top_rogo.gif (16396 bytes)

外国人管理法制改定学習会 新在留管理制度の問題点と課題

大阪で20代研究者、有資格者が呼びかけ

 「新たな在留管理制度」という名の、外国人管理法制構築のための法案が日本の国会に提出されようとしている。法務、総務両省はすでに法案の骨子をまとめた。「外国人登録法」が廃止され「出入国管理法」に一本化され、新たに「IC在留カード」システムが導入される見通しだ。

 管理と監視のさらなる強化が懸念されているそんななか、20代の研究者や有資格者を中心に26人が呼びかけ人となり、公開学習会「検証『新入管体制』〜新たな在留管理制度の本質とは?」が昨年12月22日、大阪市内で行われた。問題点や課題が指摘され活発な議論が行われた。

問題点と課題、指摘

学習会では活発な議論が展開された

 学習会では、丹羽雅雄弁護士による基調報告「新たな在留管理制度の構築をいかに考えるか」の後、20代の若手研究者ら3人が個別報告を行った。

 フリーライターの梁英聖氏は「現代日本の移住労働者と在日朝鮮人」、大阪大学大学院生の鄭祐宗氏は「戦後日本国家による対外国人管理体制」、一橋大学大学院生の鄭栄桓氏は「歴史のなかの『再入国許可』」というテーマで報告した。

 丹羽雅雄弁護士は、2007年に施行された「改正入管法」により指紋押捺義務が復活し、また同じく07年の労働法制改定によりすべての事業主にすべての移住労働者の雇用状況を厚生労働大臣に報告することが義務付けられたことについて言及。「新入管法制」では、厚生労働法制が「治安維持法制」に変質していると指摘した。

 そして、「新入管法制」の構築は多文化共生の名のもとで推し進められる「同化的社会統合施策」であり、在日朝鮮人を抹殺する「存在解消政策」でもあると指摘し、あるべき多民族・多文化共生社会の理念とそれに基づく具体的な法制度の構築について言及し、国家(行政)が保有する個人情報に対する「情報オンブズマン制度」の設立を提起した。

在日外国人の人権侵害

 昨年6月、自民党の「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」は「人材開国! 日本型移民国家への道」という報告書をまとめた。梁英聖氏はこれらの政策立案にも影響を与えている元東京入管局長・坂中英徳氏の「移民国家論」を詳細に分析し、その発想に潜むレイシズム(人種差別)について鋭く指摘した。

 また、この「移民国家論」は在日朝鮮人を移民のモデルマイノリティとして位置づけているが、これは植民地支配の歴史隠蔽と本国への繋がりを徹底否定することで成り立っていると批判。当事者側からの総合的な外国人政策の提言が急務であると述べた。

 鄭祐宗氏は歴史資料と判例に基づいて「外国人登録法」の構造について報告。戦後日本が、外国人登録原票に記載された写真や指紋などの外国人登録情報を繰り返し利用してきた事実を指摘。在日外国人のプライバシー権侵害について、自治体職員の証言を紹介しながら報告した。

 また、外国人登録証明書の常時携帯提示義務を課されている在日外国人は、憲法と刑事訴訟法が規定する供述拒否権(黙秘権)を侵害されていると指摘。「入管法」「外登法」違反に時効の成立が実質的に認められていない判例を紹介し、現代の差別構造を維持しているこれらの判例が朝鮮戦争の時期に形成されたと指摘。「外登法」によって在日外国人の人権は違憲状態に置かれ続けていると訴えた。

「再入国許可」全廃を

 日本法務省による「朝鮮籍」者に対する「再入国許可」の制限措置(06年7月)以降、「再入国許可」の判断が法務大臣の裁量にゆだねられていることの問題点はたびたび指摘されてきた。

 鄭栄桓氏は1907年までさかのぼり、在日朝鮮人の移動が植民地期から現在に至るまで日本政府によって恣意的に規制されてきたことを明らかにした。

 とりわけ解放後における規制の中心には日本政府による「再入国許可」権限の独占があり、これまで繰り返されてきた「帰国か帰化か」「帰国か定住か」といった論争も、ある意味これを前提にしてしまっていると指摘。必要なのは、「帰還権」(いつ帰ってもいい権利)が保障されるためには「在留権」(いつづける権利)が保障されなければならないという認識に立った在日外国人の権利論の構築であり、そのためには「再入国許可」制度が全廃されなければならないと主張した。

 留学同大阪の朴重信委員長は「新たな在留管理制度は、権利を主張するマイノリティの集団を認めないようだ。総聯弾圧もその文脈で捉え直す必要がある。私たちは奪われ続けている正当な権利を今後も主張すべきだ」と感想を述べた。

 法務、総務両省の方針では、特別永住者を含むすべての外国人に対して、外国人登録証に代わる新たな身分証明書の携帯を義務づける。課題は山積だが、争点が明確になってきた。【留学同大阪】

[朝鮮新報 2009.1.19]