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〈月間平壌レポート -09年10月-〉 平和統一に向けた確固たる意志

北南、朝中行事の現場で

 【平壌発=姜イルク記者】今後の朝鮮半島情勢を展望するうえで重要な意味をもつイベントが10月上旬に行われた。約2年ぶりの北南離散家族面会事業、温家宝・中国首相の訪朝などだ。これらの出来事に続いて最近、開城工業地区事業の活性化や北南当局間の接触が伝えられ、対米関係も動き出している。一連のイベントを現地で取材した。平和と統一に向けた朝鮮の積極姿勢が一過性のものではないことが確認できた。

変わった顔ぶれ

離散家族面会での宴会で祝杯をあげる張在彦・朝鮮赤十字会委員長(右)と柳宗夏・大韓赤十字社総裁

 北南離散家族面会事業(9月26日〜10月1日、金剛山)の現場では、半世紀ぶりの劇的な再会を果たした離散家族らはもちろん、北南双方の赤十字関係者や記者らも金剛山の美しい景色を背景に記念写真を撮りまくっていた。

 離散家族面会が行われるのは2007年10月以来で、08年2月の李明博政権発足後は初めて。

 00年の6.15共同宣言発表以降、李政権発足以前までは、平壌、ソウル、金剛山などでさまざまな北南行事が活発に行われた。当事者はもちろん、記者どうしも交流を深めた。

 しかし昨年以降、当局、民間ともに1年半あまり交流が途絶えていたこともあり今回、顔見知りの南の記者は20余人中1人しかいなかった。北南関係を担当しているその記者とは、7年ほど前から北と南で行われる行事の現場で顔見知りとなった。彼は、この約2年の間に南の関係者や記者の大幅な入れ替えがあり、金剛山が初めてだったり、訪北したことのない記者が多いと教えてくれた。

 北側も多少メンバーが交代していた。

 北と南の関係者や記者らは、最初はよそよそしかったが、時間が経つにつれ打ち解けた。

 赤十字団体主催の宴会の際には、別室で北南の記者どうし席を共にする場が設けられ、大いに盛り上がった。「統一のために!」の掛け声で、酒を一気に飲み干す光景が各テーブルで見られた。双方の記者らは「関係が改善され、このような機会が頻繁にあれば」と話しながら、北南行事の現場で再会することを約束していた。

 今回の行事では、南の保守層も含めた幅広い人びとが、敵対ではなく北南関係の改善を願っているということをうかがい知ることができた。

 知り合いの記者は保守傾向の強い有力紙の記者だが、彼も以前のような活発な交流を願うし、関係が途切れてはいけないと話していた。

北南双方の努力

 北と南の赤十字団体は、今回の行事が今後の関係に及ぼす影響を強く意識し、行事の進行に細心の注意を払っていた。

 取材ルールに対する認識の違いなどから北側のスタッフと南側の記者の間で小さな衝突が起こりかけたが、互いに譲歩する場面が見られた。

 北側は、面会事業の機会が関係改善の新たな契機となるよう万全を期した。一方、南側の統一部は、職員らに金剛山での「禁酒令」を下し、「事故」防止と業務において最善を尽くすよう促したという。双方の努力の結果、すべての行事が予定通りスムーズに運ばれた。

 今回の離散家族面会は、金正日総書記が8月に南の現代グループ会長と面会し、金大中元大統領の死去と関連し特使弔問団をソウルに派遣するなど、北側の主導的な措置によって北南関係が新たな局面に入る中で行われた。

 北南の赤十字団体のトップが双方代表団の団長として参加した。

 宴会で演説した北側団長は、「今回の面会事業は歴史的な北南共同宣言履行の過程」であると指摘しながら6.15、10.4両宣言の履行を強調した。

 一方、南側団長は、北南関係改善や6.15、10.4両宣言に関する言及はなかったものの、離散家族面会事業は今後も継続されるべきだとの立場を示した。

朝中友好の年

 朝中両国は、外交関係設定60周年にあたる今年を「朝中友好の年」に定めた。3月に中国・北京で「友好の年」イベントが開幕し、10月5日、平壌のメーデースタジアムで金正日総書記と温家宝首相一行の参加のもと盛大な閉幕式が行われた。続いて大マスゲームと芸術公演「アリラン」が行われた。参加者は、中国関係者と出演者を含め20万人をゆうに超し、特大イベントとなった。

 参加者の中でとくに目立っていたのは、招待席の一角に陣取った100人以上の中国側関係者ら。マスゲーム開始に先立ち、背景台の出演者は動作を確認するための簡単な練習を行うが、その規模と迫力に圧倒され驚き、歓声をあげていた。練習でも大変なパフォーマンスだったので本番が始まったらどうなるかと思っていたら、案の定、ものすごいことになった。とくに「朝中親善は永遠なり」などの文字が浮かび、パンダのぬいぐるみや中国の民族衣装をまとった出演者が登場するなど、「朝中友好の年」に際して特別に準備された場面が広がると、総立ちになって、手にした朝中両国の国旗を大きく振りながら黄色い歓声を上げていた。

 朝鮮側は平壌を訪問した温首相一行を厚遇した。金正日総書記が自ら飛行場で出迎え、数十万の市民が沿道で歓迎した。

 クライマックスは総書記と温首相の会見だ。朝鮮中央通信は、談話は温かく親善的な雰囲気の中で行われたと報じた。また、総書記が朝米関係などに言及しながら、朝鮮半島非核化目標を実現しようとする朝鮮の努力は変わらないと指摘したことを伝えた。その後の国際情勢の推移は周知のとおりだ。

 8月のクリントン元米大統領の訪朝、特使弔問団派遣などから始まった流れは、さらに加速しようとしている。

[朝鮮新報 2009.10.28]