〈虫よもやま話-15-〉 厄介者 |
「俺たちは塩一粒でも共に分かち合う民族さ! その塩粒までもあの野郎は…」 昨年、平壌ホテルにいた時、ある人がこのように嘆きました。 あの「野郎」とは一体? そう、昆虫界住宅訪問部門のカリスマ的存在、厄介者のゴキブリです。
現在、ゴキブリの仲間は日本で約60種、地球規模では約4000種が知られています。ゴキブリの起源は今から約3億年以上も前だと推測されていますが、これは翅を具えた昆虫類の中では最も古く、彼らは人類が現れるはるか以前からこの惑星の住人なのです。 以前、歯ブラシに付いた「おこぼれ」に与る彼らを偶然目撃してしまった生徒が、「なんでゴキブリなんかこの世にいるんですか!」と私にむかって激怒していましたが、「居住区内」に侵入していたのは彼らではなく私たちの方なのでは? それでは皆さん、今回は「ゴキブリ・トリビア」です(笑)。 ゴキブリに最も近縁な昆虫は何でしょうか? それは、実はシロアリ(アリとはかなり離れたグループですよ!)とカマキリです。 これらのほとんどの種が実は、熱帯や亜熱帯で「分解者」として森林でひっそりと生活をしています。そのため、家庭内で見かけるゴキブリは大変特殊な存在で全体の1%程度です。 次に「コガネムシは金持ちだ〜♪」という歌をご存知でしょうか? 一般的にピカピカ光るコガネムシの歌として知られていますが、一説ではゴキブリのことを歌っていると言われています。それは、ゴキブリのメスが卵鞘という卵の詰まった鞘状の袋をお尻にくっ付けて歩く姿が、お金の詰まった財布を持っているように見えるからだそうです。この卵鞘、タイではフライにして食べるそうですよ。 また、イギリスや北欧では彼らを「生命の保護者」「家の守護神」として尊び、ロシアやフランスでは「幸運のしるし」として引越しの際にわざわざ連れていったり、新居に住む際にはプレゼントする場合もあるそうです。 これら以外にもさまざまな実験の対象として、漢方薬としても広く用いられています。 確かに普段の生活では常に厄介者なのかもしれませんが、誤解も多かったのではないでしょうか? え? 厄介者はどっちかって? なるほど、今となってはわれわれ人間こそ、手に負えない厄介者なのかもしれませんね。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程) [朝鮮新報 2009.3.27] |