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〈月間平壌レポート -09年1月-〉 往年の富国、再興の活気満ちる

明示された4年の里程標

 【平壌発=韓昌健記者】ベッドの上から窓の外をじっと眺めていた。午前7時を過ぎても東の空にはまだほのかに紺碧が降りている。今年はどんな一年になるのか。もうじき2009年の太陽が昇る。起き上がって窓を開けた。心地よい風が部屋を吹きぬける。霧の帳が辺り一面に立ち込め、その下を大同江がゆっくりと流れている。少しずつ街が朝焼けに紅く染まり、霧が晴れ、やがて平壌市が姿を現した。5千年の歴史が紡いだ朝鮮という美しい響きにしばし言葉を忘れた。

待ち遠しい共同社説

 元旦、平壌は新年を迎えた。

 年明け早々、朝から周囲がそわついている。3紙共同社説が待ち遠しいらしい。今年の内容は特異な予感がすると口を揃える。ホテルの受付で新聞をもらい事務所にこもった。

 昼下がり、大同江沿いを歩いた。

 水面に薄く氷が張っている。試しに小石を放った。割れるほどでもないが人は乗れないであろう。金日成広場を背にして腰掛けた。風が吹かなければ陽射しが意外と暖かい。対岸に立つチュチェ思想塔を見上げながらこの国が歩んだ60年に想いを巡らせた。

 全てが灰に帰した戦後の平壌に、いま視界に映る建造物はなにひとつとして存在しなかった。文字通り廃墟から出発した。誰かが手を差し延べてくれたわけではない。己の力だけを縁に、苦を苦といとわず、労を労と言わず、一途に建国の希望に胸をたぎらせた。

 一すくいの土を盛るにも、一片の石を積むにも、国を興す情熱に燃えたあの頃の活力をもう一度−。

 この合言葉のもと、朝鮮はふたたび千里馬の手綱を引いた。

初雪に覆われた平壌

ソリ遊びを楽しむ平壌市民(16日)

 毎年1月5日は小寒、冬将軍の行方を占う日だ。現地スタッフいわく、今年の小寒は寒くないという。暖冬だというので温度計の目盛りを確かめると、はたしてマイナス3℃。苦笑するほかない。日本を発つ前、水性インクは凍ると助言された。油性インクのボールペンを何種類か持参したが、それでも屋外での取材時は字が擦れて筆記にてこずっている。

 15日、初雪が降った。

 平壌の雪景色は見応えがある。生涯に一度は目にすることを薦めたい。艶めく雪肌に覆われた市内を眺めていると、年甲斐もなく気分が高揚する。休日、居ても立ってもいられず街に出た。

 焼いもと落花生の売店に長蛇の列が連なっていた。雪ダルマ作りに精を出す親子を何組も見かけた。広場という広場で子どもたちが雪合戦に興じ、凧を揚げ、ソリに乗っている。氷塊を拾っては河畔で遠投を競っている。

 ベンチには、手を取り合ったままじっと大同江に湛えられた水を見つめるカップルの姿がある。本を片手に小声で読みながら歩く学生を何人も見かけた。脇の芝生で数人の大人が輪になってあぐらをかいて、トランプに興じていた。

 のどかな光景だ。一様に表情が明るい。今年の世相を反映しているかのようだ。

踏み出された第一歩

 平壌市はこれから新装開店さながらの建設ラッシュを迎える。

 往年の富国を再興しようと、至る所で昼夜をあけず工事の準備に励んでいる。シャベルをつかむ手ひとつにも活気が満ち、したたる汗一粒にも情熱が息吹いている。かつてナポレオンが愛した「進軍!」という言葉が今の朝鮮にはもっとも似つかわしい。

 平壌ホテルの向かいに平壌大劇場がある。リニューアルの真っ最中だ。労働者の起居する仮設住宅が敷地内に軒を争っていた。

 明け方から行進曲調の音楽が大音量で流れる。横一列に等間隔で並んだ女性たちが旗をぶんぶん振っている。どこからともなく数百人の労働者がぞろぞろ現れた。めいめい工具を片手に隊を組み始める。やがて合図とともに雄叫びを上げながら大劇場内へと駆け足で入っていった。毎朝7時きっかりに見られる光景だ。おかげで目覚まし時計の出番がない。

 2年ぶりに訪れた平壌は、整然とした景観が印象的だった。

 道路整備工事が進んでいる。主要な通りはほぼ完工した。滑らかに走る車中から平壌市内をあらためて見つめると、この都市の構造的な良さを再発見できる。

 平壌はいい街だ。

 東京と違って、ごちゃごちゃしていない。街の雰囲気も殺伐としていない。いつなんどき凶悪事件に巻き込まれるか予測できないといった恐怖感とは無縁だ。

 年頭から経済の各部門を訪ねている。

 「総書記による親筆のような共同社説」。取材する先々で聞かれた感想だ。

 朝鮮はいま、強盛大国建設に向けて最後の航海を始めた。総書記自らが4年の里程標を明示した。千里馬製鋼連合企業所を先頭に全ての経済部門が沸いている。

 労働新聞19日付1面に元旦から半月間の経済成果が載った。鋼鉄生産量2倍以上、火力発電所の電力生産1.4倍以上、鉄道貨物の運搬量3万トン以上増加(いずれも昨年同月比)が公表された。

 このペースを2012年まで保てるのかどうか−。それはひとえに、戦後の復旧建設時代を体験していない新世代がいかに発奮するかにかかっている。

 いま祖国の青年たちは、強盛大国建設に向けて抜山蓋世の気概に満ちあふれている。千里馬世代の子孫として、その伝統を受け継ぐ担い手として、新たな歴史を創造すべき使命のもとに一丸となって駆けだしている。

 冬来りなば、春遠からじ。

 苦難を乗り越え、未来に向けて、第一歩は踏み出された。

[朝鮮新報 2009.1.28]