在日本朝鮮人闘球選手権大会、東京 19年ぶりの栄冠 |
長年のチーム力強化が実る 第23回在日本朝鮮人闘球選手権大会(主催=在日本朝鮮人闘球協会、主管=在日本朝鮮人体育連合会)が7、8の両日にかけて朝鮮大学校で行われた。東京(高麗クラブ)、大阪(千里馬クラブ)、兵庫(4.24クラブ)の各闘球団、朝大の4チームが熱戦を展開し、19年ぶりに高麗クラブが単独優勝した。4.24クラブがチームの飛躍を披露するなど、全体のレベルアップが見られた。大会ではまた、今年創部50周年を迎えた九州朝高OBらによる全九州朝高と高麗B、スーパーマンR・F・Cによる親善試合も催された。 的を絞った守備
決勝の舞台に立ったのは、準決勝で千里馬クラブに17−14で競り勝った高麗クラブと4.24クラブを47−19で下した朝大。3年連続の顔合わせとなった。 試合開始直後から高麗クラブは、朝大選手の的を絞り効果的なタックルを浴びせた。じわじわと攻め、試合の均衡を崩し、11番ウイングの李忠烈選手が左隅に先制トライを決め5−0で前半を終えた。後半、ペナルティーゴールを決め8−0とした高麗クラブは終盤に12番センターの周英成選手、9番スクラムハーフの金隆男選手がトライを決め22−0とした。体力に勝る朝大は終了直前に追い上げたが、22−14でノーサイドとなり、高麗クラブが悲願の優勝を手にした。 高麗クラブ・姜宗卓代表(36)は「朝大の展開するラグビーに対し、高麗は負けないラグビーをできた。接点で勝てたことも大きかった」と振り返った。 試合終了と同時に姜代表と抱擁、チームを支えてきた申ハンソル主将(30)は、「ディフェンスを強化したことで千里馬、朝大に勝つことができた。今大会が高麗の所属する東日本トップクラブリーグとともに大きな大会であることを選手らが自覚していたこともプラス材料になった」と語った。
グラウンドで感涙にむせんでいた5番ロックの金廣年選手(32)は「16歳から始めて今日まで続けてきたラグビーの大会で、一番になったことは一度もなかった。先輩たちに引っ張ってもらい、ラグビーを続けてきて、ほんとうに良かった」と感慨深く話していた。 朝大の李鍾基監督は「(朝大は)状況判断が遅かった。春の関東リーグ戦(3部)で戦った相手よりも、レベルの高いチームとやりあってきた高麗が一枚上手だった」と述べ、姜湧哲主将(体育学部4年、9番スクラムハーフ)は、「ミスが多くチャンスを生かせなかった。9月からの関東リーグ戦で勝ち続け、朝大ラグビー部創部40周年を輝かせるため、必ず2部に上がりたい」と固く誓っていた。 3位決定戦では千里馬クラブが4.24クラブを62−14で下した。 改革で一新 大会で最下位だったものの、核となる選手がそろった4.24クラブのチーム力向上が大会関係者の間で話題になっていた。 結成当初の4.24クラブは、兵庫県下の朝鮮学校教員、経験者らを中心に盛り上がりを見せていた。しかし、数年前から練習に3〜4人が集まる程度に活動が縮小してしまったという。 存続の危機を打開しようと、6年前から改革が始まった。大会最年長プレーヤーで4.24クラブの李東慶団長(43)によると、改革を担ったうちのひとりが当時の主将で、日本学校出身の李敬熙選手(32、兼監督)だ。親せきの紹介で8年前から4.24クラブに参加している。 李選手は4.24クラブに参加して同胞社会に深く触れた。以来、選手たちと親身の付き合いをし、学生時代の人脈を生かして神戸製鋼のスター選手を練習に招くなど、「勝つ喜びを味わってもらいたい」という一心でチーム強化のため奔走した。その過程でラグビーへの熱い思いがすこしずつ、チームの若手選手に伝播していった。「先輩たちがやるというからには、自分たちもやらねばと奮い立っていった」と李選手は振り返る。 林勇樹主将(25)は「世代交替が進んだが、若さだけでは勝てない。先輩たちとともにしっかりとしたチームを作っていきたい」と抱負を語る。 ベテランとして今後もチームを引っ張っていきたいと話す李団長。「練習についていくだけで精一杯だが、今後もたくさんの同胞青年が闘球団で汗を流せるよう、やれることは何でも手伝いをしていきたい。ここにはたくさんの素晴らしい出会いがあるから」と目を細めた。 こうしたみんなの思いが実って、チーム改革は功を奏した。昨年秋には、兵庫県クラブトップリーグで優勝し、今年からは兵庫県リーグから関西リーグに昇格するまでに至った。今月15日には兵庫県クラブトーナメント決勝(兼全国大会予選)で強豪・六甲クラブとの試合にチーム一丸で臨む。今後も、神戸朝高をはじめ幅広い経験者を積極的にチームに受け入れていく方針だ。 「打倒東京」 今大会を振り返り、在日本朝鮮人闘球協会の全源治名誉会長(朝大名誉監督)は、高麗クラブの気迫と長年のチーム力強化を高く評価し次のように語った。 「(在日ラグビー界では)長く大阪の時代が続いたが、東京がようやく並んだ。今後は『打倒東京』が目標になるだろう」「この大会が続いていることは、私にとって涙が出るほどうれしいこと。みんなラグビーをもっともっと好きになってもらいたい」 「技術、技量、闘志が存分に発揮された」と総括した闘球協会の金武正会長は「朝高のラグビー部員が減少していくなか、東京、大阪をはじめ社会人チームの水準は伸びている。とくに大阪に練習試合を申し込むなどチームのレベルアップに徹した東京の努力が今大会でいかんなく発揮された。また兵庫の飛躍とチームの良い雰囲気、人数が少ないなか九州が大会に参加したことは在日ラグビー界がさらに盛り上がる大きなきっかけともなる」と評した。 全日程終了後、七輪を囲み焼肉をほおばるなど、選手たちは交流を深めた。(李東浩記者) [朝鮮新報 2008.6.11] |