〈民族楽器のルーツをたどる ウリナラの楽器 D〉 洋琴 |
欧州〜シルクロード経て朝鮮へ、金属性の明るい音色
朝鮮半島の民族楽器の形態は、床に座って生活する「オンドル文化」と密接な関係があるようだ。それらは内陸から伝えられたもの、朝鮮で変化したものなど65種類ほどが伝えられている。 楽器のルーツや普及の時期、発展過程などはさまざまで、洋琴も例外ではない。 洋琴は打絃楽器の一つで、西洋琴、天琴とも呼ばれる。本来、回教音楽に使われた。 10世紀から12世紀のローマ帝国時代に十字軍によって欧州に伝わり、中世紀以後欧州各国で広く普及した。1580年頃には中国に渡り、その後朝鮮半島へ伝えられたとされている。 名前の由来は、「西洋から伝来した琴」という意味で、中国では「洋琴」から「楊琴」、そして「揚琴」となり今日に及ぶ。朝鮮では従来どおり「洋琴」のまま定着したようだ。
資料を探ると、「民族楽器で唯一鉄線を使った楽器である」と書かれることがほとんどだが、朝鮮ではチョグムという楽器が鉄線楽器としてすでに1960年代に普及していた。 また本来、ダルシマ、チェンバロなどの楽器が洋琴と呼ばれたため、この楽器の歴史は他の民族楽器に比べてさほど長くない。 日本では西洋楽器にまだなじみがなかった明治時代、オルガン・ピアノは風琴・洋琴と呼ばれていた。最近では「源氏物語と洋琴」と題し、朗読とピアノ演奏なども行われているようだが、「洋琴」と書くところに昔を懐かしむ心が見え隠れする。 本来洋琴は床に座ったまま片手を楽器に添えて、もう一方の手で撥を持ち演奏するが、楽器をそのまま床に置いても演奏する。今では両手で演奏することもある。 わが国の伝統楽器の誕生は大きく二種類に分類される。その一つは生活道具が応用されて楽器に発展したもの、もう一つは他国の楽器が流れ着き、使われる過程で定着したもの。
朝鮮に紹介された外国の楽器は、以前紹介した伽倻琴やコムンゴのようにわが国に渡った後に楽器の形態と演奏の方法が変形したものもある。それらと比較しても、洋琴はほとんど本来の姿を残していると言えよう。 洋琴は、西洋楽器のように7音階で調整をしながら全部で21の音を出す。重複する音を含めて音域は2オクターブ半になる。金属性の明るい音で独奏楽器としては使われなかった。
1960年頃から改良が重ねられた洋琴は現在、絃の数が67本に増え、両手に先端を羊の毛で巻いた竹の撥を持って演奏する。音色も古来のものより柔らかく華麗で、音量もはるかに大きくなった。楽器に足が付き、椅子に座って演奏する。ミュートもつき、音の響きを自由に止められる。南朝鮮でも注目される楽器の一つである。 現在は独奏楽器の伴奏や重奏、合奏で欠かせない楽器の一つとなった。そして、独奏楽器としての幅も広がった。 その美しい響きに心和ませる人も多く、朝鮮の「癒し系」楽器ともいえよう。ピアノのようなハープのような美しい音色からは、シルクロードの香りが漂ってくる。(康明姫・民族音楽資料室) □ メモ…弦楽器の種類 [朝鮮新報 2008.8.29] |