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〈経済危機のここに注目-4-〉 強まるデフレ経済の再燃

 企業の輸出や生産が急激に落ち込むなか、これまで比較的底堅く、景気を下支えしてきたといわれている個人消費も雇用不安が深刻化するなかで落ち込みがはっきりしてきた。

 まさに、「最後のとりで」も崩れ落ちてきたかのようである。

 日本政府は2月の月例経済報告で、景気の基調判断を5カ月連続で下方修正し、「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」としたが、判断を引き下げた最大の要因は、国内総生産(GDP)の5割を超える個人消費の減少傾向がはっきりしてきたことだ。

 いくつか代表的指標を取り上げてみると、まず、百貨店の売り上げ状況であるが、今年2月の全国百貨店の売上高は前年同月比で11.55%減となり、過去最大の下落。

 また、08年の全国の新築マンション発売戸数は前年比26.7%減の9.8万戸、過去2番目の落ち込みで16年ぶりに10万戸を割り込んだ。発売総額は3兆8240億円で、市場規模は前年より1兆2726億円縮小した。1月の国内新車販売台数が37年ぶりの低水準に落ち込んだ自動車や、家電製品といった高額品の消費不振も目立つ。

 国内総生産(GDP)をはじめとする経済統計が軒並み記録的なマイナスとなり、消費者の消費マインドは確実に低下している。企業部門の悪化がいよいよ家計に波及してきたあらわれである。

 消費が落ち込むなかで、07年10月から続いた物価上昇も止まり、下落基調に代わりつつある。消費不振が表面化し、物価に下落圧力がかかっているのである。

 日本経済はいよいよデフレの泥沼に再びはまり込んでいく公算が強くなってきたようだ。

「ダブルの悪循環」

 物価が下がり続けるデフレは消費者にメリットはあるが、企業の売り上げが減り、失業者や給料を減らされる働き手が増え、設備投資や個人消費も冷え込んで需要が減り、さらに物価が下がるといった悪循環に陥りかねない。

とりわけ、雇用情勢の急速な悪化を考えると、先行き、より一層の厳しさが待ち受けていると言える。

 厚生労働省の発表によれば、2月の有効求人倍率(求職者1人に対する求人数)は前月を0.08 下回る0.59倍で、03年2月以来の低い水準となった。落ち込み幅は第1次オイルショック後の74年12月以来の大きさ。

 また、2月の失業率は前月を0.3 上回る4.4%となり、06年1月(4.4%)以来の高水準を記録した。完全失業者は前年同月比33万人増の299万人。就業者数は前年同月より27万人減の6265万人となり、13カ月連続の減少となった。

 景気がいつ底を打つのか先が見えない状況で企業の人員削減は今後本格化し、雇用問題は益々深刻化していくことが予想される。

 世界の景気は後退しており、不況は一層深まりつつあるため輸出の早期回復が望めないなか、企業の減産が雇用情勢の悪化を招き、それが個人消費を鈍らせ企業がさらに減産に走るといった悪循環も本格化しつつある。

 そういう意味で、日本経済はいわば「ダブルの悪循環」に直面しつつ全体経済が急速に縮小していくデフレ経済化への入り口に差し掛かっているといっても過言ではない。

 思い起こせば、日本経済はバブル崩壊後の低迷期に少なくとも04年度までの7年間、消費者物価が下がり続け、長くデフレに苦しんだのであるが、それを思い浮かべるならば事態は深刻の一言に尽きる。

 近年、非雇用者数が増えてきている在日同胞社会にとって、雇用情勢の急速な悪化は安定な職の確保において、その影響は少なくないであろう。そうでなくても、未だ差別的な雇用環境におかれている在日同胞にとって風当たりは一層強くなることが懸念される。(池永一、朝鮮大学校社会科学研究所所長)
 

[朝鮮新報 2009.4.6]