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〈経済危機のここに注目-5-〉 新興国にも波及、グローバル危機

 今回の経済危機の重要な特徴は先進国だけではなく、新興国にまでその影響が波及していることである。ある意味では新興国の連鎖破綻が危機を一層深刻化させていると言える。

 中・東欧を中心とする中小新興国が、相次いで「最後の貸し手」である国際通貨基金(IMF)に駆け込んでいる。金融危機の影響で世界中から流入していた投資資金が一斉に引き揚げ、株価や通貨は暴落、国内主要銀行は軒並み国有化されるなど深刻な流動性危機に陥り、一部は「国家破産」の危機に瀕している。アイスランドでは昨年末の時点で通貨(対ドル)が67.0%、株価は84.8%の暴落となった。

南朝鮮の消費者物価上昇率と失業者数

  物価上昇率

失業者数

2008年10月 4.8% 73.6万人
11月 4.5% 75.0万人
12月 4.1% 78.7万人
2009年1月 3.7% 84.8万人
2月 4.1% 92.4万人
3月 3.9% 111.9万人(推定)

 昨年秋以降相次いで表面化した新興国の危機は、IMFや債権国などの金融支援によって、何とか足元の危機は回避されたかのようにみえるが、今後さらなるグローバルな金融危機の様相が強まるリスクは高い。

 その要因として考えられるのは、第一に、国内のバブル崩壊である。海外への資金引き揚げの懸念がなく、外貨流動性が十分にあっても、海外の金融危機が国内の投資家心理を悪化させ、それが株式や不動産価格のバブル崩壊やその加速に結びつき金融危機の引き金になる。第二に、輸出の鈍化・減少である。欧米の金融危機を原因とする景気後退が深刻なものとなれば、欧米向け輸出が落ち込み、国内景気が落ち込む。国内の金融システムが脆弱であれば、不良債権拡大によって金融危機に陥るリスクが高まる。第三に、資源価格の反落である。昨年夏頃まで上昇していた資源価格は、下落基調が鮮明になってきている。非資源産出国にはプラスだが、石油輸出国など資源産出国にはマイナスとなる。このようなリスク要因はいまだ拭いきれていないのが実情である。

「警戒」される南朝鮮

 IMFが警戒する新興国としてリストアップされている南朝鮮経済も予断を許さない状況に陥っている。そこで南朝鮮経済の状況について少し立ち入ってみる。

 なによりも南朝鮮ウォンの為替相場が急落していることが懸念材料になっている。

 リーマンショック以降、アジア主要通貨の中でも顕著な下落をみせた南朝鮮ウォンの為替相場は落ち着きを取り戻したかのよう見えたが、今年に入り再び下落基調をみせ、3月には1ドル=1600 近くまで急落した。急落の主な背景としては、@国際収支バランスの悪化、A対外債務の急増、B証券市場からの資金の引き揚げ、C実体経済の悪化などが挙げられる。

 対外債務状況をみると、外貨準備高に占める短期債務の割合は102%、銀行預貸率も130%と新興市場国・地域のなかでもかなりの高水準にある。

 このような金融経済を反映して英経済週刊誌の「エコノミスト」は、南朝鮮をアジア新興市場国のうち「危険な国」の一つと診断した。

 実体経済も急速に萎縮している。昨年10〜12月の4半期の国内総生産(GDP)増加率をみると、マイナス3.4%と、通貨危機(98年)後初めてマイナスに落ち込んだ。これを前期比でみるとマイナス5.6%、年率換算ではマイナス22%になり、その深刻度は米国をはじめ先進国と比べものにならない。今年の1〜3月期のGDP成長率についても、前年同期比マイナス5〜8%に落ち込むとみているのが大勢である。当然ながら雇用問題も深刻化しつつあり、昨年10月以降雇用減少が続いており、3月には失業者が01年3月以来8年ぶりに100万人を突破すると予想されている。

 そんななか、とりわけ注目せざるをえないのは、ウォンの急落に伴う物価の上昇である。主要先進国ではデフレを心配するのに対し、南朝鮮だけが高物価から抜け出せずにいる。

 経済協力開発機構(OECD)の発表によれば、30加盟国の1月の消費者物価上昇率は1.3%だったのに対し、南朝鮮の場合3.7%とOECDの約3倍、先進7カ国の7倍以上に達している。3月の消費者物価は3.9%と高水準が続いている。

 日本にも増して対外依存度が高い脆弱な経済構造にある南朝鮮経済は、今後、世界経済が揺らぐたびに一層大きな打撃を受け続けざるを得ないであろう。(池永一、朝鮮大学校社会科学研究所所長)

[朝鮮新報 2009.4.20]