朝鮮の論調 09年 4月 |
4月5日、朝鮮は人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功した。国連安保理は衛星発射を非難する議長声明を14日に採択した。これを受けて朝鮮は同日、6者会談不参加、核抑止力強化の立場を表明した。同日夜には太陽節を記念する祝砲夜会「強盛大国の花火」が金正日総書記参席のもと、大同江畔で盛大に行われた。 −対米 宇宙空間は人類共同の財産 人工衛星発射に関し、米国は朝鮮に対して「自制」を求めてきた。 これと関連し、朝鮮国内のメディアは「他国は人工衛星を百基、千基発射してもかまわないが、朝鮮だけはたった1基の衛星も発射してはいけないのか」(民主朝鮮1日付)などといっせいに反発。宇宙空間は人類共同の財産であり、ある特定国の独占物ではないことを強調した。 また、人工衛星発射を問題視するのは9.19共同声明の精神に反すると指摘。国連安保理でこの問題を扱った場合、6者会談は破たんするとも警告した。 しかし、国連安保理は14日に議長声明を採択。衛星発射を非難した。 これをうけて朝鮮は同日、外務省声明を発表。かねてからの警告どおり「6者会談の各参加国自身が国連安保理の名で9.19精神を真っ向から否定した以上、(中略)6者会談はその存在意義を取り返しのつかないまでに喪失した」と指摘した。そして「われわれが参加する6者会談はもはや必要なくなった」との立場を宣言するとともに、6者会談のいかなる合意にもこれ以上拘束されないことを明らかにした。 朝鮮外務省は29日にも声明を発表。議長声明に基づき、制裁対象を指定した国連安保理に対して謝罪を要求した。 そして、国家の最高利益を守るために「やむをえず追加的な自衛的措置を講じざるをえなくなるだろう」と指摘し、自衛的措置には大陸間弾道ミサイル発射実験が含まれることを発表した。 また、軽水炉型の原子力発電所の建設を決定し、その第一工程として「核燃料を自身で生産、保障するための技術開発を遅滞なく始める」こともあわせて表明した。 −対日 「被害妄想症」にかかっている 朝鮮の人工衛星を指して「ミサイルだ」と騒いだ日本は太平洋に落下した衛星運搬体の部品を探すとまで言い出した。これと関連し、朝鮮人民軍は8日、総参謀部報道を発表した。 報道は、「衛星運搬体の部品を探すと言いつつ戦闘艦船を機動させることは、朝鮮に対する悪辣な偵察行為、内政干渉であり、自主権を侵害する軍事的挑発行為」だと糾弾した。また、衛星発射前日の誤探知騒動にも触れ「被害妄想症にかかり、世界の物笑いになっている」と皮肉った。 また、今回の衛星発射を口実に日本が経済制裁をさらに1年延長したことをうけ、「このような妄動は朝鮮に対する厳重な挑戦であり、挑発である」(労働新聞14日付)と指摘し、「(合法的権利である衛星発射を)『ミサイル発射』だと騒ぐのは、一種のヒステリックであり極度の対朝鮮敵対意識の発露である」などと厳しく糾弾した。 民主朝鮮は28日付に「日本は6者会談破たんの主犯だ」と題する記事を掲載した。 記事は、日本がこれまで9.19共同声明に判を押しながらも、6者会談を朝鮮を圧殺するために利用してきたこと、会談が開かれるたびに進行を妨害してきたこと、合意履行を拒み続けてきたことなどを列挙し、衛星発射を安保理に持ち込み、議長声明採択騒動の先頭に立つことによって6者会談の破たんを決定的なものにしたと非難した。 −対南 PSI全面参加は宣戦布告 朝鮮の人工衛星発射をめぐって南朝鮮当局は、同族対決の姿勢を煽り、米日と連携して「ミサイル騒動」に加わった。そして、この騒動を利用して実現しようとしているのがPSIへの全面参加である。 朝鮮国内各紙はこの動きに猛反発。PSIとは、米国とその追従勢力が、侵略と干渉の口実を設けて自分たちの気に食わない国の自主権を侵害し、政治軍事的制裁と封鎖を行うための国際憲兵隊のようなものだと指摘した。 そして、そこに南朝鮮が全面参加しようとするのは「外部勢力との野合をさらに強め、北侵野望を実現しようとする計略の発露」(労働新聞1日付)、「われわれに対する露骨な対決布告、宣戦布告である。(中略)ソウルが軍事境界線から50キロメートルしか離れていないことを片時も忘れてはならない」(18日、朝鮮人民軍総参謀部記者会見)などと厳しく糾弾した。 また民主朝鮮26日付は、人工衛星発射を支持した南朝鮮歌手の告発騒動にも触れ、「同族対決のもう一つのヒステリック発作」と非難し、「彼が人工衛星発射をして、一つの血筋を分けた同族として民族的矜持と自負心、喜びを綴った文をHPに載せたのは、至極自然なこと」と強調した。 ■ 国連とは、何のための寄り合いであろうか。 加盟各国の主権平等を憲章に謳いつつも、「あれはミサイルだ」と強弁する一部の主張だけを汲んで、議長声明なるものを仰々しく採択するような組織のことを指すのか。 朝鮮が外務省声明で指摘したとおり、これまでに国連安保理が特定国の人工衛星発射を問題視したことは、ただの一度もない。なのに、今回の空騒ぎ。主権平等が聞いて呆れる。 形骸化していた以前の6者会談もしかりだ。体裁保持に汲々とするばかりで「何かを決定、実行する」という会合ではなくなっていた。6者が一堂に会しても会談の進展に期待が持てなくなっていた以上、6者プロセスに朝鮮半島の非核化を託すのは、すでに困難であった。 「会議は踊る、されど会議は進まず」の6者会談というのは、朝鮮半島情勢を進展させたい勢力にとっては足枷であり、また、進展を望まない勢力には好材料になっていた。 そして、6者プロセスは終焉を迎えた。いまさら「6者会談の再開」を訴える日本の姿は滑稽だ。 朝鮮半島情勢は、日本の思惑が遠く及ばない別次元で、着々と進行する。(韓昌健記者) [朝鮮新報 2009.5.20] |