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〈月間平壌レポート -08年6月-〉 サッカーと芸術一色の初夏

在日同胞選手の話題に

 【平壌発=鄭茂憲記者】初夏を感じさせる陽気が続く平壌の6月は、「子どもの日」から幕を開けた。「国際児童デー」にあたる6月1日は、学齢前の子どもたちが主役の日だ。万景台遊戯場や市内の幼稚園で、子どもたちのための催しが行われた。記者には平壌で暮らす親せきがいるが、彼らも幼稚園で行われた催しで元気に走り回る双子の子どもの写真を楽しそうに見せてくれた。

「鄭大世コール」

 2月に始まったサッカーのFIFA2010年W杯南アフリカ大会アジア地区3次予選が終わり、朝鮮は2大会連続で最終予選への進出を決めた。

 また、ベトナムで開催されたAFCアジア女子サッカー選手権大会(5月28〜6月8日)で、朝鮮が無傷の5連勝という圧倒的な強さで優勝したこともあり、平壌市民の間ではサッカーの話題で持ちきりだった。

対ヨルダン戦で朝鮮チームに声援を送る市民と朝高生(14日、羊角島競技場)

 1966年以来のワールドカップ出場を願う平壌市民たち、彼らの間では、在日同胞の安英学(Kリーグ・水原三星ブルーウィングス)、鄭大世(Jリーグ・川崎フロンターレ)選手の人気が高い。 それを象徴していたのが、14日に羊角島競技場で行われた3次予選の第5戦、ヨルダンとの試合だった。7日に金日成競技場で行われたトルクメニスタン戦に勝利し、引き分け以上で最終予選への進出が決まるという試合の開始直前、スタンドの一角から「鄭大世!」という大きな声援が沸き起こった。

 この日の試合会場には、朝鮮を訪問中の、鄭大世選手の母校である愛知中高と大阪朝高の生徒たち(それぞれ高級部3年生)が駆けつけていたが、「鄭大世コール」は、平壌市民からのものだった。それも男性グループから上がった野太い声だった。それを聞いてあわてたように、朝高生徒たちが「安英学!」のコールで呼応した。会場内は、普段の試合前のようなピリピリと張り詰めた緊張感とは違った温かい雰囲気がおおっていた。

 その後も、試合中にいたるところから鄭大世、安英学コールがわき起こった。

 観客からの声援に応えるように、鄭大世選手はこの試合、アシストをマーク。また安英学選手も得点にこそ絡めなかったものの、7日のトルクメニスタン戦に続き、中盤の底でプレーしながら、相手の攻撃の目をすばやくつぶし前線へパスを送るなど、攻守にわたって存在感を示した(鄭大世選手は、イエローカードの累積で、7日のトルクメニスタン戦は不出場)。

 朝鮮の最終予選進出に大きな役割を果たしただけに、2人への声援は最終予選ではもっと大きくなりそうだ。 朝鮮代表のキム・ジョンフン監督も鄭大世、安英学両選手のプレーに、「任された位置でしっかりと自分のすべき仕事をした」(ヨルダン戦後の記者会見)と満足感を示していた。

歌声に酔いしれる

 6月20日。2月末に開催されたニューヨーク・フィルハーモニックの公演会場となった東平壌大劇場は、客席を埋め尽くした1300人の観客たちの割れんばかりのスタンディングオベーションとアンコールの嵐に包まれた。

 功勲国家合唱団と国立交響楽団による管弦楽と合唱「雪が降る」の上演後の一幕だ。

 6月11日に幕を開けた「雪が降る」の公演は連日テレビでも放映され、多くの市民たちの耳目を集めていた。この日は朝鮮に滞在している外国人や海外同胞たちに初めて劇場での生演奏が公開された。

 「雪が降る」は、1965年に創作された歌で、植民地時代の抗日闘争の精神を受け継ごうとする朝鮮の人びとの気持ちをうたった作品だ。

 抗日闘争について夜を徹して話し合う朝鮮の人びとの精神世界を、深々と降り続ける牡丹雪になぞらえてうたい上げている。67年には女性群舞作品が創られた。

 それが今回、朝鮮最高峰の合唱団と交響楽団の「夢の共演」として、舞台に上がった。

 公演を鑑賞した、朝鮮マラナタ信用会社のゴーラン・ヒュー総社長(46)は、「朝鮮で最高レベルの合唱団と交響楽団による共演という非常に珍しい公演だった。男性だけが出演したことも興味深かった。ほかの国でこのような公演は見られないだろう。とても驚いている」と賛辞を惜しまなかった。

 外国人観覧者のなかで、抗日闘争の精神世界を理解しえた人は少なかっただろうが、それを抜きにしても、会場に響き渡った美しい旋律と迫力ある歌声は彼らを魅了するのに十分だった。

 公演ではそれ以外にも、国立交響楽団による「アリラン」や外国曲を含む5曲が演奏された。

[朝鮮新報 2008.6.25]