アートで見る隣国の現代史 |
兵庫県西宮市の南西に位置する西宮市大谷記念美術館は、実業家の故大谷竹次郎氏が土地、邸宅、美術品を西宮市に寄贈をして、1972年に開館した美術館です。近代絵画が中心で、約1000点を所蔵しています。 今回開催しました「民衆の鼓動・韓国美術のリアリズム1945−2005」は、国際的に知られている前衛美術ではなく韓国の歴史や、社会状況を反映したリアリズム美術の作品を集めた展覧会で、日本では初めての公開となりました。韓国現代美術館、日本国内5館、読売新聞社、美術館連絡協議会の共催により、1945年の解放後から今日までの韓国美術99点を展示しました。 報道関係者の関心も高く、読売新聞をはじめ、NHK「新日曜美術館」のアートシーン、京都新聞、朝日新聞、日本経済新聞、産経新聞、神戸新聞などで取り上げられました。いずれも美術作品を通して隣国の歴史を知るという本展の意義を高く評価したものでした。 来館者のアンケートでも「韓国の近現代美術を知る機会がなかったのでとても良かった」(68歳女性)、「韓国の歴史や人々のことを美術品を通して感じる事ができた。そして新しく『韓国の美術』というジャンルに興味を抱けた」(36歳女性)など肯定的な意見が多く見られました。 関連事業では、新潟万代島美術館学芸員・高晟剋≠ノよる講演会、大阪在住のピアニスト・韓吏花氏によるミュージアムコンサートを開催しました。 また小学校、中学校、大学など見学授業があり、とくに大阪・神戸朝鮮高級学校にも全校生徒が鑑賞できるように呼びかけました。残念ながら全校生徒は無理でしたが多くの生徒が鑑賞しました。 入館者は3489人で滞在時間の長い、熱心な入館者が印象に残りました。 今回の展覧会を通じて私自身も多くの韓国の方と意見交換をする事ができました。隣の国でありながらあまり知る機会がなかった韓国の現代史が作品によって概観でき、アートの力をあらためて感じることができました。(川辺雅美・西宮市大谷記念美術館主任学芸員) [朝鮮新報 2008.8.4] |