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発足3カ月の李明博政権 止まらぬ支持率低下、「レイムダック化」

民意無視の政治、反発招く

 南朝鮮・李明博政権の支持率低下が続いている。就任当初70%以上あったが、発足3カ月あまりで20%前後にまで急落。「すでにレイムダック化(死に体)の様相を呈している」との指摘も出る始末だ。5月から始まった市民らによる米国産牛肉輸入反対のキャンドル集会とデモは、大統領退陣運動にまで発展しており、世論の反発はおさまりそうもない。支持率凋落の原因は何なのか。背景を探った。

「CEO式政治」の限界

デモ隊の前進を阻む警察に抗議する市民(7日) [写真=統一ニュース]

 政権発足100日に際して南朝鮮各メディアが実施した世論調査の結果によると、李明博政権の国政運営に対する支持は20〜22%に留まった。一方で不支持は67〜72%にのぼった。KBSが世論調査専門機関に依頼した調査では、支持が17.2%と、20%を割り込んだ。政権発足初期の数字としては異例の低迷ぶりだ。

 各世論調査とも分野別の問題点として、政治・行政では「特定人脈に偏重した人事政策」、経済では「親企業中心の偏向的政策路線」、社会では「朝鮮半島大運河をはじめとする無謀な事業推進」などを挙げた。

 支持率急落の原因について各方面でさまざまな分析があるが、一番の要因が李政権の「民心を無視した独善的で強引な権力行使にある」という点では一致している。

 李政権の独善性が明らかな形で表れた最も代表的な例が、BSEの危険性が指摘される米国産牛肉輸入問題における対応だ。

 李大統領の訪米期間中、ブッシュ大統領との首脳会談の前日に妥結した協議は、「米国に捧げる手土産」との非難を浴びた。その後、世論の大多数が米国との再交渉を求めたにもかかわらず、当局は弁明に終始した。

 さらには、キャンドル集会や街頭デモなど市民の自発的な意思表示を「『怪情報』に惑わされたもの」だと過小評価し、一連の抗議行動に「背後勢力」の存在を指摘する対応が火に油を注ぐ結果となった。

 また、デモを暴力で鎮圧、参加者を相次いで逮捕、連行し、司法処理方針をちらつかせて脅すという対応について市民団体などは「軍事独裁政権の再来」と非難、強い反発を招いた。「キャンドルが誰の金で買われたのか報告せよ」という発言は、李大統領の民衆に対する見解を端的に表すものだといえよう。

 また、「コソヨン、カンプジャ内閣」と揶揄される大統領の人事にも厳しい批判が相次いだ。李大統領と同じ高麗大学出身でソウル所望教会に通う嶺南(慶尚南道)出身者を意味する「コソヨン(高・所・嶺)、高級住宅街のソウル江南地区に住む不動産資産家を意味する「カンプジャ(江・不・資)」という表現は、政権中枢部の顔ぶれに共通の経歴を、有名女優の名前にかけて皮肉ったもの。

 政府組織の改編を通じて大部分の国政調整機能を青瓦台に集中させたことも、「大統領の一人独裁体制」という非難を浴びた。

経済再建進まず

 2つ目の要因は経済分野での失政だ。

 有権者の李大統領に対する期待の多くは、経済に関するものだった。

 就任前から「MBノミックス」と呼ばれる政策を提唱するなど、経済再生を国政の主要課題に据えて取り組んできたが、結果は芳しくない。国際的な原油価格の高騰やサブプライムローン問題、国内では物価上昇と、経済が停滞から脱するきざしは見えていない。

 とくに、消費者物価の上昇と軽油、穀物価格の急騰は庶民の生活を直撃、民生部門は深刻な状況に陥っている。「李政権の実用主義は旧態依然とした成長至上主義から抜け出していない」と指摘する声も多い。「ビジネスフレンドリー」な経済政策の方向性が庶民に向いていないということが一番の問題点だ。

 また、経済や社会の各分野に押し寄せる新自由主義化の波によって、教育や労働問題などで政権と民衆とのあつれきが生じている。とくに学校自律化措置や英語公教育強化方針など李政権の一連の教育政策は、「数十年間の教育政策の根幹を揺るがすもの」として多方面から憂慮の声があがっている。

 一方で、公共部門の構造調整と民営化政策による労使関係の悪化、「韓米FTA」の批准問題や大運河構想なども、世論のさらなる反発を招く「アキレス腱」になると指摘されている。

北南関係でも失政

 最後に、北南関係と外交分野の失政だ。

 前任者の政策をことごとく否定する李政権の姿勢は、ブッシュ政権のABC政策(Anything But Clinton)にならってABR(Anything But Roh)と揶揄されているが、それが最も端的に表れたのが北南関係と外交分野だろう。

 李政権は、盧武鉉前政権が対米関係を悪化させ北側に対して過度に譲歩したという認識に基づいて「実利外交」を掲げ、米国との同盟強化と対北政策の再定立を図った。しかし過度の米国偏重は「対米追従」という世論の批判を受けた。

 また、北南関係を断絶状態に追いやったことは、現政権最大の政策的失敗だといえる。双方の最高指導者が署名した6.15共同宣言と10.4宣言の履行に背を向け、「実用」と「効率性」のみを追求したことで、2000年以降8年間の成果を壊した。

 北側は李政権に対する批判を日ごとに強め、南側当局関係者に対する軍事境界線通行の全面遮断をはじめとする措置を継続している。当局間の対話も全面ストップの状態で、今後の成り行きも不透明だ。

 米国産牛肉輸入問題に端を発した李政権への民衆の不満は、現在もなお沈静化していない。逆にキャンドルデモの継続と全土への拡大など日ごとに高まる一方だ。それは個々の政策に対する異議申し立てを超えて、政権退陣運動へと発展している。

 米国産牛肉輸入問題は導火線にすぎず、鬱積していた反李明博感情がこの問題をきっかけに噴出したと見るのが妥当だろう。

 南朝鮮のメディアや識者らは、「民意を無視する独善的な政権運営に対する抜本的な是正なくして信頼の回復は難しい」と分析している。(李相英記者)

[朝鮮新報 2008.6.11]