|
若者の間で、小林多喜二の「蟹工船」が読まれているという記事を目にした。活字離れが指摘されて久しく、階級意識などとは無縁だと思われてきた彼らがなぜ、と見入ってしまった。勝ち組、負け組と選別され、世も末かと感じるほどの格差社会、合理化という名の過酷な搾取−「団結して状況を変えようとする男たちの明るさと強さにひかれた」との言葉が紹介されていた ▼実は、今や過去の人にされてしまった感のあるレーニンの著書、とくに関連本も若者の間で静かなブームになっているという。「未完のレーニン―力の思想を読む」という本に至っては、在庫切れが相次いでしまった。難解だという先入観にとらわれてしまう思想本だけに、出版社は売れるとは思っておらず、刷った数も少なかったらしい ▼「何をなすべきか?」から「国家と革命」へ、歴史において「何が必然的に生起するのか」ではなくて、「何を生起させるのか」など、カウツキーやベルンシュタインら当時の名だたる理論家たちの「階級意識の外部注入論」の限界を喝破して、革命とは新たに成し遂げるのではなく、すでに進行しているその状況を現実に表出させる事だという「科学性」をロシア革命で証明したとは同書の指摘だ ▼さらに精神分析の創始者であるフロイトとの比較、相似性の分析など、かつて虜になった者なら、またも夜を徹してしまいかねない内容だ ▼レーニンブームの要因も「蟹工船」のそれと根は一つのようだという。歴史は繰り返すとよく指摘されるが、だからそれらブームも必然的なのだろう。(彦) [朝鮮新報 2008.5.16] |