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〈投稿〉 東京朝高の1年間 片道2時間以上 遠距離通学の生徒たち

東京朝高初の快挙「クラス全員皆勤賞」

 桜の蕾がほころび始めたと喜んでいたのも束の間、すでに満開の時期を迎えている。

 明日はいよいよ入学式だ。きっとすばらしい出会いが待ち構えているだろう。

◇      ◇

3組の生徒たち

 生徒、保護者らにとっては特別な日となるが、われわれ教員にとってもまた喜びや期待がひとしおである。何年教員をやっていても原点回帰させられる、1年のうちで一番胸がワクワクする日だからである。

 思えば1年前、右も左もわからないこの東京の地に赴任してきた。過ぎ去った日々が走馬灯のように脳裏を横切ってゆく。

 校長先生はじめ、お世話になった多くの広島の同僚や先輩方に別れの挨拶をし、決意を新たにここ東京朝鮮中高級学校にやってきた。

 配属先である高1の先生方は私を温かく迎えてくれた。手取り足取り懸命に指導してくださった。また自らよい手本となり導いてくださった。

 保護者たちは地方から出てきた私に、行く先々で同胞愛に満ちた厚いもてなしをしてくれた。感謝の気持ちはこの書面にいくら綴っても書き尽くせない。周りの手助けがあったからこそ、この一年を有意義に過ごせたと感謝の気持ちでいっぱいだ。

 特に私を支えてくれたのは他でもない33人のクラスの生徒たちである。この生徒たちのことを存分に紹介したい。

 男子17人、女子16人で編成されたクラスの名は「1年3組」。

 のちに快挙を成し遂げることなど当初考えすらしていなかった。

 33人の3組、語呂合わせでもしたかのようなこの数字の組み合わせに鳥肌が立ったことを今でも記憶する。

 クラスには群馬県前橋、千葉県木更津、神奈川県相模原、東京でも町田といった遠隔地に住んでいる生徒が少なくなかった。通学に労する時間は2時間を優に超す。

 学校までの道のりは、近距離通学生や私たち教員らの想像をはるかに越えるものだろう。

 実際前橋まで足を運んでみたが、所要時間はもちろんのこと経済的負担もすさまじいものだと実感した。

 生徒のみならず学父母の苦労ははかりしれないものだった。まさに脱帽の思いだ。

 東京朝高の生徒たちが、このような広範囲から通っている事実を広島にいた時など少しも考えていなかった。ある意味東京中高を誤解していたかもしれない。都会に暮らす生徒ばかりだと。

 しかし、生徒たちの実態を把握してゆくにつれ、民族教育によせる父母たちの熱い思いが身にしみて伝わってきて自身の責任の重さを痛感させられた。

 クラスでは班長をはじめとする役員を選出した。結束をはかるスローガンも掲げた。年間目標として、高校生活をエンジョイするにはまず学校にきちんと通おう、勉学に励もうといった、どこの学校でも聞かれる初歩的なものも盛り込んだ。さらには委員会で何度も討論しそれらをより具体化していった。

 33人は入学当初こそ互いによそよそしい雰囲気であったが、次第に高校生活にも慣れ意欲的に朝青活動に取り組むようになった。

 私をいつも圧倒したのは、誰一人として学校を休むことなく、朝礼を全員そろって迎えたことだ。

 日本の教育現場では、学校を休むことを安易に捉えたり、具合が悪いからと本人の意思に耳を傾けず親がすべてを決定する過保護的な傾向があるようだが、このギャップはいったい何なんだろうか。

 登校拒否、校内暴力が横行し、授業もままならないと多くの日本の教師たちは嘆いているらしい。ウリハッキョでしか考えられないこの素行は、日本の学校ではやはり奇跡とも言える「事態」であろう。

 毎朝4時半に起き部活の早朝練習に参加する生徒、JRや私鉄を幾つも乗り継いで通う生徒、部活を終えて帰宅すると夜10時になる生徒等…

 朝と昼の弁当両方をこしらえるオモニたちの苦労はまた如何ほどだったろう。

 様々な悪条件をも乗り越え33人は毎日元気な姿で登校した。もちろん、緊張感や生活リズムの変化から体調を崩した生徒らが出なかったわけではない。

 38度以上の高熱でも、休むと勉強に支障をきたすと我慢して通った生徒、急病で倒れた母親を看護しその合間を縫って登校した生徒、足を手術し松葉杖生活を余儀なくされても1度も遅刻をせずに通った生徒…。

 わがクラスに限らず、すべてのウリハッキョではこのようなエピソードが数多く生まれている。だから日本学校の教師らは、民族教育に教育の原点を見出し賛辞を惜しまない。

 3組の33人は私の期待以上に熱心に学校生活を送った。勉強もスポーツもほかのあらゆることにも。

 自分たちで決めた目標はたとえ困難が多かろうと最後までやり遂げようと一致団結した。生徒のひたむきな姿勢に何度目頭を熱くしたことか。

 彼らの力が集大成されたのは、運動会で見事学年優勝を果たしたことにも、各学期末試験で学年トップの座を一度も他に譲らなかったことにも、そしてクラス全員一度も休まずに修了式を迎えたことにも如実に表れている。

 まさしく「知・徳・体」のあらゆる面で全力を尽くし、それを結果として歴史の1頁に刻んだことだ。

 特に東京朝高史上初の「全員皆勤賞」という輝かしい勲章を手にしたことは、新しい伝統の幕開けを意味する快挙であると思う。

◇      ◇

 地道な一歩一歩が大きな実を結んだと声を大にして叫びたい。この快挙はまさしく生徒らの血のにじむような努力の結晶であろう。

 彼らに負けてたまるものかと、高1の他の5クラスでも年間を通じて多方面に渡り大活躍した。それを陰で支えた担任たちの日々の努力は金メダル級に値する。2008年度高1の生徒たちは、高校生活を自立的かつ意欲的に送り数々の成果をあげ無事修了式を迎えた。

 彼らはこの春高2に進級した。これから始まる生活に期待と夢を胸いっぱいにつめて。

 今年もきっと旋風を巻き起こしてくれるだろう。彼らの活躍を傍で見つめながら、私も新しい任務を全うして行こうと思う。

 東京中高は今、さらなる目標へ向かって躍進している。保護者、同胞の切たる願いに応えるべく改革に乗り出した。

 教職員一丸となり民族教育の発展のため日夜努力している。

 わが校が全国にその名を轟かせる日は、そう遠くはないだろう。(李圭学、東京中高教員)

[朝鮮新報 2009.4.24]