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若きアーティストたち(57)

デザイナー 金聖恵さん

 「モノさえあればどんなシャンデリアでも作る」

 ぬいぐるみや古本、スニーカー、布の切れ端、文房具…身近にあるさまざまなものを使い、シャンデリアを作っていく。

 その作品は空想的で、どこか懐かしくもある。「毒」と「ロマンティック」が共存した「オトナコドモ」の不思議な世界。

 今、そんな彼女の作品が各方面から注目を浴びている。セレクトショップやデパートなどのウィンドウディスプレイから個人まで、国内のみならず海外からもオーダーがくる。

 4月には、コンビニエンスストア「セブンイレブン」とセレクトショップ「BEAMS」が共同開発した文具ブランド「BEAMSTATIONERY」のメインビジュアルとして、文房具とぬいぐるみを素材にしたシャンデリアを作った。材料を調達しにチェコにまで足を運んだ力作だ。またその作品は、東京・新宿の「BEAMS JAPAN」1階に展示された。

 初めて「モノ作り」をしたのは幼稚園の頃。そのきっかけは、友だちが持っていた手作りのカバンがうらやましかったことから。そこから、何かしらモノを作り続けているという。

 中級部の頃、デザイナーになりたいという、漠然とした思いがあった。高級部になるといちだんと興味も深まり、ファッションデザイナーになる夢を持った。

金さんが手がけた「セブンイレブン」と「BEAMS」共同開発の「BEAMSTATIONERY」のメインビジュアル。秋には第2弾を予定。

 そして、東京にある織田デザイン専門学校に入学、服飾のデザインを学んだ。卒業後は、スタイリストアシスタントを経て、「ノゾミイシグロ」というブランドで服の企画、生産に携わった。

 同時期に、東京コレクションの演出や店の内装を手がけているデザイナーと出会い、その人の手伝いもしていた。シャンデリアを創作することもあった。

 またその頃、ファッション界で続々と新しいブランドが増える中、人と違うことをしたくなったという。

 そこで、目に付けたのが昔から好きだったシャンデリア。作り方も知っていた。「自分で作ったらどうなるのかな?」「見たことのないシャンデリアを作ってみよう」−23歳で独立。ブランド名は「Kim Songhe」。

 「まず、自分の存在を認めてもらいたかった。そして名前を世に広めて、『在日』の存在を当たり前のものにしたかった。同胞たちには、『在日』ががんばっている姿を見せたかった」と「本名」で活動する動機を語る。

 シャンデリアはすべて一点もの。多くの作品の中で、共通するコンセプトは、いろんなモノや色を取り合わせてみること。「それぞれ違う素材でも、一つにまとめてみれば、まとまるもの」と。

 その理由を、「『在日』という環境の中で育ったバックグラウンドが根本にある」と話し、そのような思いが、作品を作っていくなかではっきりしてきたという。それは、朝鮮学校に通い、民族差別や帰属意識という問題と向き合ってきたから。「みんな同じ人間なのに、罵り合ったりするのはとても悲しいこと。国籍が違っても、肌の色が違っても、一つになれるはず」とコンセプトの内にある思いを語る。

 また、モノ作りのおもしろさは「人をハッピーにさせること」だという。それは、彼女がやりたいこと、求めていることである。

 昨年4月に結婚、主婦業をこなしながら、創作活動に励んでいる。

 11月には、東京・渋谷のパルコで、ディズニーとコラボし、メインのシャンデリアを手がける。クリスマスには、新宿・伊勢丹のウィンドウディスプレイを担当する予定。今、第一線で脚光を浴びている期待のデザイナーだ。(姜裕香記者)

※1982年生まれ。東京朝鮮第9初級学校、東京朝鮮第7初中級学校、東京朝鮮中高級学校卒業。02年織田デザイン専門学校卒業後、活動を開始。05年に独立、ブランド「Kim Songhe」を立ち上げる。「Loveless」「H.P.FRANCE BIJOUX」などショップのウィンドウディスプレイや個人オーダーのシャンデリアを中心に手がける。そのほか、アクセサリーやTシャツなどを製作、販売。

[朝鮮新報 2008.5.19]