〈月間平壌レポート -09年9月-〉 「150日戦闘」の総括と次のステップ |
「世界の中の朝鮮」目指し 【平壌発=金志永記者】昨年9月から海外メディアは金正日総書記の活動と朝鮮国内の動向についてさまざまな憶測報道を行ってきた。伝えられる情報は根拠に乏しく、欧米諸国の先入観に基づく恣意的な分析がまかり通っていた。朝鮮国内の世論や一般の人びとの感情に特別な関心が払われることはなかった。
国慶節の光景
ここ1年で国内の雰囲気は様変わりした。ただし、海外メディアが伝える内容とは異なる意味で、だ。 9日、朝鮮は61回目の建国記念日を迎えた。記念行事が相次いで開催された。平壌市民の注目を集めたのは、ロシアのアーティストたちによる公演だった。「21世紀管弦楽団」と命名された芸術家らによる訪朝団は国際コンクール受賞者、人民俳優、功勲俳優らで構成されていると紹介された。ロシアの伝統歌謡や「カルメン」などオペラの楽曲が披露された公演では、管弦楽団の演奏と歌手たちの熱唱に熱い拍手が送られた。 とくに好評だったのは、20世紀に誕生し時代を超えて歌い継がれているポピュラーソングの数々であった。ミュージカル「マイ・フェア・レディー」のメインテーマ「踊り明かそう」、アンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲の「オペラ座の怪人」「メモリー」、そしてフランク・シナトラの代表曲である「マイ・ウェイ」−。平壌の観客たちは、世界に広く知られたメロディーとリズムを素直に受け止めていた。 公演は6日夜、朝鮮中央テレビで初めて全国に放映された。窓の外に平壌の夜景が広がる本紙支局の一室でテレビから流れる「マイ・ウェイ」を耳にすると、多少の違和感はある。 労働新聞9日付は、金正日総書記がロシアと朝鮮のアーティストたちによる合同公演を鑑賞したと伝えた。「21世紀管弦楽団」のメンバーと朝鮮の「ウナス管弦楽団」、朝鮮人民軍功勲国家合唱団が出演した。数日前に聞いた演目、「オペラ座の怪人」をロシアの歌手とチマ・チョゴリで着飾った朝鮮の歌手が声高らかに歌い上げた。建国記念日の夜、総書記の姿とともに、そのシーンがテレビで放映された。 注目集めた写真 「世界の中の朝鮮」 総書記が機会あるごとに口にすると言われているフレーズだ。経済分野の現地指導でも、世界に目を向ける必要性が指摘されている。しかし、それは世界の趨勢をやみくもに追いかけるという意味ではない。朝鮮が独自に作り上げたものを重視し、それによって世界をリードするという気概を持つことが強調されている。 このような意識は朝鮮社会に急速に浸透している。最大の要因は、総書記の発言と行動にある。昨年12月、総書記は「2012年に強盛大国の大門を開く」ことを全人民にアピールした。その後、全国各地の企業所や協同農場、鉱山や発電所を相次いで視察に訪れた。国内では、総書記の途切れることのない現地指導の道のりを「強行軍」と呼んだ。国内メディアが連日のように総書記の活動を伝え、それが人びとの奮起を促す構図が生まれた。労働新聞は「12月のアピール」から1カ月後、絶え間なく続く現地指導の意義を強調し、「総書記の足音(降切錐社軒)を心に刻もう」というキャンペーンを展開した。 4月からは「150日戦闘」がスタートした。企業所などでは年間生産計画の繰り上げ達成など、経済復興に向けた目標が掲げられた。総書記の現地指導にも拍車がかかった。 現場で総書記と実際に会った企業所の支配人などは、総書記の「意気旺盛な指導に圧倒された」と語る。総書記に直に接した彼らの証言には、海外メディアが伝えない情報が数多く含まれている。 「150日戦闘」が最終段階に入った8月末、労働新聞の1面トップに朝鮮東部の元山製塩所を訪れた総書記の写真が大きく掲載された。それは関係者とともに現地を視察する場面ではなく、塩田をバックにしたスナップショットだった。総書記の活力と笑みがみなぎる写真から「現地指導の雰囲気が伝わってくるようだ」という読者の感想を聞いた。 認識の格差 総書記の活動に関する認識は国内外で大きな格差がある。精力的に全国を回る総書記のイメージは経済復興に向け奮起する人びとの求心力になっている。この1年間で団結気運はいっそう高まった。 「『強行軍』の最中に音楽鑑賞を楽しむ総書記は常にゆとりを持っている」と語るのは朝ロ合同公演の関係者。彼は「朝鮮の強盛大国建設は自らのスケジュールに沿って進められている」と述べ、国連安保理による制裁や敵対国の圧力によって朝鮮の内政、外交プランが変更を余儀なくされているという西側メディアの報道を否定した。 「150日戦闘」は16日に終了した。国内メディアは、2012年に向けた「新たな進軍速度が生まれた」と総括した。 遠からず次のステップが始まる。国内では年末まで「100日戦闘」が続く。 [朝鮮新報 2009.9.25] |