〈虫よもやま話-24-〉 名前 |
「あんたは、ちゃんと≠オやなあかんから、チャンドや!」 本当に、幼い頃からこう言われ育ってきました。現に漢字を読めない頃は、自身の名前の由来をこのように理解していたほどです。
もちろんこれが真の意味ではありませんが、「名前」にはさまざまな思いが込められていることに違いはありませんね。
世界中で年に約2千種の新種が発見されている昆虫類を相手にするわれわれ分類学者にとって、それらに命名することは大きな一つの役目です。 私もこれまでに6種ほどの新種に命名することができましたが、名前を与えられるということはこの世の存在として認められる第一歩であり、そのため、実は大変重要なのです。 名前あってこそ私たちはその種を「種」だと認識できるのです。 われわれ人間には一個体にそれぞれの名前が付けられていますが、多くの動植物には種名が付いているだけで、一個体あたりにいちいち名前はつけられていません。 そのため、カブトムシはカブトムシが絶滅しないかぎり、数百年が経とうとカブトムシと呼ばれ続けます。 「新種を捕まえたら名前をチャンド虫≠チてつけたら?」とよく言われますが(笑)、動物では国際動物命名規約によって細かく条項が定められており、やはりその種の特徴を表した適切な名前をつけてあげることが大切ですね。 しかし、見た目があまりにも類似している種が多い昆虫類では、誤って同種に複数の名前がつけられたり他種で同じ名前がつけられたりする場合があり、研究対象によっては大変な混乱状況です。 確か初級部6年生の頃、「学研」の懸賞が当たらないのを名前のせいだと思い、「通名」を使って応募したところ当選賞品が家に送られてきました。 しかし、その差出人の名前を見たオモニは顔を真っ赤にして、「こんな名前は家にはない!」と激怒しました。日本の高校から朝大に編入し、堂々と本名を名乗ることのできる嬉しさや大切さを人一倍知るオモニだからこそ、厳しく叱りつけたのだと思います。 今では当選賞品よりもその言葉が、かけがえのない私の宝物です。名前をつけてくれて本当にコマプスムニダ。 だから「明るい道」、私は歩んでいます。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程) [朝鮮新報 2009.9.4] |