朝米 シンガポール合意 10.3合意履行へ展望 |
「第3段階」へ同時行動調整 【平壌発=金志永記者】6者会談10.3合意の完全なる履行に向けた展望が開けた。8日、シンガポールで行われた朝米会談と関連し朝鮮外務省スポークスマンは9日、「米国の政治的補償措置と核申告の問題で見解の一致が遂げられた」と述べた。 朝鮮の先手
朝鮮側が米国より先に会談結果を公表したことは、示唆するところが多い。スポークスマンの答弁を通じて先手をとったといえる。これは10.3合意の履行が3カ月以上遅延した原因を間接的に示す証拠でもある。 シンガポール会談を終えて北京に立ち寄った6者会談米国側首席代表のクリストファー・ヒル国務省次官補が中国と南朝鮮、日本の代表らに朝米会談の内容を説明している時点で朝鮮側は「米国との見解一致」を公表した。 朝鮮は、昨年10月3日に発表された6者会談の合意である「9.19共同声明履行のための第2段階措置」を実践するうえで米国をはじめ他の参加国よりはるかに先行している。寧辺の核施設無力化など、すでに具体的な行動をとった。 一方、ヒル次官補は9日に北京を発つ際、「ともに扱うべき全ての要素がまだ完全に整理されていない」としながら朝米合意に関する断定的な表現を避けた。 責任の所在は明白だ。10.3合意履行完結のために現時点でなすべきことがより多いのは米国側であり、遅れを取り戻すために急がなければならないのも米国だ。 米国は朝鮮の核申告問題を口実にして朝鮮に対する「テロ支援国」指定解除、「敵性国通商法」適用の終息など、10.3合意に明示された政治的措置を講じていない。客観的に見れば、6者会談で何度も確認された同時行動の原則から逸脱して10.3合意履行のタイムテーブルを狂わせたのは米国だ。国際社会に「朝鮮が核申告を遅らせている」という印象を与えつつ、合意履行遅延の責任を相手側に負わせようとしたが、膠着状態の根源は明らかだ。 米国の体面維持 シンガポール会談での進展について、米国寄りのメディアは、核申告問題で浮上した「ウラン濃縮計画疑惑」「シリアとの核協力疑惑」について朝鮮が米国側の主張を受け入れたと伝えている。ところが、3月中旬に行われたジュネーブでの朝米会談後、朝鮮は「われわれは決してブッシュ政権の誤った主張を正当化するいけにえにはならない」(外務省スポークスマン)との立場を明らかにした。また、「われわれはウラン濃縮やいかなる国への核協力を行ったことがなく、そのようなことを夢見たこともない」と疑惑を全面否定した。この間の経緯からして、シンガポール合意は朝鮮のこのような立場の延長線上でなされたと考えるのが妥当だ。 結局、過去数カ月間は一連の「疑惑」に関するブッシュ政権の体面を維持するのに必要とされた時間だった。10.3合意採択後に「ウラン濃縮」「核協力」など申告の範囲が拡大し朝鮮側が受け入れられない要求が浮上した背景には、6者会談の進展と朝鮮との関係改善を願わない保守強硬派からのバックラッシュがあったというのが一般的な見解だ。実際に10.3合意が採択される前から朝米間では「疑惑」を解消するための方法が討議されてきた。ヒル次官補をはじめ米国務省の交渉チームはいくつかのアイデアを朝鮮側に提案した。これによって朝鮮側は輸入したアルミニウム管の行方およびサンプル提供など特例的な措置を講じた。ところが米国務省の交渉チームは彼らのアイデアに基づいた解決策で反対勢力の声を封鎖できなかった。そして無駄な時間だけを過ごした。 朝鮮は政策的決断が一度下されれば無条件に行動に移す。しかし米国は違う。10.3合意履行の膠着状態は、「朝鮮の行動先行と米国の言行不一致」という構図を浮き彫りにしたが、朝鮮側は過去数カ月間、米国との交渉に寛大に応じてきた。結果的にシンガポールではブッシュ政権の体面を維持できる合意がなされ、米国側は大統領の任期内に非核化プロセスを引き続き進められる名分を立てることができた。 関係進展が加速 朝鮮はシンガポール合意にしたがって自国側の義務である核申告を行うだろう。米国も「テロ支援国」指定解除、「敵性国通商法」適用の終息など政治的補償措置をこれ以上先送りできない。双方が合意に沿って必要な措置を講じるなら朝米関係進展の速度は再び加速するだろう。 シンガポールで朝米は、10.3合意履行完了後の「第3段階措置」も討議したと思われる。過去の6者会談プロセスを振り返れば、「初期段階措置」に関する2.13合意が採択される前に朝米両国はベルリンで会談を行い、その核心事項に合意したことがある。10.3合意直前にもジュネーブでの合意があった。 9.19共同声明履行の「第3段階」では「朝鮮の核放棄」対「米国の敵視政策放棄」という同時行動が本格化するものと予想される。朝鮮が米国より先にシンガポール合意を公表したのは、10.3合意の完全履行と「第3段階」推進に対する積極的な意志の表れと見ることもできる。 シンガポール合意に関する朝鮮外務省スポークスマンの発言で注目されるのは、今回の合意が「朝米会談の効果」を示したと強調したことだ。朝鮮半島核問題の直接的当事者である朝米は、過去にもそうだったように6者会談プロセスを引き続き主導することができる。一方、今後予想される劇的な変化に他の参加国がどのように対応するかは未知数だ。まず10.3合意の履行完結においてカギとなる朝米の行動措置とともに重油100万トンに相当するエネルギー支援問題を解決すべきだ。 憂慮される点は、10.3合意履行が膠着状態に陥っている間、朝鮮に対する対決姿勢を露わにした一部参加国の動向だ。「制裁」騒動を繰り広げる日本の福田政権、同族対決を辞さない南朝鮮の李明博政権の政策は、シンガポール合意がもたらす変化の流れと両立しない。 10.3合意履行の完結と「第3段階」履行という6者会談のプロセス進展によって今後、東北アジア地域の肯定的な情勢発展に歩調を合わせる国とそうでない国の境界線がはっきりと引かれるだろう。 [朝鮮新報 2008.4.17] |