〈担当記者座談会 08年を振り返る-上-〉 北南 |
全面遮断の危機、李政権が招く 揺れ動いた2008年の朝鮮半島情勢。今年1年を担当記者らが座談会で振り返った。北南関係、中国・ロシアを中心とする外交、対米および対日関係の順で掲載する。(編集部) 民意に反する政策
A 今年2月、李明博政権が誕生した。それから1年も経たないが、朝鮮半島情勢は一変してしまった。「わが民族同士」精神のもと、着実に根をおろして進展してきた北南関係は、李政権の対決姿勢によって悪化の一途をたどり、今は全面遮断という重大な岐路に立っている。 C 昨年末、10月の北南首脳対面と10.4宣言発表を受けて、初となる北南総理会談など当局会談が相次いで行なわれた。北南間で列車が毎日運行されるようになるなど、まさに活発だった。わずか1年前の出来事がものすごく遠い過去のように感じられてしまう。 B しかし、李政権は政権奪取の喜びにひたる時間はなかった。米国産牛肉輸入問題を端に、政権発足からわずか3カ月で支持率は2ケタ台を割り込み、早くも政権末期状態に陥った。前代未聞の異常事態だ。民意をまったく無視した強権的な李政権への不満が噴出し、キャンドルデモが南朝鮮全土を覆った。 A 昨年12月の大統領選で李明博候補は半数以上の票を得て当選した。南の分析を総合すると、それは経済再建に対する期待からであって、北南対決、対米追従を望んだのではない。李大統領に票を投じた人々からも後悔と嘆きの声が絶えなかったという。 C とくに北南関係。李政権は、「統一部廃止案」を掲げ大きな反発を招いた。北南関係を主管する統一部を廃止して外交通商部に統合しようとする案だったが、野党と市民団体から厳しい批判を受け結局、存続させた。しかし、存続することになった統一部長官に北の体制自体を否定する保守的人物を起用しようとした。これまた世論の反発で実現できなかった。 A 10.4宣言採択直後の世論調査で、約70%が「次期政権は現政権の対北政策を継承すべき」だと答えたように、南の世論は北南関係の破綻を望んではない。対北政策の転換を促す声は、統一団体だけでなく、野党を結束させている。 B 危機に直面した李明博政権は、政権維持の手段として軍事独裁政権時代の反北イデオロギーを持ち出した。統治手法もそのまま活用しようとしている。全土で起きたキャンドル集会に対し、背後に親北左派勢力がいるとのデマを流布させ、進歩・統一団体に対する弾圧に乗り出した。 C それだけではない。6.15時代を築いた金大中、それを継いだ盧武鉉政権時代を「失われた10年」と冒とくしながら、「吸収統一」を目指した金泳三政権時代に時計の針を戻そうとしている。 カギは政策転換 A 北側はこの間、李政権をどのように見てきたのか。 C 公式見解、立場を表明したのは、李政権発足から1カ月あまりが経った4月1日だ。労働新聞論評員の記事を通じ、「非核・開放・3000」など新政権の対北政策は対決宣言、戦争宣言だと強く非難し、「われわれも対応を変えざるを得なくなる」と警告した。 B しかし、李政権は対応を変えないばかりか、逆に対北敵対政策をどんどんエスカレートさせていった。6.15共同宣言と10.4宣言に対する立場を明確にするよう求めた北の要求には、「否定したことはない」の一点張りで、一度も明確にしていない。 C 9月以降は、北の「急変事態」を公言しながら、大々的な軍備増強と北侵戦争演習まで行った。 B 北は、12月1日から軍事境界線の陸路通行を制限する対抗措置を取った。「1次的」と言っているだけに、今後さらに踏み込んだ追加措置も予想される。 C こうした措置に対し、南世論の批判のほこ先はこうした事態を招いた李明博政権に向けられている。 A 李政権は、北の度重なる警告に真剣に向き合わなかった。労働新聞10月16日付論評員の記事が、北南関係の全面遮断を含む重大決断を下さざるをえなくなると警告したのに、「労働新聞論評員の記事は(北)政府の公式立場ではない」(金浩年統一部報道官、10月16日)と、まったくピントはずれ。政治音痴、無能ぶりをさらけ出してしまった。 C 李大統領は、11月16日、訪問先のワシントンで本音を漏らした。「自由民主主義体制下で統一するのが最終目標」と、「吸収統一」を意味するこの発言に李大統領の対北観が如実に現れている。 B 南内部では野党、市民団体から李政権の政策転換を促す活動が活発化している。今後、一大政治勢力化していくだろう。 A 北は6.15共同宣言、10.4宣言を履行し自主統一、平和繁栄を成し遂げる立場に変わりはないと再三強調している。 両宣言を尊重していくのか、あるいは白紙化するのか。米国でオバマ政権が誕生する来年、李明博大統領の前途はイバラの道だ。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2008.12.17] |