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社会科学院経済研究所のリ・キソン研究員に聞く 電力、金属、食糧部門に力

近年、工業生産は9〜10%成長

 【平壌発=金志永記者】2012年に「強盛大国の大門を開く」と宣言した朝鮮の経済復興は米国など敵対国との対決の中で進められている。社会科学院経済研究所のリ・キソン研究員(教授、博士)に、国際環境の変化が国内の経済建設に及ぼす影響などについて聞いた。

2012年までの計画

 Q:2012年まであと3年。国連安保理の制裁決議など、国際関係では対立の構図が深まっている。国の対外経済分野に影響はあるのか。

 A:「2012年構想」は突然出てきたものではない。10余年間にわたる強盛大国建設の道のりに沿って提示された目標だ。

 経済分野で言えば、自立経済の土台に基づき、その潜在力を強化したうえで2012年という時期が設定された。外資導入や援助など外的条件の有利、不利を打算して立てた目標ではない。われわれのタイムテーブルは外部の動向とはリンクしていない。

 金日成主席の富強祖国建設構想を受け継ぎ、金正日総書記は90年代中盤に社会主義強盛大国建設構想を掲げた。われわれは95年から2000年まで「苦難の行軍」、強行軍を行い、未曾有の試練に打ち勝った。この6年間は、一方で強盛大国建設の突破口を開いた時期だったともいえるだろう。

 21世紀に入って、経済建設で転換の局面を開くための一連の路線が提示され、06年には「強盛大国の黎明」というフレーズも登場した。試練という暗闇が去り、夜明けの時を迎える段階にいたった。経済に関して言えば、飛躍のための物質的土台が整った。各工場、企業所が現代化され、最新技術に基づいた工場も建設された。発電所が数多く建設され、土地整理、農業用水路など食糧問題解決のための環境も整った。国の経済全般が上昇軌道に入っている。ここ数年間の工業生産は毎年9〜10%の成長を記録している。このような経済発展の流れの先に「強盛大国の大門を開く」という目標がある。

 Q:現在、経済の各部門で過去の最高生産水準を超える実績を上げることが課題として示されている。目標達成の保証はあるのか。

 A:われわれは経済の自立性、主体性を強化する方向で問題を解決している。対外経済環境の影響を受けない強固な経済構造を整えるということだ。とくに、経済強国建設の中心問題である電力と金属、食糧部門の問題の解決に力を注いでいる。

 電力部門では、近年、大規模水力発電所が相次いで操業を始め、国全体の発電能力が大きく伸びた。今後は軽水炉も建設する。朝鮮にはウランが豊富にある。自国の資源、技術に徹底して依拠していく。

 金属工業も、コークスなどの燃料を輸入に依拠しない方向で産業構造の転換が進められている。「チュチェ鉄」と呼ばれる自国の資源に基づいた鉄生産システムが導入されている。

 食糧問題に関して言えば、われわれは過去に自給自足の経験がある。現在では、農業技術革命を通じて多収穫品種も数多く登場しており、化学肥料も輸入原料に頼らない生産システムを導入中だ。電力問題が解決して鉄鋼材生産が農業機械生産につながるようになれば、「食の問題」は解決に向けて大きく進むだろう。

対外依存度低い

 Q:米国をはじめ敵対国は朝鮮経済が制裁と封鎖で甚大な打撃を受けると主張しているが。

設備を一新して生まれ変わった平壌紡織工場 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 A:自分の足で歩む自立経済は対外依存度が低い。われわれは昨秋以降の国際金融危機にも特別大きな影響を受けなかった。もちろん輸出や輸入で問題がまったくないとは言えない。しかし、今の朝鮮には何かが不足したからといって直ちに活動がストップしてしまう工場や企業所はない。

 自立経済というのは国内市場を主な対象とする経済だ。対外市場のニーズを満たすのが基本ではない。国内で多く生産して、人びとに行き渡った後に残るものを輸出すればよい。他国にモノを売らなければ生きていけない輸出主導型とは違う。自立経済はもともと輸入物資に大きく依存しない。われわれの国防工業、重工業は国内の資源と技術に基づいているが、軽工業部門では細かいもの、需要の少ないものは自国で作らず、輸入することもある。仮に制裁や封鎖でそのような物資が輸入できなくなったとしても、人びとの生活に決定的な打撃を与えることはない。

 90年代、西側では「北朝鮮崩壊説」が流れた。われわれが当時、試練に打ち勝つことができたのは、自立経済の土台を築いていたからだ。95年以降、われわれは外国からの食糧援助を受けた。しかし、外部からの援助のみに頼っておれば、とっくに滅びていただろう。

 Q:経済学者として今後の国際情勢をどのように展望しているのか。国内では、敵対勢力と最後の決着をつけるまで戦うという「頑強な持久戦」が呼びかけられている。

 A:国連安保理で制裁決議が採択され慌てた人はわが国にはいない。信念を持ってこの国で生きていくことを誓っている。制裁をされてもされなくても関係ない。

 朝鮮には、対外関係を通じて経済の根本的な問題を解決しようという発想が初めからない。90年代に米国はジュネーブ合意にしたがってわれわれに軽水炉を提供すると約束したが、結局は水泡に帰した。われわれは外国に過度な期待を抱いていない。

 米国と対決する中で、朝鮮は自衛的核抑止力を持つようになった。経済発展には安定かつ平和的な環境が必須だ。したがってわれわれは政治・軍事的問題を優先せざるをえなかった。朝鮮が核保有国になったことで戦争の危険性が抑制され、強盛大国建設の条件が整った。制裁や封鎖について騒いでいる国は、朝鮮がどのような国で、その力の源が何なのかまったくわかっていない。敵対勢力が長期間にわたって「封じ込め戦略」を駆使したとしても、朝鮮の自立的経済はびくともしない。われわれは自身のタイムテーブルにしたがって経済復興という目標を必ずや達成するだろう。

[朝鮮新報 2009.8.7]