2008年金剛山歌劇団地方公演千秋楽 出雲公演 約1000人が観覧 |
同胞社会の結束、一段と 金剛山歌劇団出雲公演(主催=同実行委員会、実行委員長=尹明哲・島根県商工会会長)が2日、出雲市民会館(島根県出雲市)で行われ、同胞、日本市民ら約1000人が観覧した。島根県で6年ぶりに行われた同公演は、日本市民の朝鮮に対する考え方を変え、県内の同胞の結束を一段と強くさせる大きなきっかけとなった。 20〜30代が動員の中心に 「朝鮮に親しみ感じた」
今公演の第1部は、舞踊「春の香り」で幕を上げ、女性独唱「花の唄」、女声重唱「テドンガンの日の出」、男性独唱と女性コーラス「わが祖国」、民族舞踊「手太鼓の舞」、チャンセナプ独奏「ノウル−流れは激しく」、男声独唱「峠を越えて」、舞踊「大河」が披露された。 第2部は、民俗舞踊「太鼓の舞」、男性3人舞「狩人の踊り」、独舞「菩提薩−ポリサルタ」、男性5重唱「トンへの月夜」、民謡メドレー、民族舞踊「農楽舞」で華やかに幕を閉じた。 公演を観た30代前半の南の女性は、「日本でこのような民族舞踊を観ると、一段とすばらしく感じる。日本に来て数年、忘れかけていた民族のプライドを取り戻すことができた」と涙ながらに感想を述べた。 また、60代の日本人女性は、「劇団名を聞いたのも公演を観たのも初めて。朝鮮の舞踊や音楽がこんなにすばらしいとは知らなかった。朝鮮という国に、急に親しみを感じてきた」と、笑顔で話した。 山陰初中廃校から10年
島根県で金剛山歌劇団公演が開催されたのは2002年以来、6年ぶりのこと。今回、総連出雲支部の鄭泉委員長(38、非専従)をはじめとした同支部の20、30代の役員らが中心となり、公演準備を進めた。 「昨年は段取り不足で公演を実現できなかった。また昨今、朝鮮をめぐる情勢、経済不況が続き、島根の同胞社会は活気がなくなっていた。そこで、若い自分たちに何かできることはないか、と支部の役員らと話し合うなか、公演準備に積極的に取り組もうと決めた」(鄭委員長) 来年は、県内にあった山陰朝鮮初中級学校が廃校して10年。同校が母校の役員らは、公演成功という大きな成果を挙げて、ウリハッキョで得た有形無形の恩恵に応えたいとの思いもあった。 とはいえ、困難は多かった。師走という普段より格段に忙しいシーズン。さらに同胞過疎地域で金剛山歌劇団公演を開催する場合、日本市民に広く参加を呼びかけなければならないが、同胞数が1000人に満たない島根県の場合も事情は同じだ。日本人を対象とした動員活動がそのまま観客数を左右するのだ。そのうえ、大都市で行われる公演と違って、朝鮮学校の児童や生徒が不在ということもあり、参加者数がまったく想定できず、「いったい何人集まるのか?」という不安が、役員らの頭には常によぎったという。 そんななか、公演成功に向け役員らは奔走した。「広告の集め方、動員の方法を聞きに先輩らを何度も訪ねた」「日本の会社や近所の日本の家々に何度も足を運び、公演観覧を誘った」と振り返る。 「元気取り戻そう」
そして当日、会場は役員らの予想をはるかに超えた1000人もの観客で埋まった。全体の約8割は日本市民、そのうちの半分以上が初めて金剛山歌劇団公演を観た人たちだった。 会場周辺に右翼団体が街宣車で押し寄せては騒ぎ立てていたが、役員らが警戒するなか、公演は混乱もなく無事に行われた。 鄭委員長は、「成功して本当に良かった。会館内の警備をしていたから公演は観れなかったけれど、観覧した参加者の感想を聞いて、それだけで満足」と笑顔で話した。 「準備期間や公演の成功など出雲支部、そして島根県の同胞たちは以前より団結した感がある」と話すのは役員の1人、梁成烈さん(34)。「この勢いで、山陰初中があった時のような元気ある同胞社会を築いていきたい」と話す。 総連島根県本部の鄭潤吉委員長は、「若い世代の力で公演が成功した。島根県の同胞社会はこのメンバーたちがいるから安心できる」と胸を張った。(尹蒼賢記者) [朝鮮新報 2008.12.12] |