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朝鮮新報読み 揺るぎない視点つちかう

北海道初中高の取り組み 「しなやかな感受性と精神力鍛える」

朝鮮新報を教材にした課外授業(高級部2年)

 午後の課外授業では17人の役員が壇上に。高2のクラスに入った丁用根くんの「授業ぶり」をのぞく。

 朴先生の熱弁そのままに丁くんも朝鮮新報のタイトルを読み、的確にミニ解説をしていく。1段、2段の小さなタイトルまで見逃さず、テンポよく読んでいく。やはり、他校への関心が高いらしく、4面に載った「福島初中アボジ会が新しいバス寄贈」の記事もしっかりフォローして、「わが校でもそうですが、ウリハッキョにはどこにでもこのように同胞愛に富むアボジとオモニたちがいます」と強調した。

 高校生ともなると時事問題への関心も高く、この日の「春夏秋冬」が取り上げた日本のメディアが流す「反北世論」に触れ、「検証抜きで何でも一方的に垂れ流す報道姿勢はおかしい」と強調した。

 「授業」を終えた丁くんに「最近のニュースで気になることは」と聞くと、「オバマ大統領のノーベル賞受賞」との答え。「日本のテレビも新聞も、お祝いごとのように扱っていたのがおかしい。家でも食卓で話題になった。新報を毎号きちんと読んで、問題意識が常にある。どんな話題になっても論議できる」と胸を張った。

自主的な授業、笑い声

高校時代の3年間、「朝鮮新報漬けの生活を体験した」と話す崔美澪教員

 各クラスを巡回しながら、授業ぶりを見守る朴先生。その視線の先には生徒の手で運営されている朝鮮新報を教材にした自主的な授業がある。クラスの雰囲気は明るく、笑い声ももれる。現代っ子たちに朝鮮新報が愛されている、という実感が持てた。廊下には時事問題などをわかりやすく解説した手作りのポスター、写真、壁新聞が大きく貼り出され、あの手この手の工夫が凝らされていた。

 朴先生はこう指摘する。

 「現代政治におけるメディアの役割に目を向ければ朝鮮新報の力は大きいし、今後もその役割はいっそう増大するだろう」「米国の強圧的な外交政策や戦争態勢に歩調を合わせ、日本当局は国策に沿う情報コントロールを続けている。そうした朝鮮への偏向報道が続く中で、常に疑問を持ちながら、生徒たちが揺るぎない自らの視点を持ち、本質を見誤らないよう導いていくことが大切だと思う」

 また、同校の社会科担当の金有燮先生も「ただ棒読みするのではなく、授業の中でしっかり読み、考えさせることで、子どもたちの世界観が、自然に生活の中に根を張ることができると思う。ほんものの知識は、生活の中でだけ身についていく。思想を鍛え、同胞社会への愛情を持ち、民族の未来を担う人材として生徒たちを育てるうえでも、朝鮮新報はすばらしい教材、その役割は絶大だ」とキッパリ。

日本の報道との違い

生徒たちが学期に一度発表する小論文集

 また、高級部1年生のとき、朝鮮新報の課外授業が始まって、「丸3年間、朝鮮新報漬けの生活を体験した」と語るのは崔美澪先生だ。朝大を卒業して一昨年、母校に戻ってきた。学生時代をこう振り返った。

 「高校生の頃、年間百回はこなしたと思う。はじめは難しかったが、積み重ねるうちにニュースのおもしろさを知ることができた。朝鮮新報と日本の報道との違いもよくわかった。朝高委員会の役員になると、上級生のクラスに入って、朝鮮新報を読んで、解説を担当するときもある。だから、責任は重かった。でも、その過程で自分の頭で考え、自分の言葉で語ることを覚えた。4年後、母校に戻ってきたら後輩たちに引き継がれ、ますます学習ぶりに熱が入っていたのでホッとした」

 日本で「権力とメディアの境がなくなった」(作家・辺見庸さん)と警鐘がならされて久しい。そんな時代にあって、北海道のウリハッキョでは、まさに「考える葦」として朝鮮新報を位置づけ、民族教育の基盤である人間形成に取り組んでいた。

 人間的なしなやかな感性と精神力は、一朝一夕では生まれない。息の長い取り組みの成果は、厳しい風雪に耐えて、やがて芽吹くであろう。

[朝鮮新報 2009.11.6]