2009年 朝鮮の芸術、スポーツを振り返る 強盛大国建設を力強く後押し |
2012年に「強盛大国の大門を開く」ため各分野で国を挙げて取り組みが行われた今年、朝鮮の芸術、スポーツ分野ではさまざまな成果が生まれた。1年の出来事をまとめた。(編集部) −Art 内外の劇作品を再演 流行は「リメイク」
今年、歌劇や演劇などの舞台芸術分野では内外作品のリメイク上演が相次いだ。 最も話題となった作品といえば、歌劇「紅楼夢」だろう。同作品は中国の作家、曹雪芹の小説を舞台化したもので、1960年代に朝鮮で初上演された。70年代以降、「花を売る乙女」などの5大革命歌劇が主となり、上演される機会はなかった。 当時は、パンソリの唱法を基本にした「唱劇」方式で上演されたが、リメイク版は「ピパダ式」歌劇(70年代に確立された朝鮮独自の歌劇の創作法に基づいている。 一方、演劇部門では、中国の長幕劇「ネオンの下の哨兵」が63年以来46年ぶりに上演された。朝中国交樹立60周年にあたる今年、両作品の再演に朝中両政府の多大な関心が寄せられた。 また、金元均名称平壌音楽大学ではロシア歌劇「エフゲニー・オネーギン」のリメイクに取り組んだ。こちらは58年以来、51年ぶりの再演だ。 国内の作品としては、国立民族芸術団が朝鮮の伝統芸術である「歌舞」を30数年ぶりに舞台に上げた。 これらのリメイク版の上演は金正日総書記の提案によるものだ。国内外のさまざまな作品の魅力を再確認し、舞台芸術部門のさらなる活性化を図るのが目的だと思われる。
新ジャンル開拓した音楽 ニューフェイス登場
音楽分野では新ジャンルの開拓とともに、新人アーティストのデビューが相次いだ。 今年4月、国内最高峰の万寿台芸術団に三池淵楽団と呼ばれる新グループが結成された。 クラシックを気軽に楽しめるよう、メロディーや音色にさまざまなアレンジを加えた演奏が話題を呼んでいる。 目指すのは「クラシックをベースにした新ジャンルの音楽」(同楽団責任者のリ・スネさん)だ。普天堡電子楽団や旺載山軽音楽団のようなポップスやクラシックとも違うジャンルで、「クロスオーバー」的な要素も含んでいる。楽団の人数は50人あまりで、平均年齢は20代前半と若い。舞台でのパフォーマンス性も備えており、注目度は群を抜いているという。 朝鮮労働党創建記念日(10月10日)に際して銀河水管弦楽団、万寿台芸術団、三池淵楽団が出演した合同慶祝公演は各方面の絶賛を浴びた。 銀河水管弦楽団も今年9月に初登場した楽団で、三池淵楽団とともに注目を集めている。 関係者らは90年代、普天堡電子楽団や旺載山軽音楽団が一大旋風を巻き起こしたことを引き合いに出しながら、彼らの活躍によって新たな音楽の潮流が社会に広く浸透することに期待を寄せている。 「映画革命」再び 新作、続々公開 映画部門は新作の公開ラッシュに沸いた。 「白玉」(1、2部)を皮切りに「白頭の白樺」「遭難」「私が見た国」(2、3部)、「訓練の一日」など新作が続々と公開された。 とくに、7月に封切られた「私が見た国」は完成度が高く、「先軍時代の映画革命の第一歩」を記したと評価されている。 同作品の第1部が公開されたのは88年のこと。今年3月、21年ぶりの続編制作の話が持ち上がった。 映画部門では現在、「花を売る乙女」などの成功で「映画革命」と評された70年代の伝統を受け継ぎ、21世紀の新たな「革命」を起こすために一丸となっている。今年2月には内閣の傘下に国家映画委員会が設置された。関係者によると、今年から12年にかけての3年間で100編の作品制作を目指しているという。
4月の春親善芸術祭典 よそおい新たに
第26回「4月の春親善芸術祭典」が4月10〜18日、平壌で開催された。 20余カ国の50余団体から600人以上のアーティストが集い、市内9つの劇場で連日公演が行われた。 同祭典は82年より毎年4月に行われていたが、昨年から国内のプロ・アマチュアによる全国芸術祭典との隔年開催に変更された。今回が新たな形式で開催される初の祭典となった。 関係者らは「近年でもっとも水準が高かった」と振り返る。上海交響楽団やロシア国立合唱団、グラミー賞受賞歴のある米国のバンド「キャスティング・クラウンズ」など多彩な顔ぶれがそろった。 また、在日同胞芸術団をはじめ海外同胞アーティストも多数参加。年中行事の枠にとどまらない、大きな盛り上がりを見せた。 施設リニューアル 環境を整備
