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〈虫よもやま話-19-〉 ぬくもり

渓流沿いに多いイシカゲチョウ

 「どうして虫は暖かくなってくると出てくるんですか?」

 もうすっかり昆虫採集の一番楽しい時期になりました。昆虫たちが多く現れたのを見た児童がふと疑問に思ったのでしょう。

 一般的には「昆虫採集=夏」というイメージがありますが、長い間、植物と共生してきた昆虫類にとっては、木々が力強さを増す梅雨の時期こそ、採集の最良時期です。この時期になると、「また虫カゴ(研究室)から逃げていきよった!!」と先生が呆れるほど、授業そっちのけで採集のために東奔西走です(笑)。

 「暖かくなったら昆虫たちが現れる」というのには、やむをえない理由があります。それは私たちや鳥類が「恒温動物」であるのに対して、昆虫類は「変温動物」だからです。

 池でよくカメが体を温めているあの行動も変温動物の象徴的なものです。昆虫類も例外ではなく、トンボやチョウが翅を広げて静止する行動は体を温めていると考えられています。「体を温めないと動けない=寒い時期には活動できない」ということです。

 しかし、これはそんなに不便なことだけでもありません。恒温動物が体温を一定に維持するために多くのエネルギーを必要とし、また常に消費しているのに対して、変温動物は寒い時期になると活動を休止することによって不必要なエネルギー消費を抑制することができるのです。

 そのため冬になると「休眠」という手段を利用して長い休息をとりますが、モンシロチョウなどは「夏休眠」といわれる最も暑い時期を避けるための機構も具えているのですから、驚きですね! この機構こそ昆虫たちの脅威的な繁栄の理由の一つと言えるでしょう。

 最近、朝鮮新報の連載のおかげでさまざまな地方で講演依頼を受けるようになりました。

 どの地方に赴いても、互いに初体面であるにもかかわらず、なぜかこれまでずっと一緒にいたような温かい気持ちになります。

 私はもちろん常に動くことのできる恒温動物ですが、この温かい「ぬくもり」こそが、何よりも大きなエネルギーです。

 それにしても、同胞社会ってかぁ〜なぁ〜り、熱すぎません? いつまでも保っていきましょう!

 それではウリナラへ、採集に行ってきま〜す!(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程)

[朝鮮新報 2009.6.26]