花が
　咲くのは容易でないけれど
　散るのは束の間のこと
　ひとひらひとひらを愛でる間もなく
　恋しい人を思う間もなく
　本当に束の間のこと

　あの人が初めて
　わたしの中に咲いたときのように
　忘れるのもまた
　一瞬であったらいいのに

　遠くで微笑むあの人
　山を越えていくあの人

　花が
　散るのはあっという間だけれど
　忘れるのは遥かなること
　永遠に　遥かなること

詩集「三十、宴は終わった」
（１９９４ 創作と批評社）

　チェ・ヨンミ

　１９６１年ソウル生まれ。ソウル大学西洋史学科卒。９２年「創作と批評」誌に「束草にて」他７編の詩を発表して創作を本格化。処女詩集「三十、宴は終わった」は１００万部近く売れベストセラーに。同書は日本でも０６年に出版（韓成禮訳・書肆青樹社）。全羅北道高敞郡にある禅雲寺は、百済時代に黔丹禅師が建立した名刹。４月下旬に見ごろを迎えるツバキの群落は、天然記念物第１８４号に指定されている。（選訳・康明淑）

［朝鮮新報 2008.4.14］