〈こどもの本だな〉 おかしなとらや、朝鮮の風習 |
ようこそ、絵本の世界へ! 寒い冬がやってきた。 冬休みも近い。 北風の強い日は、暖かい部屋の中で過ごしたいもの。 今回紹介する本は、若者ととらの友情を描いたものや、ほほえましい少女のおつかい、朝鮮のゆかいな民話と、伝統的な民俗風習を伝える4冊。 絵本は一般書店ほか、コリアブックセンターでも注文できる。 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。 「人食いとらの おんがえし」−若者と人食いとらの友情
朝鮮に古くから伝わる民話の中で、いちばん多く登場する動物は何といってもとら。 時には正義に立ち向かう強さの象徴として描かれ、時には大きな図体をした、小心者として笑いをそそる。 この物語の主人公は「人食いとら」。 人々に恐れられている強いとらだが、物語には優しい心を合わせ持つとらの姿が、親しみを込めて描かれている。 のどにかんざしがささってしまった人食いとらは、ある日、若者にかんざしを抜いてもらう。 若者に助けられて命拾いをしたとらは、その後、自分の一生をかけて若者に恩返しをする。 若者の仕事を手伝おうと、大きな木を引っこ抜いては若者の家に届けて、若者におよめさんが必要との話を聞くと、野をこえ、山をこえ、娘をつかまえて連れてくる。 そのかいがいしいことといったらない。 本書は、あかちゃん絵本でおなじみの松谷みよ子さんが監修した、朝鮮の民話絵本シリーズの第1弾。 若者ととらの友情が、涙をさそう。 「うさぎのさいばん」−とらがひとを食べるのは?
むかし、一人の旅の若者が山みちをあるいていた。いつのまにか若者は、深い山の薄暗い細道へ。 「この山には人くいとらがいるってはなしだが…」 すると、「うおーっ!」というおそろしいうなりごえが聞こえてきた。 若者が勇気を出して声のほうにいってみると、ふかい大きなあなの中に、1匹のとらが落ちていた! (たすけてやったはいいが、おそいかかってきたらどうしよう…) 若者は穴に落ちたとらを助けてやるが、お腹のすいたとらは、命の恩人を食べようと襲いかかってきたから、さあ大変! 人食いとらが、命の恩人の人間を食べるのは正しいか−。 森の生き物たちの熱弁が続く。 そこへ登場したのがかしこいうさぎ。 「さいばんなら、もうすこし いろいろしらべたほうが いいんじゃないのかな」 さて、森の中のさいばんで、うさぎがとらに下した判決は? ハラハラドキドキ、そして大笑いのお話。 巻末にはハングル版の本文も収録されている。 「よじはん よじはん」−時間を忘れ道草する少女
おかあさんにたのまれて、小さな女の子は、となりの店に時間をききにいった。 「いまなんじ?」 店のおじさんが4時半だと教えてくれると、女の子は「よじはん、よじはん」と唱えながら家に帰ろうとする。 でも、店を出たとたん、水を飲むにわとりや、アリの行列、トンボの群れなど、女の子の前には次からつぎへと心ひかれるものが現れる。 「よじはん、よじはん」と唱えながら、女の子はどんどん道草に道草をかさねる。家にたどりつくころには、もうとっぷり日が暮れてしまった。 でも、女の子は、満ち足りた表情で、意気揚々とおかあさんに時間を伝える。 「よじはんだって!」 赤いチマに白いチョゴリを着て、黒いコムシンをはいた、天真爛漫な女の子の姿がなんとも愛らしい。 軒先で女の子の報告をきいたおかあさんのあきれ顔、家の中では兄弟たちがサンチュにご飯を包み、口の中へとほお張っている。 まだ、普通の家には時計がなかった時代の、朝鮮の片田舎を舞台にした、ほのぼのとした一冊。 「ソリちゃんのチュソク」−朝鮮の伝統行事を絵本に
チュソク(秋夕)は、旧暦の8月15日、だいたい9月中旬の収穫のはじまる時期にある。 朝鮮半島では正月とならぶ大きな行事のひとつだ。 チュソクの前日の夕方には、お月さまをみながら新米でソンピョン(松餅)をつくり、チュソクの当日には秋の収穫のよろこびを先祖に感謝し、お墓参りをする。 都市に住んでいる多くの人が故郷に帰るので、バスターミナルはたくさんの人で混雑し、高速道路はとても混んで、のろのろ運転。 絵本にはまるで、日本のお盆とそっくりと思えるような場面も出てくる。 主人公のソリちゃんも、家族と一緒にまだうす暗いうちに帰省する。 田舎のハルモニの家には、しんせきみんなが集まって、話に花がさいている。家中ごちそうのにおいでいっぱい。 絵本には、現在に残る朝鮮の伝統行事−チュソクのもようが、細かく描かれている。 どこか懐かしい朝鮮の田舎の風景も見所のひとつ。 絵本の中へ、朝鮮の習慣を、ソリちゃんと一緒に見に行こう。 [朝鮮新報 2008.11.28] |