〈本の紹介〉 日本軍の性暴力明らかに |
本書は、防衛省防衛研究所図書館に所蔵されているフィリピン関係陸軍戦史史料の中から、日本軍文書にみる性管理と性暴力をあらわす資料を収めたものである。すなわち、「慰安所」、強姦や暴行についての記述のあるもの、性病(当時は花柳病という呼び方もあった)についての対策や、軍紀風紀をかかげて性犯罪を取り締まろうとするもの、および占領下の現地の証言・状況等をつたえている資料を収録している。 これは、先に同調査会が発行した「日本占領下フィリピンにおける日本軍性暴力史料集 1941〜1945」(戦地性暴力調査会 私家版、2000年)に、その後調査した資料を加え、あらたな視点から編集・構成しなおしたものである。調査の範囲を広げた結果、フィリピンに加えて、中国、台湾、「南方地域」に関する資料も一部、収録された。 防衛省防衛研究所図書館では、フィリピン関係陸軍戦史史料を、主に「比島」として分類し、ほぼ時期ごとに、「比島進攻」「比島防衛」「比島全般」「比島決勝」等に分けている。さらに、方面軍、師団、連隊、大隊など、部隊別の名称をつけてファイルしている。ただし、一つの簿冊の中に時期や種類などの異なるさまざまな資料が混在しているものもあり、分類は必ずしも厳密ではない。 フィリピン関係の資料には、「陣中日誌」「戦闘詳報」「業務詳報」「作命綴」など、各部隊の作戦、戦闘の記録や報告、および軍政部・軍政監部発行の「軍政広報」等いわば公的史料、また戦後の「復員関係資料」や、戦史室・戦史部編の聞き取り調査資料など多岐にわたる種類の文書があり、総数でおよそ1500冊余りと思われる。それらは、戦後、執筆・発表されたものを除けば、敗戦時の資料焼却や、散逸を免れて残ったものであり、軍資料全体から見ると、ほんの一部にすぎない。 また、これらの資料は、当時の軍の厳重な管理、検閲のもとに記録作成、保存されたものであり、軍の立場が反映されているものと言える。 資料調査を通して浮かび上がったのは、戦地における兵士の性管理と女性への性暴力の深刻さ、性意識のゆがみである。本書は日本軍の性暴力の事実を明らかにするうえで大きな助けとなろう。(資料集「日本軍にみる性管理と性暴力 フィリピン1941〜45年」、「戦地性暴力を調査する会」編、4800円+税、、梨の木舎)(公) [朝鮮新報 2008.8.25] |