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〈第11回平壌国際映画祭〉 各国関係者、観客の反応に満足

「理念に今後の可能性感じる」

 【平壌発=李相英記者】第11回平壌国際映画祭が17日に開幕し、出品作が市内の各映画館で連日上映されている。アジアのみならず欧州、アフリカ、中南米など世界各国からさまざまな作品が集う場として発展してきた同映画祭。今回も平壌市民や映画関係者の高い関心の中、26日まで10日間の日程で行われる予定だ。

46カ国の110作品

華やかに行われた第11回平壌国際映画祭開幕式(17日、平壌国際映画会館前で)

 同映画祭は自主、平和、親善の理念の下に世界の人びとと進歩的映画人との親善と団結を強め、映画分野における交流と協力を発展させ各国の映画発展を推し進めることを目的に1987年から始まり、90年の第2回以降は2年おきに開催されている。

 第11回映画祭には、中国、インド、ロシア、英国、フランス、ドイツ、イラン、ベネズエラ、オーストラリアなど46カ国から110編の作品が出品された。

 祭典では長編、短編映画、ドキュメンタリー、アニメーションなどさまざまなジャンルの作品を上映。最近2年以内に制作された新作を対象にしたコンペティションや、制作年度に関係ない一般上映、海外の映画祭などで高い評価を受けた作品の特別上映などの形式で審査が行われている。

 上映会場である平壌国際映画会館、大同門映画館、凱旋映画館、楽園映画館には連日大勢の市民が詰めかけている。

 開催期間中には、外国の映画関係者らのための朝鮮映画試写会も行われた。「花を売る乙女」「トラジの花」「洪吉童」をはじめとする往年の名作や、「ある女学生の日記」など最近の作品が上映され、好評を博した。

 また今回、世界的な物流・運送会社であるDHLが後援企業として名を連ねたことも話題になった。DHLは11年前から平壌に営業所を置き国内でサービスを行っている。西側企業が同映画祭の公式スポンサーを務めるのは今回が初めて。

注目集めた欧州映画

開幕式には、朝鮮をはじめ世界各国の代表団、名誉ゲスト、国際審査員らが参加した [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 出品作の数は、前回の70余編に比べて今回110編と大幅に増えた。

 近年の平壌国際映画祭の特徴の一つとして、ヨーロッパ映画の増加を挙げることができる。今回も50編のヨーロッパ映画が上映され、全体の半数弱を占めた。なかでもドイツと英国映画の多さが際立っている(両国ともに9編ずつ)。

 ナチス・ドイツが第2次大戦中に実行した贋札製造計画の裏側を描いた「貨幣偽造者」(06年、独・オーストリア合作、原題=「Die Falscher」、日本公開時「ヒトラーの贋札」)、地球全体を舞台に厳しい自然の中で生きる動物の姿を捉えたドキュメンタリー「Earth」(07年、独・英合作)、エリザベス女王の人生を描いた歴史スペクタクル「Elizabeth
:The Golden Age」(07年、英)など、日本でも話題となった作品も上映され、関係者の注目度も高かった。

 また、近年成長著しい中国の作品や、出品数は少なかったがイラン、ヨルダンなど中東諸国の作品を評価する声も多かった。全体的には、商業性よりもテーマや芸術性などに重きを置く作品が多数出品され、同映画祭の掲げる理念が一貫していることを伺わせた。

 祭典期間、監督や俳優、評論家、制作および配給会社の関係者をはじめとする各国の映画人らが朝鮮を訪れた。

 ポーランドのアウシュビッツ収容所跡を訪れたドイツ人青年と、元囚人で生還者の老人との交流を描いた映画「観光客といっしょに」の編集者ステファン・コーベーさん(ドイツ)は、「自分が制作に携わった作品を平壌で上映できてとてもうれしい。アウシュビッツはドイツにとって特別な場所。観客の反応もよくて満足している」と話した。

 また、前回に続き2度目の参加となった英国「バラエティ」誌の映画批評家デレク・エリー(Derek Elley)さんは、「映画祭にはそれぞれの特徴があっていい。カンヌやベネチアなどに比べると規模の面では劣るが、掲げている理念や出品作の傾向に今後の発展の可能性を感じる」と話した。

 一方で、「ホスト国である朝鮮の新作映画が出品されなかったのは残念」との指摘も。「過去の映画には良作が多いだけに、次回は多くの新作が上映されることを期待したい」と述べた。

[朝鮮新報 2008.9.24]