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〈虫よもやま話-27-〉 攻撃〜番外編〜

ミイデラゴミムシ捕獲成功

 「あ! また折れたやんけ!」

 幼い頃、次兄とプロレスごっこをしていた時、日に2本も歯を折られました。苦痛を与えた方は覚えていないでしょうが、与えられた方はきっちりと覚えているものです。

 日頃、私たち「ヒト」は他種から何らかの攻撃を受けているのでしょうか?

 まさか「ごっこ」の過程の出来事を「攻撃」とは言えませんね。映画に出てくるような「エイリアン」や「プレデター」が地球を侵略しにこないかぎり、幸いにもその答えは「今のところノー」です。

 道具を使うようになったためか、私たちの体には攻撃に適した器官が具わっていません。実はこれは動物界では大変稀な例で、「ヒト」以外のほぼ全ての動物には自身の生命を守り生き抜くために特化した器官が具わっています。

 たとえば、鋭い牙や爪、体内に蓄えられ腺から放たれる毒や異臭はその代表的な例です。もちろん昆虫類にもそのような器官が具わっていますが、小さく力の弱い彼らは他の動物と比べて大変ユニークな方法を用いています。

 「ヘッピリムシ」(正式名称「ミイデラゴミムシ」)。

 この名前を聞いて苦い思い出をお持ちの読者も多いのでは?

 私は初級部のころ、無心でこの昆虫を素手で捕まえた瞬間、その熱さと痛さに仰天し、思わず悲鳴をあげてしまいました。炎症を起こした指は変色し痛い思いをした記憶があります。

 これはヘッピリムシの具える防御器官による攻撃です。その仕組みは、腹にある貯蔵嚢に蓄えられた化学物質が連結している反応室で酵素と反応しあい、爆発音とともに尾端から噴射されるという仕組みです。本種が含まれるゴミムシ類にはこのような攻撃をする種が多く目に入ると危険なため、これらの採集を専門とする研究者はゴーグルをかけているほどです。

 最近は登山ブームのようですが、「野生動物」による被害報告で最も多いのはクマやヘビではありません。主に、スズメバチなどの昆虫類です。自然の中に入る時には事前にしっかりと知識を蓄えておきましょう−。

 結局逃がしてしまったヘッピリムシ。変色した指をさすりながら、ふと思いました(あっちは必至に反撃しただけか…)。

 次兄にやられっぱなしだった私、ヘッピリムシから教わることがありました。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程)

[朝鮮新報 2009.12.11]