〈虫よもやま話-17-〉 食 |
「ちゃんとご飯食べてるの?」 四国に来て、早4年目。 この間、オモニの心配はやはり食事のことで帰郷する度、二言目にはこのように聞かれます。自分ではしっかりとご飯を食べているつもりですが、食費を削りながらバランスよく栄養を摂ることは難しく、日々悩みの種です。幼稚園の頃から「キムチの汁かけご飯」が大好物で、それだけで十分満足する私ですから、オモニが心配するのも無理ありませんね。 この地球上のありとあらゆる場所に生息する昆虫類の繁栄の理由として、多種多様な資源を糧として活用していることを挙げることができるでしょう。 私たちの生活からは想像もできないような資源を、彼らは「食」の対象として積極的に利用しています。とくに彼らの多くが利用しながらも我々が利用できない身近な資源があります。 それは「木」です。 我々はセルロースでできた木を美味しく食べることができません。 しかし、多くの昆虫類がこれを可能としています。 私の研究しているカミキリムシ類はその代表的な昆虫と言えるでしょう。彼らは体内に共生する微生物がセルロースを分解することによってそこから栄養を得ているのです。 人口増加による食料危機が叫ばれる昨今、どうにかこのような昆虫類の生体機構を研究することによって食料問題を解けないものかと度々考えます。 木材を栄養として摂取するための研究もいいですが、木を食べる昆虫類を美味しく食べる研究の方が楽しそうですね(笑)。実際、数回このような虫を食べてみましたが、「生」はまずかった〜! 誰か調理法、考えていただけません?… 幼稚園から高級部卒業まで、オモニは毎日欠かさずお弁当を持たせてくれました。最近では、四国初中の食堂オモニが毎日作ってくれます。手作り弁当を開けると家族の絆や幸せの匂いがして、目頭が熱くなります。愛情のこもった食べ物こそが私たちを育む最良の糧ですね。 「オモニ〜、とりあえず飯!」 冷蔵庫に並べられたキムチたちを眺めながら言う、これが帰郷した私の二言目。 「あんたのためにムルキムチ作っておいたからね!」 これこそ私の最愛の餌(笑)。 あ〜、この「汁かけご飯」、ほんと世界一美味いんだなぁ〜…。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程) [朝鮮新報 2009.4.24] |