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奴隷連行と女性たち−琴秉洞氏が切り込む歴史の影

 琴秉洞氏といえば、著名な近代朝・日関係史研究者。歴史の光と影を追い続けて、膨大の著書がある。その一部を紹介すると−増補新版「金玉均と日本」「日本人の朝鮮観」「耳塚−秀吉の鼻斬り、耳斬りをめぐって」など。これ以外にも「従軍慰安婦」問題、「関東大震災と朝鮮人」(姜徳相氏との共著)などの話題作も多数。

 とりわけ琴氏が心血を注いだ一冊が朝鮮近代の開化派の指導者・金玉均についての大著(緑蔭書房、01年刊行、1025ページ)である。

 金玉均は長い間、親日派の烙印を押されてきたが、金日成主席は、1958年の著作で「一部の学者は、深く研究もしないでかれに親日派の烙印を押した」と批判、「さらに研究を深めるべきだ」と指摘した。

 朝鮮人にとって「親日」というのは、欧米でいう親日的という意味ではない。「売国的」という恥ずべき意味が込められている。

 悲運の政治家に長い間浴びせられた汚名。琴氏は、金玉均の足跡を追って、日本各地、小笠原、上海へと執念の旅を続け、ついにゆがめられた人間像を正し、彼の名誉回復を実現した。

 そして、今年80歳を迎えた琴氏が追っているのが「秀吉軍の奴隷連行と朝鮮女性たちの運命」である。女性史から朝鮮侵略の実態を追及する力作。8月に本紙文化欄で掲載予定である。

 それにしても旺盛な取材力には驚嘆を禁じえない。5月13日から21日までに及んだ現地取材は、長崎−平戸−有田−伊万里−唐津−佐世保−長崎へと刻々と移り、調査の後は、長崎市立図書館、同県立図書館、同歴史文化博物館での古文書などの資料調べ。琴氏にとって、初めてとも言える女性史への挑戦。ぜひご期待を。(粉)

[朝鮮新報 2008.7.4]