「脅威」口実に偵察衛星 日本の宇宙兵器開発企図 |
加速する宇宙の軍事利用 日本当局は平和的な宇宙開発計画の一環として行われた人工衛星「光明星2号」の打ち上げを「弾道ミサイル」実験だと騒ぎ立て、朝鮮に対する敵対感情をあおった。しかし一方で、軍事的企図が隠された自らの宇宙開発計画の実績についてはほおかぶりを決め込んでいる。近年、日本は宇宙開発の領域を軍事的な分野にまで拡大し、朝鮮など周辺諸国の警戒心を呼び起こしている。 国際社会が憂慮 日本は1970年、初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げ成功以来、現在まで気象、通信、宇宙探査をはじめとするさまざまな目的の実用衛星を100基以上打ち上げている。これはロシア(旧ソ連)、米国に続いて世界第3位の実績だ。 その中には軍事目的の偵察衛星も含まれる。 日本では「宇宙に打ち上げられる物体およびその打ち上げロケットの開発、利用は、平和の目的に限り…行うものとする」と明記された69年の国会決議にしたがって、軍事目的の宇宙開発は行わないことになっている。同決議の「平和目的」の解釈は「非軍事」という意味で、偵察衛星のような「防衛に限り非攻撃的」なものであっても、決議に反するという解釈だ。 しかし、日本は98年、朝鮮の「光明星1号」の打ち上げを口実に偵察衛星の開発を本格的に進めた。政府は「北朝鮮の軍事的脅威」に対処するとの名目で、同年12月、「安全保障に必要な情報収集を目的とする衛星の導入」を閣議決定した。 この計画にしたがって2003年3月、初の偵察衛星2基を打ち上げた。06年9月と07年2月にも打ち上げを成功させ、現在、4基を運用中だ。 日本政府は「多目的衛星」だとして、運営目的と性能についての詳細は明らかにしていない。しかし専門家などからは、敵対国に対する監視を主な目的とする偵察衛星だと指摘されている。実際に 03年の打ち上げ時、当時の福田官房長官は「北朝鮮のミサイル発射の動き」などを監視することに衛星の重要な目的があると認めている。 偵察衛星の導入が69年の国会決議に抵触するという指摘に対して、日本政府は▼専守防衛の安全確保が目的、▼防衛政策以上には利用しない、▼大規模災害、大事故への予知、対応など民生目的への貢献などを理由に否定している。 一方、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の統計によると、70年、初の人工衛星を軌道に乗せて以来、運搬ロケットの打ち上げはN−I、N−U、H−I、M−Vなど代表的なものだけでも90回を超える。94年には初の国産ロケットH−U1号機の発射を成功させ、2001年からはH−Uの改良型であるH−UAの発射を続けている。 以前から国際社会では、日本のロケット技術が大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に十分に転用可能な水準にあるという評価が一般的だ。 日本はこれについて否定しているが、能力を保有している事実に違いはない。人工衛星を打ち上げる際、大気の摩擦でも燃え尽きないREVと呼ばれる「大気圏再突入モジュール」を搭載し、大気圏再突入実験を何度も行っている。ロケット搭載物の大気圏への再突入は、有人宇宙飛行かICBMにのみ必要なことだ。近隣諸国の憂慮は決して根拠のないものではない。 軍事大国化の一環 朝鮮は、日本の軍事的な宇宙利用の動きに対して警鐘を鳴らしてきた。とくに、偵察衛星の打ち上げと運搬ロケットの大々的な開発などを「軍事大国化策動」(労働新聞08年6月25日付)と見て問題視している。 日本初の偵察衛星打ち上げ時、朝鮮外務省スポークスマンは「われわれを狙った敵対行為であり重大な脅威」(03年3月18日)だと指摘した。 労働新聞(07年3月5日付)も、「『科学研究』を隠れ蓑に本格化しているスパイ衛星発射は日本の軍事大国化が重大な段階に入っていることを実証している」とし、日本の計画は「地域の平和と安定を脅かす行為」になると非難した。 早期警戒衛星の導入、配備に向けた動きに対しても、「宇宙で軍事的優位性を占めようとする日本の動きが危険水域に入っている」と見ている。 08年5月、日本で宇宙基本法が成立した。同法は69年の国会決議にあった「平和の目的に限り」という文言を削り、「憲法の平和主義の理念を踏まえ」という一文を入れたうえで、「安全保障に資する宇宙開発利用を促進」すると明記している。 宇宙開発の目的を「平和」から「安全保障」へ変えたうえで、「非軍事」の原則を「非侵略」と解釈し直し、「防衛」の名の下に軍事利用に踏み切ろうというものだ。ミサイル防衛用の警戒衛星の打ち上げも可能になるだけに、国内で批判的な声は多い。 朝鮮も「宇宙の軍事利用を法的に担保」する法律だと警戒感を強めている。 強力な陸海空軍武力を保持し、宇宙開発を軍事領域にまで拡大する口実として「北朝鮮脅威論」が使われている。朝鮮の平和的衛星打ち上げに「敵対行為」のレッテルを貼り、狂乱的な「ミサイル騒動」を繰り広げるのも、このような軍事大国化に向けた動きの一環だ。(李相英記者) [朝鮮新報 2009.4.10] |