共同歩調をとることが可能になる。

 朝鮮は、過去に東北アジア非核化構想を打ちだしたことがある。

 今後行われる朝米会談が成果をあげ、多者会談へと移行した場合、非核化問題は、より広範囲なテーマとして議論されることになるだろう。(金志永記者)

国連総会で朝鮮代表が主張 「核兵器の完全撤廃を」

[朝鮮新報 2009.10.23]