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東大で「弁当の日」シンポ 学生など約300人が参加

食べること、生きることを考えよう

 日本の教育現場で、子どもたちが自分の弁当を作る「弁当の日」が広がっている。

 「弁当の日」は01年、香川県滝宮小学校(竹下和男校長、当時)で始まった実践で、子どもたちが自分で弁当を作り、それを学校に持参して食べるというシンプルな取り組み。メディアなどで紹介される中、九州を中心に27都道県260校で実践が広がっている。

自分で作った弁当を手に、笑顔を見せる小学生のスライドに見入る参加者たち

 この取り組みを首都圏でも紹介し、全国に広げようと10日、東京都文京区の東京大学弥生講堂で、「どうなる どうする 日本の食シンポジウムin東京−ひろがれ『弁当の日』」(主催=九州弁当の日軍団)が開かれ、学生など約300人が参加した。

 シンポジウムでは、最近の大学生の食卓事情を朝・昼・晩と数日間写真で追い具体的に紹介した「いまどきの大学生の食卓」について、佐藤弘・西日本新聞社編集委員が語った。コンビニおにぎり、パン、ジュース、お菓子…。「お金が無い」「ダイエットをしている」などの理由から手軽に手に入る食品を食べ続けている学生たち。

 佐藤さんは、彼らの「食=体に対する意識のなさ、調理能力のなさ」を指摘し、10日に1度しか排便のない女子学生や生理の来ない女子学生が増えている実態、大学を卒業して結婚、出産を迎えるときの困難についても触れた。

 次に、出産現場から命を見つめている内田美智子・助産師の「食から始まる生教育」。

 生後数カ月から離乳食としてベビーフードを与えられる赤ちゃんと、料理ができない未熟な母親、産婦人科を訪ねる中高生の性のトラブルやその背景にある家庭環境について詳しく語った。

 「お腹はいっぱいなのに、心が飢えている」−。

 講演では、家族との会話がなく、「どうせ自分なんて」となげやりになってしまう中高生が、性のトラブルを抱えやすいとの統計を合わせて紹介した。

 そして、内田さんは、「子どもたちはいずれ1人で生きていくことになる。そして、育てられる側から育てる側になる」と話を結んだ。

 佐藤剛史・九州大学農学部助教は、「これが元祖、弁当の日」「大学生の弁当の日」と題して、四国や九州の小中学校そして九州大学における実践例を取り上げた。

 朝6時に起きて弁当を作る小学生。ある子が海苔の入った渦巻状の卵焼きを持ってくると、1カ月後の「弁当の日」にはクラス全員の弁当に同じものが入っている。食品選びに献立、調理方法、盛り付けなど、子どもたちは親と会話をしながらたくさんの知識と技術を身につけていく。それらは親への感謝や生産者への思いにもつながっていく。

 体験者の小学5年生が舞台に上がり、「ぼくはもろキューが大好きで、お弁当には毎回もろキューを欠かさなかった。母さんが風邪のときは食事の準備をできるようになったし、なますも作り、今では魚を3枚におろせるようにもなった」と話すと、会場は大きな拍手に包まれた。

 九州大学では、「名前の頭文字がつく食べ物」「プレおせち」「野菜」など、ユニークなテーマを決めての1品持ち寄り形式の「弁当の日」が行われている。佐藤さんは、「この取り組みによって、学生たちは人のために働く喜び、親への感謝、アイデア・イメージ・段取り力、相手の喜びを自分の喜びに感じる力、失敗から学ぶ力を身につけることができたのでは」と話した。

 会場には民俗研究家の結城登美雄さん、漫画家の魚戸おさむさん(「玄米先生の弁当箱」小学館刊)らも駆けつけ、「弁当の日」のひろがりを呼びかけた。

 首都圏では2月9日、東京・渋谷の日本CI協会多目的ホールで11時から30人限定の「弁当の日 第一弾」を開催する。

 テーマは「我が家の自慢料理」。一品持ち寄り形式(はし、取り皿、飲み物持参)で、1人500円。申し込みなど詳細はホームページで。http://www.bentounohi.com/

[朝鮮新報 2009.1.16]