top_rogo.gif (16396 bytes)

〈虫よもやま話-11-〉 採集記−ウリナラ編−

 「そこのトンム、一体何をしてるんだ!」

 6月19日。

 昼に新潟を出発した私は、いつの間にやら平壌に到着していました。

 そしてホテルに到着するやいなや、荷解きもそこそこに、ホテル内外ですぐに採集開始!

香山ホテルに飛んできたヘビトンボ

 ホテルの従業員からしてみると、こんなにも怪しい客人は初めてだったのでしょう。会う人にことごとくこのように注意されました。

 初日から私は平壌ホテルの「お尋ね者」と化したのです。いえいえ、行く先々でそうなりました。暇さえあれば採集をしていたので仕方ありませんね。この時を5年も待ち焦がれていたのですから。

 祖国で本格的に採集を行ったのは今回が初めてです。というよりも、祖国で虫採りを謳歌したのは私が初めてではないでしょうか?(笑)

 平壌市内の山々を中心に妙香山では10日間の採集を行いました。

 この期間は私の研究人生において素晴らしい経験になったと実感しています。心温まるエピソードや爆笑エピソードはたくさんありますが、残念ながらその一つ一つをここで紹介することはできません(ぜひ、今後投稿したいと思います!)。

 ただこの場をお借りして言いたいのは、「祖国はやはり祖国」だということです。

 同じ虫を見てもより愛しく思えるのは何故でしょうか?
 山や木を見てどこか懐かしく思えるのは何故でしょうか?
 祖国はやはり私の祖国でした。
…。
 「トンムからは郷土愛が感じられるよ」
 日本へ帰る前にこのように言われました。
 私たちにとって郷土愛とは何でしょうか?
 生まれも育ちも異国の地で育った私から何故、郷土愛を感じたのでしょうか?
 私はその言葉の温もりを確かめながら、ウリハッキョの寮に帰ってきました。
 よく考えてみると、ここです。
 これですね。
 ここで育くまれた私の夢、それが祖国で花開いたからです。
 祖国によって私の夢はさらに広がるばかりです。
 私の「登山靴」、休む暇はなさそうですね。

(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程)

[朝鮮新報 2008.11.14]