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南朝鮮のPSI全面参加 北南武力衝突の導火線に

関係悪化に憂慮の声

 南朝鮮が「大量破壊兵器拡散防止構想」(PSI)に全面参加しようとしている問題で、北南関係の悪化を憂慮する声が内外から上がっている。李明博政権は朝鮮の人工衛星「光明星2号」の打ち上げに合わせてPSIに全面的に参加する意志を表明。現在、正式発表に向けて準備を進めていると伝えられている。北側は南側のPSI全面参加を「宣戦布告」と見なし、「即時、断固たる対応措置を講じる」と警告している。

深まる対立

外交通商部庁舎前でPSI全面参加に反対しデモを行う南朝鮮市民団体メンバー(4月18日) [写真=統一ニュース]

 朝鮮はPSIを「米国とその追従勢力が自分たちの気に障る国に制裁を加え、圧殺するために作り出した侵略の道具」(3月30日、祖国平和統一委員会スポークスマン談話)などと断じ、一貫してその危険性に警鐘を鳴らしてきた。

 前述の祖平統スポークスマン談話や、朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン答弁(4月18日)は、南側のPSI全面参加の動きが北側の人工衛星打ち上げを口実に進められている事実を指摘、李政権が米国、日本などと野合し同じ民族に対する対決策動を追求していると非難した。

 問題の重大性は何よりも、北南関係が破たん寸前の状況にある中で南側がPSIへ全面参加することで、北南間の政治・軍事的対立をさらに激化させ、西海上での武力衝突の危険性をいっそう増大させる結果をもたらすことにある。

北側は昨年から声明や談話、メディアの論評などを通じて、北南関係に対する姿勢を改めるよう李明博政権に繰り返し忠告してきた。

 しかし、6.15共同宣言と10.4宣言を否定し、北側との対決姿勢をあらわにする李政権の政策路線に変化はなかった。

 こうした状況に対処して北側は昨年12月、軍事境界線の陸路通行遮断を含めた「重大措置」の履行を南側に通告。今年1月17日には朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン声明を通じて、南側との「全面対決態勢に入る」ことを明らかにした。

 その後、祖国平和統一委員会(祖平統)も1月30日、李明博政権が西海上をはじめ軍事境界線一帯に武力を大々的に集中させていることを非難し、▼北南朝鮮間の政治・軍事的対決状態の解消と関連したすべての合意事項の無効化、▼「北南間の和解と不可侵および協力、交流に関する合意書」(1991年採択)とその付属合意書にある西海上軍事境界線関連の諸条項の廃棄を宣言する声明を発表した。

 西海では1999年と2002年の2度にわたって北南間で武力衝突が起きた。南側は、朝鮮戦争停戦協定に反対した李承晩政権の「単独北進」を防ぐために米国が引いた「北方限界線」(NLL)を西海の海上境界線として主張している。北側は朝米間でも北南間でも合意がないNLLを一貫して認めていないため、同海域は武力衝突の危険を常にはらんでいる。

衛星発射口実に

 一方の南朝鮮当局は、PSIへの全面参加が「北をターゲットにした圧迫の手段ではなく、大量破壊兵器拡散防止に向けた世界規模の動きに合流しようとするもの」(外交通商部)と説明するなど、北側の人工衛星打ち上げとは無関係であることをアピールしている。

 しかし、昨年からの情勢の経緯を見ても、今回の全面参加方針が北側の衛星打ち上げに対する南側の独自の対応だということは明らかだ。本来、全面参加方針の発表は「光明星2号」の打ち上げ直後に予定されていたが、国連安保理議長声明の採択後に延ばされ、現在に至っている。発表時期の変更は、PSI参加が北南関係に及ぼす悪影響を南側当局が自ら認めていることを物語っているといえよう。

 朝鮮は自国の人工衛星打ち上げを問題視した安保理議長声明の採択を非難し、6者会談への不参加、自衛的核抑止力の強化など一連の強硬な対応を宣言した。朝鮮半島情勢の緊張が高まっている時期に、南朝鮮があえてPSI全面参加を強行しようとしていることに対して内外で批判が噴出している。専門家らは南朝鮮が現在の情勢の下でPSI全面参加を宣言した場合、北南関係は取り返しのつかない破局へ至ると憂慮を示している。

 また、PSI全面参加は北南海運合意書(04年署名、翌年発効)の破棄につながるという指摘もある。

 同合意書は北南間の海運分野における協力について規定しており▼北南間の航路開設、▼相手側船舶に対する同等な待遇、▼海上事故時の相互協力、▼海事当局間の通信網開設などの内容が含まれている。

 南朝鮮のPSI全面参加によって海運合意書が白紙化されれば、北南間の軍事的対立の激化と西海上での武力衝突の危険性はいっそう増す。さらには、軍事境界線を通じた陸路通行と開城工業地区の事業にも否定的な影響を及ぼすことが確実視されている。(李相英記者)

■PSIとは

米国主導、圧力・封鎖に利用

 PSIとは、核兵器や生物化学兵器などの大量破壊兵器およびその関連物資の拡散防止を目的に2003年、米国の主導で発足した国際協力体制だ。2003年5月、当時のブッシュ大統領がポーランドでの演説でアイデアを提唱。同年9月、パリで「阻止原則宣言」が11カ国共同で発議され、本格的な活動がスタートした。

 正式な国際協定ではなく、参加国の自発的意思による一種の「有志連合」的な取り決めだ。現在、70数カ国がPSIの趣旨に賛同を表明し、さまざまな形で参加している。なかでも米国、英国、ドイツ、フランス、日本などG8諸国を中心とする15カ国が中心的な役割を果たしている。

 PSIの活動の中心は、大量破壊兵器の積載が疑われる船舶および航空機の移動の遮断だ。このために、参加国間の情報共有、各種訓練や実際の作戦時における物資および人員支援に関する協力などが定められている。

 02年12月、米国がスペイン軍とともに、イエメン付近の公海を航行中だった朝鮮の貿易船に対して「核物質密輸」の嫌疑で臨検を行った事件が、PSI発足の必要性を正当化する根拠の一つになっている。このような経緯からしても、PSIは朝鮮に対する封鎖と圧力に大きな目的を置いているといえよう。

 PSIについては国際法の見地から、「公海通航の自由を脅かす危険性がある」との反対意見が多い。また現在、大量破壊兵器の輸出を包括的に禁止する規定はなく、実効性に問題があるという点も指摘されている。

 南朝鮮は、PSIの8つの協力項目の内、5つの分野に限って協力するなど、部分的な関与の立場をとってきた。しかし、対北強硬と「韓米同盟」強化を掲げる李明博政権は、全面参加を検討する方向へと踏み出した。

[朝鮮新報 2009.5.9]