福岡県飯塚市で、２０００年１２月に建立された朝鮮人無縁仏を追悼する「無窮花堂」に心血を注いできた�｢来善さんがさる６月１１日、死去した。享年８６歳。

　「朝鮮半島出身者の過酷な歴史を後世に残そう」と、長年、筑豊地方の炭鉱などで命を落とした同胞たちの遺骨収集の先頭に立ってきただけに、生前を知る人からは深い悲しみの声が広がっている。

　戦時中、朝鮮半島から筑豊の炭坑に強制連行された人々は１５万人にのぼる。�｢さんは、４３年１０月全羅南道から八幡西区の貝島大辻炭坑に強制連行された。高さ２メートル以上の壁に囲まれた８人部屋。粗末な食事で地底に潜らされ、一日１２時間も石炭を運んだ。栄養失調で倒れる者、落盤事故で命を失う者…。「リンチされる朝鮮人の悲鳴を毎晩聞いた。死んだ朝鮮人坑夫の遺体がボロ雑巾のように捨てられた」と述懐していた。

　�｢さんは２カ月後ここを脱出する。その後、九州を転々として、何とか生き延びた。

　解放後は総聯の支部副委員長や朝鮮学校の建設副委員長を務めた。民族教育を通じて平和の大切さを多くの２、３世や日本人に伝えてきた。

　転機が訪れたのは８６年。病に倒れて入院した。見舞いに訪れた同胞に「戦時中に死んだ同胞たちの遺骨を探している」と聞かされた。各地の寺には「朝鮮人」と書かれただけの骨壺、ボタ山のふもとには石をただ置いたままの無数の「無縁仏」が放置されていた。

　胸が塞がれる思いだったと記者に語った�｢さん。野ざらしのままの遺骨と今、偶然生きている自分。「彼らのために、自分が何もしなかったことが悔やまれました」。

　その思いが、後に「無窮花堂」建立に結実したのだ。頑固一徹、信念を通した「朝鮮のアボジ」だった。（粉）

［朝鮮新報 2008.8.29］