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朝鮮の論調 09年 9月

 9月は核問題に関する言動が注目された。国連駐在の朝鮮代表は3日、国連安保理議長あてに書簡を送付。一連の核問題に対する朝鮮の原則的立場と対応措置などについて言及した。24日には国連安保理首脳会議が開かれ、議長国の米国が提案した「核兵器のない世界」を目指す決議が全会一致で採択された。これと関連し、朝鮮外務省代弁人は30日、「決議には拘束されない」との立場を表明した。

−対米 「安保理決議に拘束されない」

 国連駐在の朝鮮代表は3日、安全保障理事会(当時の議長国=米国)の議長あてに書簡を送った。

 文面は、朝鮮が5月25日に行った第2次核実験を非難する制裁決議「1874号」(6月13日)をあらためて全面的に排撃し、その内容に拘束されないとの立場を鮮明にした。

 また、朝鮮は自主権と平和的発展の権利を踏みにじるのに利用された6者会談の構図に反対したのであって、朝鮮半島および世界の非核化そのものを否定したことはないと強調した。

 さらに、制裁決議の対応措置として、「使用済み燃料棒の再処理は最終段階にあり、抽出されたプルトニウムは兵器化されている」ことと、「ウラン濃縮実験は成功裏に行われて仕上げの段階に入った」ことを明らかにした。

 30日には、24日に開かれた安保理首脳会議と関連して外務省代弁人が記者の質問に答えた。

 代弁人は、「核兵器のない世界を目指す」とする旨の決議が採択されたことを受けて、「現実的に重要な問題は無視され、核大国の一方的要求だけがおもだって列挙されている」ものと一蹴し、「世界の非核化という看板のもとで核独占による自身の支配権を維持しようとする核列強の策動にほかならない」と指摘した。

 また、「最大の核保有国がまず核軍縮に取り組み、撤廃させることが世界の非核化に向けた先決条件である」と指摘し、暗に米国を非難した。

 28日に国連総会で演説した朴吉淵外務次官も、「朝鮮半島非核化の実現のためには、米政府が古い対決観念を棄て、『チェンジ』の立場を実践で示すべきだ」と強調している。

−対日 軍事大国化狙うロケット発射

 11日、日本はH2Bロケットを打ち上げた。この動きを、朝鮮国内メディアは軍事大国化野望の発露だといっせいに非難した。

 朝鮮中央通信は22日に論評を配信し、「日本の大型運搬ロケット開発策動は、宇宙軍事化、軍事大国化野望と密接に関連している」と批判した。

 そして国連安保理が日本のロケット発射を問題視していないことに触れ、朝鮮の人工衛星発射だけを槍玉に挙げて騒動を起こすのは不当極まりない行為であると主張し、あらためて安保理の対応を非難した。

 労働新聞もまた23日付で日本のロケット発射に言及し、日本がいくら「宇宙の平和的利用」を標榜しようとも、それを鵜呑みにする人はおらず、むしろ国際社会に大きな警戒心を抱かせていると指摘した。

 そしてここでも国連安保理の対応について触れ、「公正性は国際機構の根本活動原則」と強調し、「二重基準と偏見があってはならない」と主張した。

 ほかには、PAC3の拡大配備を非難する労働新聞の記事や、日本の衆議院総選挙で惨敗した自民党を「反動政治の当然の末路」とする民主朝鮮の記事などが配信された。

−対南 百害無益な「一括妥結案」

 8月の特使弔問団派遣との関連性は不明だが、9月は南当局に対する論評などは減少傾向にあった。

 その中でも注目すべきものとしては、朝鮮中央通信が30日に配信した内容が挙げられる。

 李大統領が提案したとされる朝鮮半島核問題の「一括妥結案」(グランド・バーゲン)を、「『非核、開放、3000』をそのまま踏襲したもの」と批判した。

 そして、「李大統領自身も問題だが」と前置きしたうえで「『大統領補佐チーム』の水準はもっと低い」と酷評。ピンポイントで大統領側近に言及した批評は初めてのことで、李大統領の一連の失政は取り巻きの質の低さによるものとも受け取れる非難を展開した。

 なお、この論調では李明博大統領を「南朝鮮高位当局者」と表現している。

 核兵器のない世界。

 ひとたび言葉が口を衝いて出れば、とかく実績よりも期待が先行する。ノーベル平和賞が好例だ。

 言うは易い。

 行うは難い。

 最近のオバマ大統領を見ていて、そう思う。

 そろそろ秋の涼風が届き始めた。ちと、風向きが変わるかもしれない。

 10日、北京で中・南・日による首脳会議が開かれた。席上、中国の温家宝首相は米朝対話を強く促した。

 これに対し李明博、鳩山両首脳は「賛意」を示したという。「6者復帰が前提」とはいえ、朝米2国間対話を容認した形だ。

 米国も意欲を隠さない。詳細は定かでないが、朝米双方はすでに実務接触者の人選に着手しているという。

 今回の一連の動き、要するに「6者=実質的な朝米2国間協議」という従来の構図に帰結しただけのこと―と指摘する声もある。

 推移を見守ろう。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2009.10.16]