10.3合意履行 こう着の原因は米国の「足踏み」 |
6者合意反対、強硬派に口実 ■朝米「核申告」協議■ 10.3合意が昨年12月31日の期限を過ぎても履行されず、6者会談のプロセスは一時的なこう着状態に陥っている。米国内の保守強硬派はこの機に乗じて朝鮮半島非核化のための一連の合意事項を誹謗し、ブッシュ政権が過去の対朝鮮強硬路線に回帰すべきだと主張している。 保守強硬派の10.3合意に対する反対論は、ブッシュ政権にとっては耳障りであろう。現実的な問題として、朝鮮が行った地下核実験(06年10月9日)によって破綻が明らかになった過去の対決路線を再び追求することはできない。何よりも、任期末にあるブッシュ大統領に残された時間はそれほど多くない。 昨年1年間、国務省の担当者らが国内外を駆けめぐり、まとめ上げた合意履行の既定路線に対して、政権外部の「第三者」が横槍を入れるようになったのには自業自得の側面もある。現在のこう着状態は、6者会談合意履行の原則である「行動対行動」に米国が背いた結果だ。 10.3合意は、9.19共同声明履行のための第2段階措置の履行期限を2007年末と定めた。合意によると、米国は朝鮮側の行動にともない、朝鮮に対する「テロ支援国」指定を解除し、「敵性国通商法」の適用を終息させるといった政治的措置を講じることになっている。しかし、現在まで確認された進展はない。 一方、朝鮮側が外務省スポークスマン談話(1月4日)を通じて確認したように、寧辺の核施設無力化は昨年末までに「技術的に可能な範囲」の作業が完了した。米国側との協議に従って、核申告に関する一連の措置も講じられた。 10.3合意履行の期限が守られなかったことに関連して米当局者らは当初、核申告を遅らせた朝鮮側に責任があると説明した。 しかし、核申告書の内容を米国側に伝えたと朝鮮外務省が明らかにするや、申告の期限より内容が重要だと主張し、「米国を含めた6者会談参加国は新たな期限を設定していない」(国務省スポークスマン)と、言葉のニュアンスを変えた。 このようなレトリックは、まるで核申告の「内容」に問題があるかのような印象を与える。 核申告に関する米国の主張はつじつまが合わない。朝鮮側は昨年11月、核申告書を作成し、その内容を米国側に伝えた事実が明らかになっている。朝鮮外務省スポークスマン談話によると、「米国側が申告書の内容についてもう少し話し合おうというので、(この問題に関する)協議も十分に行った」という。 実際に昨年12月上旬、6者会談の米国側首席代表であるヒル国務次官補が訪朝している。米国側が提起したウラン濃縮「疑惑」に対する朝鮮側の説明も明確だ。すなわち@朝鮮は輸入アルミニウム管を軍事目的に使用したが、ウラン濃縮とは無関係ということについて解明し、A米国側はアルミ管が使われた軍事施設を参観し、アルミ管のサンプルも提供され、Bこのような過程が米国側の「要請」によって実現したという事実が確認された。 米国は、核申告の内容を協議した朝米間の確認事項として公表された3つの事実について何一つ否定しないまま、「(申告の)期限より内容が重要だ」という説明を繰り返している。道理に合わず、説得力がないと言わざるをえない。 ■「第2段階」後の「新局面」■ 現在、6者会談は不可思議なこう着状態にあるといえる。年が明けて、ヒル次官補は日本、南朝鮮、中国、ロシアを訪問したが、なぜか「核申告の当事国」である朝鮮に立ち寄らなかった。 一方、朝鮮側はすべての6者会談参加国が同時行動の原則でともに努力するなら、「10.3合意が円満に履行されるだろうという期待を依然として持っている」(外務省スポークスマン)という立場を表明している。 一連の事実は、こう着状態の原因が朝鮮側の核申告問題にあるのではなく、米国側の「合意履行の遅れ」にあるということを物語っている。 昨年12月に訪朝したヒル次官補は、ブッシュ大統領の「親書」を携えていた。朝米間ではすでに第2段階完了後の行動計画について意見が交わされたかもしれない。「次の段階」に移行するためには、ブッシュ政権が10.3合意の履行に関する決断をくだすことが先決だ。しかし、行動開始のシグナルはいまだ朝鮮側に伝わっていないように見える。 第2段階措置の履行が完了すれば、朝鮮半島と東北アジア情勢は新たな局面を迎えることが予想される。米国の保守強硬派が現在のこう着状態を口実に、ブッシュ政権を朝鮮との対決方向に突き動かそうとするのは、ある意味で焦燥感と危機意識の表れであろう。米国が朝鮮との敵対関係清算に向けた実質的な第一歩を踏みだす時、20世紀から続く、冷戦体制は根底から変わらざるをえない。 朝鮮は戦略的決断をくだしたことを公言している。金正日総書記の意向を反映した新年3紙共同社説は、2008年が「歴史的転換の年」であると宣言した。朝鮮が「6者の中で朝鮮側の義務履行が最も進んでいる」(外務省スポークスマン)と堂々と主張しているのは決して偶然ではない。米国のカウンターパートは事態の進展のために自らすべきことをはっきりと認識し、同時行動原則を遵守する準備もできていると見るべきだろう。 ブッシュ政権が10.3合意に明記された行動措置の履行に踏みきらない理由が何であれ、朝鮮との対決を煽る保守強硬派を助長して有利なことは何もない。ブッシュ政権の進路を阻む障害がこれ以上大きくなる前に、すばやく行動を起こすべきだろう。(金志永記者) [朝鮮新報 2008.1.18] |