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日本政府の制裁措置 「祖国と在日朝鮮人の絆を断ち切る行為」

看過できぬ重大な人権蹂躙

 私たち朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン(ハンクネット)は、朝鮮民主主義人民共和国の乳幼児に、人道支援として粉ミルクを送っています。

 ところで、2009年6月16日に、経済産業省が「外国為替及び外国貿易法に基づく朝鮮への輸出禁止等の実施について」を発表したため、今回、粉ミルクを送るにあたって、事前に経済産業省に問い合わせました。「審査」と称してかなり時間をかけられた結果、「人道目的のための輸出に当たると判断いたしましたので、経済産業大臣の輸出承認は不要であります」との回答が来ました。もちろん、このような問い合わせなど、本来は、する必要はないのですが、受け取り側の朝鮮の乳幼児に迷惑をかけてはいけないと思い、事前に問い合わせるという手はずをとりました。

生活必需品も送れぬ

祖国への自由往来は在日朝鮮人の権利である(写真は「万景峰92」号船内で楽しむ在日同胞、05年)

 この過程で、私たちは、日本政府が制裁措置の一環として、在日朝鮮人に対して、とんでもない非人道的なことを行っていることを聞き知ることになりました。たとえば、在日朝鮮人が、朝鮮に住む孫にサッカーシューズを郵便発送しようとしたところ、郵便局で拒否されたり、朝鮮に住む親せきに食品や衣類などの生活必需品を送ろうとしたところ、税関から送り返されたりするという事件が各地で起こっているということです。

 私たちの粉ミルク支援も人道支援であり、経済産業大臣の輸出承認義務を負うものではありませんが、それ以上に、在日朝鮮人が、朝鮮に住む家族や親せきに生活必需品を送ることは、人道支援以外のなにものでもありません。

 日本政府のこのような不当な行為が事実とするなら、看過することはできない重大な人権蹂躙事件であるため、事実関係を明らかにすることも含め、直接、話し合いを持つよう、経済産業省の法務担当者に何度か電話で申し出ました。しかし、経済産業省は、会うことについては「組織で検討する」というのみでした。

 そこで、私たちは、2009年7月31日午前に経済産業省を訪ねることを事前に連絡して、当日、経済産業省の法務担当者を訪ねました。しかし、このときも「会えるかどうかを検討する」という言葉で、私たちとの面会を拒否しました。

 このことに対して、在日朝鮮人に対する理不尽な弾圧を加える政策を立案し遂行する日本政府に怒りを覚えますが、その政府機関の担当者が、私たちと会うことすらできないということを、気の毒にさえ思いました。

 しかし、それ以上に憂慮されることは、このたびの経済産業省の通達に対して、「北朝鮮」という3文字が付けば、なんの咀嚼もせず、この通達に基づいて、在日朝鮮人に対する人権侵害を、公務として平然と執行する郵便局や税関の職員が、多数、存在するということです。

 それは、同時に、今までマスコミが、虚実合い混ぜて扇情的な報道を繰り返し、いかに朝鮮と朝鮮民族に対する敵対心と排外意識を煽ってきたか、ということを如実に浮き彫りにするものでもあります。

 もはや、日本の政府とマスコミには、「人権は尊重されるもの」という概念や価値観が存在していないことと、植民地支配当時の朝鮮人に対する民族排外意識がそのまま生きていることを、実感せざるをえませんでした。

弾圧の対象ではない

 日本政府は、植民地支配政策によって、朝鮮人に対して本国での生活の場を奪い取り、日本での生活を余儀なくしました。言語を絶する過酷な労働を強いるため、強制的に日本に連行しました。

 また、日本政府は、朝鮮への帰国運動を「居住の自由」という「人道的」名目で推進しました。この帰国運動により、在日朝鮮人は、本国に多くの家族や親せきがいます。その日本政府が、在日朝鮮人と本国の家族や親せきとの絆を断ち切るという非人道的な政策を断行することは、許されるものではありません。

 日本は、朝鮮に対して植民地支配に対する責任を負わなければなりません。在日朝鮮人は、人権保障の対象者であって、人権弾圧の対象者ではありません。今回の日本政府の措置は直ちに破棄して、在日朝鮮人の当事者に謝罪するべきです。(朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン 竹本昇)

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朝鮮に対する経済制裁名目で行われている、人道物資および表現物の送付制限の不当性

[朝鮮新報 2009.8.24]