〈虫よもやま話-28-〉 言葉 |
「誰に『お前』って言ってるんや!」 三男一女の三男として生まれた私は、幼少の頃から何かと兄2人と競い合い比べられながら育ちました。
とくに2歳年上の次兄にはまともに「ヒョンニム(兄)」と呼んだことがないほどライバル心を燃やしていたため、大学の時にこのような叱咤とともに大喧嘩をしたのでした。
今回は、「言葉」について書こうと思います。 私たち人間が他の動物と区別される大きな点、それがこの言葉の獲得です。今でも多くの民族によってさまざまな言葉が守られ、コミュニケーションの手段として用いられています。 それでは昆虫類はいかがでしょうか? もちろん、彼らには私たちのような言葉はなくても、同種間・異種間でさまざまな方法を駆使してコミュニケーションをとっています。 大きく「化学的」「視覚的」「聴覚的」「触角的」コミュニケーションに分けることができますが、有名なのは化学的手段であるフェロモンを用いたコミュニケーションです。 たとえばゴキブリ類が集合を目的として放つ「集合フェロモン」、ミツバチ類が危険を感じた際に放つ「警報フェロモン」、アリ類が食物を発見した際にその位置を教えるために放つ「道しるべフェロモン」、そして多くの雌が繁殖の際に放つ「性フェロモン」などを挙げることができます。また、社会性昆虫類では女王だけが放つ「階級分化フェロモン」によって、その巣内での役割が決定付けられることも知られています。 もしかすると、私たちよりも多様で的確なコミュニケーション能力を持っているのかもしれませんね。 兄たちが社会に出て働き始めてから、「お前」という言葉は自然と出なくなりました。 朝青イルクンとして地域の納涼大会を手伝う次兄の姿を見た時から、素直に「ヒョンニム」と呼べるようになっていたのです。 「言葉とは単なるコミュニケーションだけではなく心を通わせること」、昆虫たちには理解しようもない点です。 「ヒョンニム」。単に兄を表した言葉ではない、今ではそう感じています。でもやっぱり「オッパ(兄)」、こう呼ばれることが大好きです(笑)。 今年も1年間、本連載とお付き合いしていただき、言葉では言い尽くせませんが、「本当に心からコマッスムニダ!」。 良いお年を!(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程) [朝鮮新報 2009.12.18] |