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朝鮮の論調 08年 6月

 6月26日、朝鮮は6者会談10.3合意に基づく核計画申告書を議長国・中国に提出した。同日、ブッシュ大統領は朝鮮の「テロ支援国」指定解除を議会に通報し、あわせて「敵性国通商法」適用の終息も明らかにした。27日には寧辺核施設の冷却塔が爆破された。一方、11〜12日まで朝・日政府間実務会談が北京で行われ、一連の合意がなされた。また、17〜19日に中国の習近平副主席が訪朝し、18日には金正日総書記と会見を行った。

−対米 同時行動、「評価し、歓迎する」

 朝米両国の核専門家らによる協議が10〜11日に平壌で行われた。朝鮮外務省スポークスマンは12日、「協議は成功裏に行われた」と述べた。

 また、朝鮮外務省は10日に声明を発表し、テロに反対する立場の堅持をあらためて表明した。

 この間の動きを少し振り返ってみる。

 年明け早々の1月4日、朝鮮外務省スポークスマンは談話を発表した。談話は10.3合意の履行状況について言及しつつ、「6者会談のすべての参加国が同時行動の原則のもとに努力するならば、10.3合意が円満に履行されるであろうという期待を、依然として持っている」と表明した。

 その後は、米国務省代表団訪朝(1月31日〜2月2日)、金桂官次官とヒル次官補による北京での接触(2月19日)、ジュネーブ会談(3月13〜14日)、シンガポール会談(4月8日)、米核専門家代表団訪朝(4月22〜24日)、5月のソン・キム部長訪朝および北京での協議(公式報道なし)、そして今回の核専門家協議と続いた。

 表現を見てみると、2月は「(関心事の議論が)真摯かつ実務的な雰囲気の中」で行われ、3月は「意見の相違」に対する「具体的な協議」が行われ、4月は「米国の政治的補償措置と核申告問題で見解の一致を遂げた」とあった。

 6月の核専門家による協議に関しては、核施設無力化を「締めくくる」うえで提起される技術・実務的方途とそれに伴う「政治経済的補償」の「完結問題」が討議されたと報じた。

 ほぼ月一回のペースで接触があったこと、そして協議内容が段階的にステップアップしてきたことがわかる。

 また、今回の10.3合意にそって行われた米国側の行動措置に関して外務省スポークスマンは27日、記者との答弁で「これを肯定的な措置として評価し、歓迎する」と表明。「今回の措置は、今後、対朝鮮敵視政策を完全かつ全面的に撤回することにつながるべきである」と指摘し、「他の6者会談参加国も、すでに公約した経済補償義務を適時に、完全に履行すべきである」と主張した。

−対日 政府間実務会談の目的 過去清算と国交正常化

 朝・日政府間実務会談が行われるまでは、福田政権に対するこれといった批判論調はなかった。

 11〜12日まで北京で行われた朝・日政府間実務会談は、報道文という形で13日に配信された。

 報道文では、「朝・日平壌宣言に従って不幸な過去を清算」し、「国交正常化を実現するため」に会談が行われたことを明記したうえで、朝鮮側に「よど」号関係者問題解決のための協力の用意があることや、日本の制裁措置部分解除に関する内容などが明記された。

 今回の政府間実務会談を受けて日本国内では、安倍前首相や民主党幹事長などが制裁部分解除に反対する態度を相次いで表明した。

 これと関連して朝鮮中央通信は23日に配信した報道の中で、「朝・日関係改善を妨げようとする不純な行為であり、党派の目的の実現に目がくらんだ卑劣な醜態である」と非難した。

 また、30日の報道でも「テロ支援国」指定解除に最後まで反対した目的について言及し、「朝・日関係を引き続き対決状態に持続させ、過去清算をどうにか回避しようとするところに本心がある」「(核問題解決によって)軍事大国化への名分を失うことになってはいけないとの打算が底辺にある」と糾弾した。

−対南 政権の末期症状が表面化

 一貫して李政権批判が続いている。しばらくは鳴り止む気配がない。

 1日、祖国統一研究院は李政権を糾弾する長文の白書を発表した。その後も発足100日を迎えた李政権批判が連日、続いた。

 7日発の「『実用主義』は反統一の代名詞」と題した朝鮮中央通信報道では、「『実用主義』は結局、民族的連帯と血縁関係を無視した『永久分裂論』である」と厳しく糾弾し、「外国勢力への依存こそ最も非実用的であるということは、わが民族の数千年に及ぶ歴史が遺した血の教訓である」と指摘した。

 また、金日成社会主義青年同盟、朝鮮職業総同盟、反帝民族民主戦線、朝鮮民主女性同盟、民族和解協議会が相次いで李政権への批判と南朝鮮で行われている一連のデモを支持する談話を発表した。

 6.15共同宣言8周年を境に李政権批判はさらに強まり、21日発の朝鮮中央通信報道では「末期症状が表面化している」と前置きしたうえで、「過去を振り返ってみても、世界を見渡してみても、李明博政権のように、執権後3カ月で政策全般が破算に直面した政府は、探し出すのも難しい」と痛烈に非難した。

 一度、覚えた蜜の味はなかなか忘れられない。朝米融和が進むなか、拉致問題の産業化と「北朝鮮バッシング」がもたらす恩恵に与ってきた勢力は、心中穏やかでない。

 立つ瀬を失うことへの危機意識に触発された発言が目につく。「対話の努力は百害あって一利なし」(安倍前首相)などは、その最たるものと言えよう。

 マスコミも同様だ。言責そっちのけ、敵意むき出しの「反朝鮮報道」で数字を稼ぎ、世論を煽動したことへの良心の呵責など、微塵もうかがえない。

 今回の朝米同時行動により、6者プロセスは大きな転換点を迎えた。いま、東アジアには関係正常化の風が吹いている。永田町に棲む風見鶏たちの鼻は、その行方を嗅げるのか。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2008.7.9]