合意白紙化した李明博政権 北南対決 地域安保の焦点に |
李明博政権が引き起こした朝鮮半島の政治・軍事的対決状況は、東北アジア情勢の焦点として浮上している。米国オバマ新政権の発足で、国際社会からは朝鮮半島非核化と朝米関係進展に対する期待まじりの観測も出てきているが、北南朝鮮の間では武力衝突の危機をはらむ事態が醸成されつつある。 今回の祖平統声明は北側の最終判断に基づく立場表明だ。声明には、もはや李明博政権の政策転換の可能性に期待は持てないという認識が表れている。 南側との「全面対決態勢」に入ることを宣言した朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン声明に引き続き、祖平統という祖国統一運動部門の常設機関が北南合意の無効化を声明の形で「正式宣布」したことは、世論喚起以上の意味を持つ。 声明が指摘しているように、北南関係を「戦争瀬戸際の最悪の状態」に追い込んだ張本人は李明博政権だ。同政権は「失われた10年」をことさらに叫びたて、北南首脳対面の結実である6.15共同宣言と10.4宣言を否定した。 李明博大統領は祖平統声明に対して、「両者の合意は北側の声明一つで破棄される性格のものではない」と話したが、これは過去の北南合意を反故にした自らの反北対決路線にこそ向けられるべき指摘だ。北側は李明博政権によって北南合意が死文化、白紙化した事実を追認したに過ぎない。 南朝鮮の一部には、北側の一連の声明は「オバマ政権に向けられたもの」であり、北側の立場表明を「米国の関心を引くため」だとする見方がある。 李明博大統領の「自由民主主義体制下での統一」発言、反北ビラの散布と謀略放送の強化、「急変事態」と「先制攻撃」論の提唱など、「李明博政権の反北対決策動は本質において、われわれを武力でどうにかしてみようという北侵戦争騒動」というのが北側の観点だ。北側の対南批判を米国の新政権発足と結びつけながらうやむやにする間にも朝鮮半島の緊張は高まり、南朝鮮当局が「平和と安全をかく乱する存在」としてクローズアップされる構図が生まれている。 北側は今年元旦の3紙共同社説で「朝鮮半島非核化の実現」に向けた強い意欲を表し、「東北アジアと世界の平和と安全を守るための自主的な対外政策」を推し進めていくと明言した。 今年に入って、中国共産党中央対外連絡部の王家瑞部長が1月21〜24日に訪朝、金正日総書記と会見した。 また、祖平統声明発表直前の29〜31日にアレクセイ・ボロダフキン次官(6者会談団長)を含めたロシア外務省代表団が平壌を訪問した。 一連の外交を通じて、東北アジア地域の平和と安全に関する問題が論議されたとみられる。朝鮮半島で北南対決を激化させている李明博政権は、明らかに国際社会の潮流に逆行している。 米国での政権交代を機に、朝鮮半島非核化を論議してきた6者会談の枠組みにも新たな関心が集まっている。昨年12月の6者団長会談は東北アジアの平和安保問題に関する作業部会を今年2月、モスクワで開催することに合意した。 李明博政権は「非核・開放・3000」を提唱し、北側の核放棄を新たな対北政策推進の前提条件にするという立場だが、南朝鮮当局のこのような同族対決姿勢が多国間外交の場で問題視されることも考えられる。 李明博大統領はこの間、北側の「態度の変化」をうんぬんし、「長期的観点」から情勢に対処できる戦略をとると言ってきたが、実際には悠長な態度をとっていられる状況ではない。 1月17日の朝鮮人民軍総参謀部スポークスマン声明は、99年に宣布した西海上境界線をそのまま維持するという立場を明確にした。一方の南側は、国防長官が率先してNLLの固守を叫んでいる。 「北南間の政治・軍事的対決は極限に達し、火と火、鉄と鉄が真正面からぶつかり合う戦争の瀬戸際まで至った」という祖平統声明のくだりは決して誇張された表現ではない。(金志永記者) [朝鮮新報 2009.2.6] |