〈今月の金正日総書記−8月−〉 対米・南関係の局面打開 |
8月の金正日総書記の公式活動は、祝電や霊前への花輪などを除いて14回。軍部隊の視察はなかった。経済分野では平安南道、江原道を中心に6カ所の生産現場を視察した。8月の特筆すべき活動としては、クリントン元米大統領と南朝鮮の現代グループ会長との会見、そして金大中元大統領の死去に際して弔電を送ったことが挙げられる。
「クリントン訪朝」
総書記は4日、訪朝したクリントン元大統領一行と会見した。 5日発朝鮮中央通信の報道によると、会見では「朝米間の懸案が真しな雰囲気の中で虚心坦懐に深く論議」され、「対話の方法で問題を解決することで見解の一致」を見た。 クリントン氏は、両国間の関係改善に関するオバマ大統領の口頭メッセージを伝えた。 会見を通じて、不法入国および敵対行為の容疑で朝鮮側に拘束され労働教化刑を言い渡された米国人記者二人の問題も解決した。 総書記は、元大統領が二人の行為について謝罪の意を表し人道主義的見地からの釈放要請を伝えたことに対して、特赦を実施し、二人を釈放する国防委員長命令を下した。 総書記は国防委員会が4日夜に百花園迎賓館で催した晩さん会にも出席するなど、クリントン元大統領と長時間にわたって席をともにした。 米国側は元大統領の訪朝について、「米国人二人の解放実現を目指す完全に私的な任務」(ギブス・ホワイトハウス報道官)という立場だが、朝米双方の間で関係改善に向けた幅広い問題が話し合われたことは間違いない。 朝鮮中央通信は、元大統領一行の訪朝は「朝米間の理解を深め信頼を醸成するのに寄与するだろう」と意義づけた。 北南関係で急展開 金正日総書記はクリントン元大統領との会見に続き16日、平壌を訪れた現代グループの玄貞恩会長一行と会見した。翌17日、アジア太平洋平和委員会と現代グループによる共同報道文が発表された。 報道文は、「金正日総書記は玄貞恩会長一行と長時間にわたって会見し、会長の請願をすべて解決した」とし、双方が▼金剛山観光の早期再開▼陸路通行と滞在に関する制限の解除▼開城観光の再開と開城工業地区事業の活性化▼白頭山観光の開始▼秋夕(旧盆)の離散家族再会などで合意したと明らかにした。 玄会長滞在中の13日には、体制を中傷するなどして3月から北側当局に拘束されていた南朝鮮の男性が釈放され、身柄が現代側に引き渡された。 李明博政権発足後の関係悪化によって金剛山観光、離散家族の再会など北南間の交流・協力事業は軒並み中断に追い込まれていたが、これを機に再び息を吹き返した。北側は、昨年12月から講じてきた北南間の陸路通行しゃ断措置を21日付で解除すると南側に通告した。 その後、総書記の委任によって、18日に死去した金大中元大統領に弔意を表すため、朝鮮労働党中央委員会の金己男書記を団長とする特使弔問団が21〜23日、ソウルを訪問した。昨年2月の李明博政権発足後初となる北側当局者の南朝鮮訪問だった。 特使弔問団は金元大統領の焼香所を訪れ、総書記が故人の霊前に送った花輪を献じ、遺族に宛てた弔電と慰労の言葉も伝えた。さらに、遺族や国会議員、玄仁沢統一部長官ら各界の人士と接触した。 特使弔問団は23日午前、青瓦台で李明博大統領と面会した。席上、「北南関係を発展させていくことに関する問題が話し合われた」(朝鮮中央通信)。 朝鮮半島情勢が緊迫する中で実現した米元大統領の訪朝、北南関係進展などの一連の動きは内外の大きな関心を集めた。対立の局面にあった朝米関係と北南関係に変化の兆しが生まれている。これらは、総書記のリーダーシップによる局面転換だといえるだろう。 製塩所など視察 8月は外交や北南関係分野での活動が目立ったが、経済分野でも6カ所の生産現場を精力的に視察した。 そのうち3カ所(普通江商店、球場養魚場、元山製塩所)が人民生活に密接に関わる単位だった。 朝鮮中央通信の報道によると、今回新設された普通江商店は各種の果物と食肉加工製品の販売が専門。総書記は、商品供給など住民サービスの強化は「党活動の最高原則から提起される必須の要求」だと指摘し、「人々に裕福で文化的な生活をもたらすことよりも重要なことはない」と、人民生活向上を重視する姿勢をあらためて示した。 元山製塩所に対する視察は05年7月に次いで2回目。元山製塩所は03年12月に完成したが、当時は元山湾製塩所と呼ばれていた。 元来、朝鮮東海岸は西海岸に比べて土質が悪く、降水量が多いため、塩田の造成には向いていないとされていた。東海岸で初となる大規模製塩所建設の計画が持ち上がったのは1996年のこと。困難な工事を経て99年10月、咸鏡南道金野郡に光明星製塩所が完成した。 総書記は今回の視察の際、「塩の生産が不可能であるとされていた東海岸に製塩工業の新しい歴史が開かれた」と述べた。その評価の高さは、元山製塩所の関係者に「特別感謝」を送った事実からもうかがい知れる。 また、北倉火力発電連合企業所(平安南道)と2.8直洞青年炭鉱(同)に対する視察は、電力問題の解決という側面からその意味を読み取ることができよう。(李相英記者) [朝鮮新報 2009.9.4] |