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〈こどもの本だな〉 おかしなとらや、朝鮮の風習

ようこそ、絵本の世界へ!

 寒い冬がやってきた。

 冬休みも近い。

 北風の強い日は、暖かい部屋の中で過ごしたいもの。

 今回紹介する本は、若者ととらの友情を描いたものや、ほほえましい少女のおつかい、朝鮮のゆかいな民話と、伝統的な民俗風習を伝える4冊。

 絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。 

 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。 

「人食いとらの おんがえし」−若者と人食いとらの友情

佼成出版社 TEL 03・5358・2323 1300円+税

 朝鮮に古くから伝わる民話の中で、いちばん多く登場する動物は何といってもとら。

 時には正義に立ち向かう強さの象徴として描かれ、時には大きな図体をした、小心者として笑いをそそる。

 この物語の主人公は「人食いとら」。

 人々に恐れられている強いとらだが、物語には優しい心を合わせ持つとらの姿が、親しみを込めて描かれている。

 のどにかんざしがささってしまった人食いとらは、ある日、若者にかんざしを抜いてもらう。

 若者に助けられて命拾いをしたとらは、その後、自分の一生をかけて若者に恩返しをする。

 若者の仕事を手伝おうと、大きな木を引っこ抜いては若者の家に届けて、若者におよめさんが必要との話を聞くと、野をこえ、山をこえ、娘をつかまえて連れてくる。

 そのかいがいしいことといったらない。

 本書は、あかちゃん絵本でおなじみの松谷みよ子さんが監修した、朝鮮の民話絵本シリーズの第1弾。

 若者ととらの友情が、涙をさそう。

「うさぎのさいばん」−とらがひとを食べるのは?

少年写真新聞社 TEL 03・3264・2624 1500円+税

 むかし、一人の旅の若者が山みちをあるいていた。いつのまにか若者は、深い山の薄暗い細道へ。

 「この山には人くいとらがいるってはなしだが…」

 すると、「うおーっ!」というおそろしいうなりごえが聞こえてきた。

 若者が勇気を出して声のほうにいってみると、ふかい大きなあなの中に、1匹のとらが落ちていた!

 (たすけてやったはいいが、おそいかかってきたらどうしよう…)

 若者は穴に落ちたとらを助けてやるが、お腹のすいたとらは、命の恩人を食べようと襲いかかってきたから、さあ大変!

 人食いとらが、命の恩人の人間を食べるのは正しいか−。

 森の生き物たちの熱弁が続く。

 そこへ登場したのがかしこいうさぎ。

 「さいばんなら、もうすこし いろいろしらべたほうが いいんじゃないのかな」

 さて、森の中のさいばんで、うさぎがとらに下した判決は?

 ハラハラドキドキ、そして大笑いのお話。

 巻末にはハングル版の本文も収録されている。

「よじはん よじはん」−時間を忘れ道草する少女

福音館書店 TEL 03・3942・1226 1100円+税

 おかあさんにたのまれて、小さな女の子は、となりの店に時間をききにいった。

 「いまなんじ?」

 店のおじさんが4時半だと教えてくれると、女の子は「よじはん、よじはん」と唱えながら家に帰ろうとする。

 でも、店を出たとたん、水を飲むにわとりや、アリの行列、トンボの群れなど、女の子の前には次からつぎへと心ひかれるものが現れる。

 「よじはん、よじはん」と唱えながら、女の子はどんどん道草に道草をかさねる。家にたどりつくころには、もうとっぷり日が暮れてしまった。

 でも、女の子は、満ち足りた表情で、意気揚々とおかあさんに時間を伝える。

 「よじはんだって!」

 赤いチマに白いチョゴリを着て、黒いコムシンをはいた、天真爛漫な女の子の姿がなんとも愛らしい。

 軒先で女の子の報告をきいたおかあさんのあきれ顔、家の中では兄弟たちがサンチュにご飯を包み、口の中へとほお張っている。

 まだ、普通の家には時計がなかった時代の、朝鮮の片田舎を舞台にした、ほのぼのとした一冊。

「ソリちゃんのチュソク」−朝鮮の伝統行事を絵本に

セーラー出版 TEL 03・3846・2955 1500円+税

 チュソク(秋夕)は、旧暦の8月15日、だいたい9月中旬の収穫のはじまる時期にある。

 朝鮮半島では正月とならぶ大きな行事のひとつだ。

 チュソクの前日の夕方には、お月さまをみながら新米でソンピョン(松餅)をつくり、チュソクの当日には秋の収穫のよろこびを先祖に感謝し、お墓参りをする。

 都市に住んでいる多くの人が故郷に帰るので、バスターミナルはたくさんの人で混雑し、高速道路はとても混んで、のろのろ運転。

 絵本にはまるで、日本のお盆とそっくりと思えるような場面も出てくる。

 主人公のソリちゃんも、家族と一緒にまだうす暗いうちに帰省する。

 田舎のハルモニの家には、しんせきみんなが集まって、話に花がさいている。家中ごちそうのにおいでいっぱい。

 絵本には、現在に残る朝鮮の伝統行事−チュソクのもようが、細かく描かれている。

 どこか懐かしい朝鮮の田舎の風景も見所のひとつ。

 絵本の中へ、朝鮮の習慣を、ソリちゃんと一緒に見に行こう。

[朝鮮新報 2008.11.28]