芸術団体の新たな作品創作と並行して、劇場の改修や建設にも国家的な関心が注がれた。 ここ数年の間に東平壌大劇場、牡丹峰劇場、金元均名称平壌音楽大学、大同門映画館などが新たに生まれ変わった。 今年にかぎってみても首都・平壌市の赤星劇場や平壌大劇場、元山市の葛麻劇場、松涛園青年野外劇場、黄海北道芸術劇場などが改修または新設された。 これらの事業に寄せられる関心は高く、照明、音響などの舞台装置や楽屋、客席にいたるまで世界一流どころに引けをとらないレベルが求められた。また、こうした動きは、2012年に強盛大国の大門を開くという構想と関わりがある。国を挙げて推進している「2012年構想」は経済の復興のみならず、人民生活の質的な向上も目指している。 文化・芸術分野を通じて人びとの教養を培い生活レベルを高めようというものだ。 −Sports 44年ぶりの快挙 W杯南ア大会出場へ
今年の朝鮮スポーツ界最大の話題といえば、何といってもFIFA(国際サッカー連盟)2010年W杯南アフリカ大会への出場を決めたことだろう。初出場でアジア勢初の8強入りという快挙をなしとげた1966年のイングランド大会以来、44年ぶり2回目の本大会出場決定に、朝鮮国内のみならず在日同胞社会も沸いた。 アジア地区最終予選で朝鮮代表は強豪ぞろいのグループBに属しながら、固い守備からのすばやい攻撃を持ち味に勝点12を挙げ、2位で本大会出場を勝ち取った。安英学選手や鄭大世選手ら在日同胞選手も勝利に大きく貢献した。 凱旋した代表チームは国を挙げての大歓迎を受けた。人びとの期待は日増しに高まっている。 朝鮮代表は本大会出場を決めた後も、フランスや開催地の南アフリカ遠征などを精力的にこなし、ブラジルのアトレティコ・ソロカバと平壌で親善試合を行うなど、来年の本大会を見据えたチーム強化につとめている。 「W杯出場は始まりにすぎない。本大会での結果で周囲の期待に応えたい」(キム・ジョンフン監督)と、士気は高い。 一方、昨年活躍した女子サッカーも、ユース代表が8月のU−19アジア選手権(中国・武漢)で3位に入り、来年7月にドイツで行われるU−20ワールドカップへの出場権を獲得した。
ロンドン五輪見すえて 国際大会で好成績
サッカー以外の競技でも、国際舞台で朝鮮選手の活躍が目立った1年だった。とくに、伝統的な得意競技である重量挙げ、レスリング、柔道などで好成績を収めた。 7月、セルビアで行われた第25回ユニバーシアードの体操女子跳馬種目でホン・ウンジョン選手が金メダルを獲得した。ホン選手は昨年の北京五輪でも同種目で優勝している。 また、同じく北京五輪で優勝した女子重量挙げのパク・ヒョンスク選手も12月の東アジア選手権(香港)63キロ級で大会記録を更新し金メダルを獲得、5月のアジア選手権(カザフスタン)でも2位に入った。 東アジア競技大会の重量挙げ種目では、男子62キロ級のキム・ウングク選手が大会新記録で優勝、69キロ級のキム・グムソク選手も優勝した。女子でもパク・ヒョンスク選手に続いてチョン・チュンミ選手(58キロ級)が金メダルを獲得した。 一方、レスリングでも、9月の世界選手権(デンマーク)でヤン・キョンイル選手が男子フリースタイル55キロ級で優勝した。 さらに、5月に台湾で開かれたアジア柔道選手権では金メダル1、銀メダル2、銅メダル2個を獲得した。 全国に普及、競技場建設も フットサル人気 国内スポーツにおける今年の話題の一つとして、フットサル競技の普及を挙げることができる。 5月、平壌で朝鮮サッカー協会とFIFA共同主催の監督、審判講習が行われた。 フットサルの普及と技術向上を目的とした講習が開かれるのは今回が初めて。 5月から各クラスのフットサル大会が全国各地で行われた。とくに、ジュニア、ユース世代への普及に力を入れており、今年から全国の青少年体育学校にフットサルコースが設置された。全国青少年体育学校体育大会ではフットサルが正式種目に採用され、熱戦が繰り広げられた。 環境整備も進められている。 朝鮮建築家同盟中央委員会は、5月に行われた第9回5.21建築祝典でフットサル専用競技場のデザイン懸賞募集を実施した。コンテストで高評価をえたデザインに基づいて、近いうちに市内の青春通り地区で専用競技場の建設が始まる予定だ。 [朝鮮新報 2009.12.16] |